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大規模マンションの管理修繕

2014年09月04日更新

修繕積立金を早期に均等割徴収へ

【第2回 イニシア千住曙町管理組合法人】
修繕積立金を早期に均等割徴収へ

 管理組合の2つめのお財布である修繕積立金の話題です。

 家計に例えるなら、管理費は「日々の生活費」に対応するのに対して、修繕積立金は「使い道の決まっている貯金」だと考えればよいでしょう。2つの合計金額だけを気にする方がとても多いのですが、理事会は『積立金は皆の貯金なのだ!』という意識改革を住民に求めなければいけません。

 2011年に国交省から、『マンションの修繕積立金に関するガイドライン』が公表されました。我々のマンションには、機械式駐車場はありませんが、20階を超える建物です。ガイドラインの平均値では、長期平均では専有面積1㎡あたり206円/月(消費税10%なら216円)のお金が建物を維持していくために必要となります。

 この『ガイドライン』では、必要な計画修繕工事の費用を長期均等割で徴収することを強く推奨しています。一方で国内の殆どのマンションで、ローンを含めた負担の総額を安く見せかけたいという販売上の理由から積立金は安くスタートして、途中から大幅に値上げしたり一時金を集めたりすることを仮定した漸増方式と呼ばれる積立金計画となっています。

 イニシア千住曙町も漸増式で積立金は118円/㎡のスタートでした。不足分は必ずどこかで値上げが必要ですが、安いまま放置した期間が長いほど、後で大きく値上げしないと建物を維持できません。我々は4期通常総会で、30年間の計画修繕にかかる総費用を長期均等割にした248円/㎡に修繕積立金を改定しました。

 販売時の積立金計画では、6期に2割、以後5年毎に2割ずつ複利方式の計算で値上げしていく漸増案の計画(30期まで総額28億円)でしたが、以下の理由で最初の値上げが2割では計画が成り立たなくなりました:
(1)当初戸数×平均的な金額で見積もられていた計画を、面積×工事単価で積算しなおすと総額32億円となる計画に更新したため。4.1万㎡の専有部総面積に対して、建築総面積は6.6万㎡となる多くの共用部面積を抱えているのが理由です。
(2)消費税率の5%→10%の上昇が見込まれたこと。殆どの工事が”消費税率が10%になった後”で実施されるため、5%のつもりで6年積み立てた後で、12期の大規模修繕工事を10%で実施するためには、消費税率の上昇率の2倍(10%)だけ中途からの値上げを積み足さないと消費税増税分が支払えなくなります。
(3)東日本大震災で、渡り廊下の破損などでかなりの出費を強いられたこと。
この結果、修繕工事の予定総額は28億円から34億円になりました。

 これを図示すると下のようになります。当初漸増案の計画が初回の大規模修繕工事を”ぎりぎり”で越えて行く計画になっていたために、いきなりまず5割の値上げをしなければ12期前後に大規模修繕を実施できません。

 <Fig.1>
 理事会では ① 6期にのみ5割値上げし、その後は5年毎に2割の値上げを繰り返す案と、②この機会に35期までの30年間にかかる費用を均等割りにした金額に一気に値上げする案の2案を比較検討した結果、均等割方式への移行を選んで、約2倍に修繕積立金を改定する提案を総会に上程しました。平均的な面積の住戸で年間約11万円という大幅な負担増です。全部で6回の住民説明会を実施したり、積立金について考えるかわら版と題した説明資料を繰り返し全戸投函したりするなど日夜努力を重ねて、幸い総会では90%近い賛成を頂き可決できました。

