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今、マンションは買いか、待ちか

2016年08月10日更新

国の借金1000兆円超!日本経済は大丈夫なのか?

 あらためて、本連載のタイトルは「今、マンションは買いか、待ちか」だが、その問いへの私の答えは、いつも同じである。マイホームの買い時は
1)今、マイホームが欲しいという明確なニーズがある
2)そのニーズを満たす気に入った家が見つかる
3)その家がいくらであれ、無理のない資金計画が立てられる
の3条件が満たされた時と私は考えている。ちなみに、3)の「無理がない」というのは、住宅ローンの返済だけでなく、将来に備えた貯蓄も問題なく継続できるという意味だ。なぜそう考えるのかは、バックナンバーの第1回を参照いただきたいが、ともかく「今、買いか、待ちか」の答えは人によって異なり、上記3条件の整い方次第というのが私の考えだ。

 昨今は、上記3条件を満たしているにもかかわらず、足元のマンション価格の上昇や東京五輪を控えての値下がりリスク、日本経済の先行き不透明感などの不安から様子見に回る人も少なからず存在する。ただ、そうした方々は、現実に起きているさまざまな出来事やそれらの背景について、単に「知らない」から不安に感じているだけということも多い。知ることで解消できる不安はさっさとクリアにしたほうが、マイホーム購入の判断をより的確にできるというものだ。その一助となるような材料を提供することが、本連載の目指すところだ。

 前置きが長くなったが、今回のテーマは上述の「日本経済の先行き不安」についてだ。日本で働き所得を得ている人ならば、日本の景気が良くなれば給料やボーナスが増えることが期待できるし、逆に景気低迷が続けば所得が伸びず、最悪の場合リストラの憂き目にあう可能性もあると心配になるのが普通だ。ゆえに、日本経済の先行きを不安視するニュースを目にすると、いまお金を使うことについて心理的にブレーキがかかりやすい。しかし、そのニュースが伝える不安はどこまで正しいのか。そもそもメディアは危機をあおることが得意だ。というより、危機をあおるセンセーショナルな見出しをつけて、部数やPVを稼ぐことが仕事の一部になっていると言っていい。よってそういうものだという前提に立ち、情報をうのみにすることなく事実を見極める必要がある。

いわゆる「国の借金」は、国民の借金ではない

 たとえば日本経済の危機をあおる代表的なネタに「国の借金」報道がある。「国の借金が1000兆円を超えた。国民一人あたり●百万円に」という判で押したようなニュースを目にしたことがある人は多いだろう。この見出しの文脈だと、国民一人あたり●百万円の借金がある、かのように受け取ってしまうが、実はそれは誤解だ。見出しの「借金」という言葉はあくまで「国の」を受けているだけで、国民一人あたりの借金とは決して書かれない。なぜなら「国民一人当たり●百万円の借金」と書いてしまったら、それは明確なウソ記事になってしまうからだ。事実はこうだ。報道で言う「国の借金」とは、正確には日本政府の借金(債務残高)を指している。政府の借金とは、国債や政府短期証券の発行残高のことだが、その保有割合(下グラフ)すなわち債権者の内訳を見ると、大半を銀行や保険会社などの国内機関投資家が占める。これら機関投資家は自己資本で国債を買っているわけではなく、われわれ国民から集めた預金を国債で運用しているだけだ。つまり、国債を買っているお金の出どころは国民であり、国民は政府にお金を貸している側なのだ。したがって、国(政府)の借金を指して「将来世代に負担を先送り」との論評も的外れだ。たしかに政府が借金返済のために増税すれば将来世代の税負担は増えるが、政府が返したお金は国民の資産として将来世代に返ってくるので、「いってこい」なのだ。

さらに言うと、政府ではなく家計や民間企業なども含めた真の意味での「国」の総負債と総資産を相殺すると、日本は300兆円余りの純資産国だ。わかりやすくいうと、国全体の借金を国全体の資産が300兆円以上、上回っているのだ。たとえば、1000万円借金があり貯蓄がない人と、5000万円借金があるが貯蓄が8000万円ある人では、どちらの家計が危ないだろうか? この比較で借金の多寡だけに着目して5000万円借金があるほうが危ないという人はいないだろう。前者は純「負債」1000万円、後者は純「資産」3000万円の家計であり、より危ないのは前者だ。資産から負債を引いた純資産の大きさをお金持ちの定義とするなら、300兆円を超える断トツの世界一(2位はドイツの約200兆円)の純資産をもつ日本は世界一のお金持ち国家ということになる。だから未来永劫、日本は心配ないと言うつもりはないが、ファクト(各種データ)を世界各国と比べると、日本「国」は最も経済破たんから遠い国のひとつであることは間違いない。

長年、「日本は財政危機だ」と刷り込まれていると、にわかには信じがたいかもしれないが、いわゆる「国の借金」は国民の借金ではないし、国民一人あたり●百万円の借金も存在しない。さらに国(政府)の借金が将来世代へのツケになることはほぼないことも、ファクトが示している。「新聞に日本は危機だと書いてあった」「著名な経済の専門家が日本は破たんすると言っていた」としても、事実をもとに考えれば、日本経済の先行きを不安がる必要はさほどないと気づけるはずだ。もちろん、筆者の意見も頭から信じる必要はなく、読者のみなさんがファクトを知りご自身で判断していただければと思う。最も避けたいのは、危機をあおる報道などの表面的な印象から不安が立ち上がった状態で、事実を確かめることなく、さまざまな決断をする、あるいは決断を先延ばしにすることだ。マイホーム購入は大金が動く投資でもあるわけで、後悔しないためにはしっかりと自身のアンテナを張り、事実情報の収集と冷静な思考を怠らずに進めたいものだ。



国債等の保有者別内訳(平成28年3月末(速報))出所:日本銀行 資金循環統計






エディター&ライター
山下伸介
エディター&ライター 山下伸介

京都大学工学部卒業後、株式会社リクルート入社。二十数年にわたり、同社情報誌の編集に携わる。2005年より週刊誌『住宅情報マンションズ』(現『スーモ新築マンション』)編集長を10年半つとめ、『都心に住む by SUUMO』、MOOK『つぎに住むならどんな家?』なども手掛ける。2016年に独立。住宅関連テーマの編集企画、執筆、セミナー講師などを中心に活動中。更新中ブログ。一般財団法人 住宅金融普及協会 住宅ローンアドバイザー運営委員(2005年~2014年)。

 






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