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今、マンションは買いか、待ちか

2016年07月27日更新

世界の政治経済を知らずに、不動産は買えない時代に?!

 今年7月、住宅ローン金利が大幅に低下した。住宅金融支援機構が民間金融機関と提携して供給している固定金利型住宅ローン「フラット35」の最低金利が、前月の1.1%から一気に0.17%下落し、0.93%という過去最低水準をつけたのだ。他にも三井住友信託銀行は10年固定型の最優遇金利を0.4%とする商品を出してきた。もはやバーゲンセールともいうべき状態だが、この状況を招いた要因は、意外かもしれないが6月23日に行われたイギリスの国民投票でEU離脱派が勝利したことにある。と言われても、日本の住宅ローンとイギリスの国民投票に何のつながりがあるのか、疑問に思う方も多いだろう。たしかに国も違えば、次元も内容も全く異なる2つの事象であり、直接的な因果関係を見出すのは難しいかもしれない。しかし、金融のグローバル化が進んだ現在は、世界の政治や経済の動向が、日本の金融にも即座に影響を及ぼすようになっているのだ。今回は、イギリス国民投票のケースを例に、世界と日本の住宅ローンのつながりを具体的に見ていこう。

 イギリス国民投票後に、何が起きたのか。EU離脱派勝利というサプライズな結果から、まずポンド安が進行。円やドルが買われ、なかでも円は対ポンドだけでなく、対ドル、対ユーロでも急激に円高が進んだ。ここまでは、ご存知の方も多いだろう。この先は日本特有の事情が絡んでくる。現在の日本の株式市場では、その取引の約6割を外国人投資家が占めていると言われ、彼らの売買動向に日本の株価は大きく左右されるようになっている。外国人にとってみれば、円安になると日本株は割安になるため買われ、円高になると逆に売られる。上場企業の業績とは関係なく、短期の為替変動に応じて株価が上下しやすいのが、現在の国内株式市場の特徴だ。イギリス国民投票の結果から急激に円高が進んだのを受けて、翌日の日経平均株価が1日で1200円以上も下落したのは、そうした事情からだ。

さらに、株売却によって生まれた円資金は日本国債に向かうことになる。その結果、株価下落の裏側で国債が買われ、長期金利が大幅に下落したのだ。一般に長期金利の指標とされているのは新発10年物国債の利回りだ。国債は額面に対して売買価格が安くなれば利回りが上がり、高くなれば利回りが下がる。つまり、10年国債が買われれば価格が上がって、利回り=長期金利が下がることになる。今年1月に日銀がマイナス金利政策を発表してからほどなく、政策金利ではない市場金利の長期金利までもがマイナス圏に突入し、マイナス幅は6月まで半年近くかけて-0.15%水準まで下げてきていた。それが、イギリス国民投票後から急降下し、その後たった2週間で一気に-0.28%水準まで下げたのだ。

円高を招く世界情勢の変化を注視する

 そしてここからが、いよいよ住宅ローンにつながる話だ。日本の住宅ローンのうち、金利を長期に固定するタイプの商品は、長期金利の水準を参考に金利が設定されている。フラット35や10年固定型などがそれに該当する。住宅ローン金利は毎月更新され月初に発表されるが、長期金利を参考するタイミングは概ね前月の20日頃からの数日と、銀行関係者から聞いたことがある。もうおわかりだろう。イギリス国民投票後の市場の混乱は、まさに各金融機関が7月の住宅ローン金利を決めるために長期金利を参考するタイミングであり、急落した長期金利を反映して、7月の長期固定系の住宅ローン金利が大幅に下がったのだ。

イギリスの件から得られる教訓は、円高を招くような事態が世界のどこかで起こると、日本では「株安→国債高→長期金利安→長期固定系のローン金利低下」につながるということ。さらにその出来事が起こるタイミングにも注意が必要だ。

 このように、日本の住宅ローン金利や住宅価格が世界の政治経済の動向に影響を受けたケースは他にもある。2000年代前半、史上最長の景気拡大と言われ、2006年には日銀がそれまでのゼロ金利政策を解除するに至った。しかし、この景気拡大は内需ではなく同時期にアメリカの住宅バブルで膨らんだ外需に頼ったものだった。そのため、サブプライムローン問題でアメリカの住宅バブルがはじけると、日銀はあえなく再びゼロ金利に戻さざるを得なくなった。このゼロ金利解除から再ゼロ金利化にいたるプロセスでも、当然ながら日本の住宅ローン金利は大きな影響を受けている。また、このときは金利だけでなく、バブルで潤ったアメリカから投資資金が東京の不動産に流れ込み、俗に「プチバブル」と呼ばれる不動産価格の急上昇を招いた。これも後のリーマンショックによって資金が引き上げられたことでバブルがはじけ、当時、日本の住宅購入検討者は大いに翻弄されたのだ。

 住宅ローン金利や住宅価格は、マイホーム購入の極めて重要な検討材料であることに異論はないだろう。それらが、否応なく世界の政治経済の動向に影響を受ける以上、世界のさまざまな政治経済イシューをインプットすることは、マイホーム購入の判断にプラスにはなってもマイナスにはならない。マイホーム購入にあたっては、自身や家族のライフプランや資金計画、立地や間取り、設備の商品性等々、ただでさえ検討事項が多く、加えて世界の政治経済まで視野に入れるというのは、なかなか難儀な話かもしれない。もちろん、そんなことを無視しても住宅は買えるのだが、マイホーム購入を、資産形成を見据えた投資の一環と考えるならば、自身の投資眼を磨くという意味でも、継続的に世界を俯瞰して見ることを意識してみてはいかがだろうか。



※長期金利(終値)の推移。出典:日本相互証券株式会社






エディター&ライター
山下伸介
エディター&ライター 山下伸介

京都大学工学部卒業後、株式会社リクルート入社。二十数年にわたり、同社情報誌の編集に携わる。2005年より週刊誌『住宅情報マンションズ』(現『スーモ新築マンション』)編集長を10年半つとめ、『都心に住む by SUUMO』、MOOK『つぎに住むならどんな家?』なども手掛ける。2016年に独立。住宅関連テーマの編集企画、執筆、セミナー講師などを中心に活動中。更新中ブログ。一般財団法人 住宅金融普及協会 住宅ローンアドバイザー運営委員(2005年~2014年)。







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