 我々のマンションが長期均等割を選択した理由は以下の通りです;
(1)もともとの案の破綻には、ぎりぎりで12期を超えればよいという漸増方式の考え方に理由がありました。漸増方式には臨時支出など状況が変化して徴収金額を変更しなければならなくなった場合に、万人が納得できる値上げ方法の決め方が存在しないので、その都度理事会や総会が紛糾します。一方今後30年間に必要になる工事費用を均等割りするという論理は誰もが納得できる骨太なもので、説得力があります。この「考え方」が全戸に浸透していれば、再度積立てを考え直さないといけない場合にも、新積立金の金額の設定方式は自明です。
(2)500戸を超えるようなメガマンションが、5年ごとに値上げを総会に提案して納得して賛成を得る「政治的コスト」が余りに過大であること。一度均等割りを可決すれば大きく状況が変化しない限り5年周期でその期の理事会が値上げの対応に忙殺されるようなことはありません。6/11/16…期に値上げを扱う理事会の役員になりたいですか?と説明会で問いかけました。
(3)今均等割に移行すれば月1.9万円ですむ修繕費が、例えば30年後に3.5万円ですとなったときに、多くは年金生活者となる現在の住人が本当にそれを支払えるのだろうか?という疑問。漸増案で現在の負担を軽く済ませた”つけ”が払えなければ途中で修繕が実施できなくなるのではないかと考えました。

 現状のまま、漸増方式(初回5割)、長期均等割の3つの各々の場合に、マンションが保有する積立金の推移の予定を期数別に示したのが下の図です。(縦軸は億円単位)

 < Fig. 2 >
 今のままではすぐに破綻です。一方今値上げ幅の大きい均等割方式を選んだからといって決して過大な積立ではありません。更に重要な点として、均等割の場合にだけ長期に渡って蓄えが2億円を下回る年がありません。次にいつ来るかもしれない地震の直後に全戸から一時金を集めるのは困難です。東日本大震災の経験からも、メガマンションならば例え大規模修繕の直後でも数億円の蓄えは必須でしょう。

 均等割は築年度で住人が入れ替わっていくなか全員に公平性を確保可能な唯一の方法でもあります。我々のマンションでは毎年2%ほどオーナーは入れ替わります。20~25年たった時、住人の半分は新築で購入した人ではありません。もし漸増案を選択すると、同様に共用部分が維持される恩恵を受けるのに対して、1~5期を暮らした人は1万円未満ですむのに対して、26~30期を暮した人は3万円近くを負担することになります。
 不動産は「巨大なババ抜き」ではないと思います。マンションを築浅で次々と買い換えた人だけが得をして、ずっと残っていた人が付け回された高額の修繕費が払えず、修繕困難なスラム化したマンションに住むことになるかもしれないような設定を、理事会が主導することはできません。

 長期均等割を提案すると
-消費税はまた上がるかも
-また大きな地震がくるかも
-物価だって今後大きく上昇していくかも
と、今そんなに先まで考えても仕方がないのではという指摘は必ずでてきます。しかし「予定がない」のと「予定通りいかない」のは全く別です。

修繕計画案と、それに伴う積立金計画案は、組合で常に検討しなおして最新の状態に更新していく義務があります。直近に大きな値上げを求めることになる均等割移行は敷居こそ高いですが、管理費の見直しと並んで築浅のマンションが最初に乗り越えるべき壁なのではないでしょうか。

 最近湾岸などのタワーでは初年度から160円/㎡程度の修繕積立金に初期設定されている例が多くなりました。野村不動産の”オハナ”のように超長期での均等割に初期設定されている事例もでてきています。管理組合の修繕積立の蓄えの多寡で、中古マンションの評価が決まる時代はすぐそこまで来ているような気がします。

 さて、次回は我々のマンションの法人化の経緯など、管理組合理事会のガバナンスの整備について取り上げたいと思います。

 

【イニシア千住曙町管理組合法人】
第1回 管理組合はなによりもまず破産しないこと
第2回 修繕積立金を早期に均等割徴収へ
第3回 理事会の活性化に向けて
第4回 マンション管理組合理事長勉強会「RJC48」

<足立区千住曙町>
イニシア千住曙町
イニシア千住曙町

2009年3月竣工。隅田川花火大会やお花見など季節ごとのイベントが楽しめ、水上バスから眺める東京の風景など下町風情も感じられるリバーサイドのマンションです。特に管理組合活動の活性化には力を入れています。2014年5月総会で管理組合は法人化されました。マンション住戸のみで組織された自治会と協力しながら、住みよいマンションとなるように努力しています。
 
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