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[第7回]ヴォーカリスト アン・サリーさん

 透明感溢れる緩急自在の歌声と独自の楽曲解釈により、しっとりとしたジャズから昭和初期の日本の歌まで、幅広い音楽を私たちに届けてくれるアン・サリーさん。ヴォーカリストと内科医という異なる顔を持ち、二児の母としても多忙な日々をおくるなか、どのような暮らしをつむぎ出しているのでしょうか。お話を伺ってみると、想像通りの彼女らしいナチュラルな暮らしぶりが浮かび上がってきました。

googleの航空写真で緑の多い場所を探して新居を決めました

—-間もなくお引越しをされるそうですが…
アン・サリー「はい。二人目の子どもが生まれたのをきっかけに、もう少し自然の多い場所で暮らしたいと思って…。ただ、仕事の中心が都内なので、アクセスのよさそうな範囲をだいたい決めて、その中からgoogleの航空写真で緑の多そうな場所を探しました」

—-航空写真で住むところを探した方に、はじめてお会いしました(笑)。でも確かにそういう方法もありですね。
アン・サリー「生活するためのインフラがある程度整っていながら、豊かな自然を楽しめるという、『トカイナカ』が家探しのテーマだったんです。ただ、私たちが求める環境に対する不動産屋さんの受け止め方がまちまちで、なかなか細かなニュアンスが通じないことも多くて…結局今度の家に決まるまで、2年近くかかりました。最終的には、航空写真をもとに自分たちで実際に見に行って場所を絞り込んだりして、やっと決めることができました」

—-緑豊かな環境で暮らそうと思ったのは、どうしてなんでしょう。
アン・サリー「夫の実家がかなりの田舎にあるんですけど、そこで体験した『無音の世界』がとても印象的だったんです。本当に『シーン』という音が聞こえるような環境で…。そこでは鳥の声や木のざわめき以外の音は本当に何も聞こえなくて、心地よくて…。夫はそんな風景をずっと見ながら育ったので、何でもない景色をいつまでもボーッと見ているのが日常だったんです。うらやましかったですね」

—-アン・サリーさんご自身は、賑やかなところにお住まいだったんですか。
アン・サリー「私の出身は名古屋で、国道沿いに建っている割と賑やかな環境で子ども時代を過ごしました。三代にわたって住み続けている古い一軒家で、家族7人が個室もない状態でゴチャゴチャと(笑)。私が生まれる前にお店をしていたという玄関の広いスペースが兄弟の遊び場でした」

—-ご主人のご実家とは対照的ですね。
アン・サリー「ええ。当時は周りに音がある暮らしを当たり前のように感じていましたし、子ども心にもそこでの生活を十分に楽しんでいました。でも、いざ自分が親になると、子どもにはそうした街中ではなく、夫の実家のような緑の多いところで育てたいと自然に思っていました」

—-今度のお住まいは、何が決め手になったんでしょうか。
アン・サリー「部屋の窓からすぐ山が見えるところです。マンションなんですけど、裏側が登山口につながっているくらい山が近いんです(笑)。実は私、大学ではワンダーフォーゲル部の部長でサバイバル生活を楽しんでいたので、またムクムクとその気持ちが蘇ってきましたね」


ご主人の実家は木材の彫刻が家業なのだとか。「いつかセルフビルドで家を建てるのが、夫の究極の夢みたいです」


ニューオーリンズでの暮らしや子どもの誕生が、時間の捉え方を大きく変えた。「後で後悔しないよう、その時にしかできないことと、きちんと向き合いたい」

歩みをゆるめることで、ものごとの味わい方に深みがでてくる

—-2005年から3年間医学研究でニューオーリンズに滞在し、地元のミュージシャン達とセッションしたアルバムも発表されましたが、そこでの暮らしはいかがでしたか。
アン・サリー「ニューオーリンズは車ですぐ1周できちゃうような小さな街で、中心部は都会だけど、ちょっと離れるとすぐに田舎道という感じです。住んでいたのはピンク色の平屋建て一軒家で、ただっ広いリビングと寝室が2つ。夫は家でトランペットを吹くのですが、ニューオーリンズでは近所迷惑どころか『もっとやれ、もっとやれ』ってはやされる状態で、日本とは随分違うなと驚きました」

—-さすがジャズ発祥の地ですね。
アン・サリー「人も違うし、時間の流れ方がゆっくりというか、とてもたっぷりあるように感じましたね。東京では1本早い電車に乗って5分10分早く着くのに一生懸命になったりしますが、ここではそんなことは誰もしない。だからといって、できることに大きな差があるかというと、実はそうでもなかったり」

—-そんなにあくせくしなくても大丈夫、と。時間に対する考え方が変わりそうですね。
アン・サリー「そうですね。たくさんの情報に流されるのではなく、少ない情報をしっかりと咀嚼しようと思うようになりました。歩みをゆるめることで、しっかりとものごとに向き合うことができるし、その分味わい方にも深みがでてくるということが実感できたように思います」

人間の暮らしは便利すぎるより多少不便なほうがいい

—-今回の引越しは、まさにそんな生活の延長線上なのかなと思いますが。
アン・サリー「文明の便利さと少し距離をおきたい、という気持ちはありました。派手な色や音の演出から離れて、情報に対しても受身にならないようにしたいな、と。暮らし方も、郊外暮らし=エコロジーのようにブーム的に取り入れるのではなく、地に足を付けた生活をしていけたらいいですね」

—-引越しのきっかけになったお子さんの成長にも、いい影響がありそうですね。
アン・サリー「新居の周りには虫もたくさんいて、あちこちに死骸が落ちてたり(笑)。子どもはまだ慣れていないので拒絶反応を示していますが、これからどう変わるのか…今から楽しみです。人間の暮らしって、便利過ぎるより多少不便なほうがいいんじゃないかなと思っているので、様々な体験をしながら、自分の体を通して身につけていくアナログな暮らし方はしっくりきます」

—-ご自分の時間でこだわりたい部分はありますか?
アン・サリー「やはり音楽だけはいい音で聴きたいですね。インテリアとしても素敵なタグチの『VOICE』というスピーカーが家にあって、家ではいつも音楽が聞こえるようにしています。私はアコースティックでシンプルな音、人の肉声を感じられる音が好きなんですが、このスピーカーはそうした音を再現するのが得意。今度の家の静かな環境では、自然でも音楽でも、ほんのかすかな音をもっと楽しめるような暮らしができそうです」

アン・サリーさん プロフィール 
幼少時からピアノを習い音楽に親しむ。10代の頃より様々なジャンルの音楽をボーダレスに愛聴し、自らも歌い始める。大学卒業後は医師として働く一方、2001年「Voyage」でアルバム・デビュー。その後も国境を越えた新旧の良歌を独自に消化し、新たな解釈で次々と世に送り出す。「歌手」、「医師」、「母」の3つの顔を持つそのユニークなライフスタイルは多くの人々から共感を得ている。
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