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建築家リフォーム

2015年08月26日更新

置き家具と造作家具のはざま

造り付けの造作家具と一般的な置き家具の違いはどのようなものかご存知でしょうか?

造作家具とは、建築に埋め込むようなイメージで、空間の隙間部分にすっぽりと収まる家具のことです。壁や天井、或いは床にしっかりとビス(ネジ状の釘?)で固定しているのが特徴で、室内側から見える部分はきちんと仕上がっていますが、固定された背面や裏面は仕上がっていません(ラフな木組みの状態です)。横の壁と扉が揃っている玄関の靴収納や寝室の壁に埋め込まれたクローゼット収納、洗面カウンターなどが代表例で、キッチンカウンターなども広義の意味においては造作家具に含まれます。それに対して置き家具といわれるものは、リビングのソファーやダイニングのテーブル、いす類やコンソールテーブルなどです。家具屋で購入して部屋に置くだけで、お引越しの際には持ち運ぶことができる家具類です。どこにでも置けるので、どの面から見てもきれいに仕上がっており、自分の脚で垂直に立てることも重要なポイントです(造作家具はどこかに固定しないとグラついてしまうものがほとんどです)。

建築の設計者やインテリアデザイナーであれば、造作家具を設計できない人はいないと思われます。置き家具も造作家具と似たようなものだから、造れそうなものですが、「自立する」ということが想像以上に難しくて簡単には作れないのが現実です。ダイニングチェアのように人が乗っても壊れない頑丈さと、それ自体の軽さの両方を追求したものは、モックアップ(実物大模型)を幾度も作って試さないとできないですし、裏地のウレタンの仕組みが座り心地を決定するソファーなども難しい置き家具です。そんな中で、ダイニングテーブルやコンソール、書斎テーブルなどの机類は設計者でもデザインしやすい置き家具に入ります。

最近幾つかの、ちょっと特殊な置き家具を設計した事例があるので紹介いたします。一つは書斎机です。子ども部屋やキッチン等との力関係で(子どもと奥さんには敵いません...)少し狭目になってしまった書斎部屋に、さらに造り付けの大きな壁面収納を作ってしまったので、書斎テーブルに工夫が必要になりました。コンピューターのモニターを2台置くテーブルの横に、書類や筆記用具を置く台が欲しいのですが、それを作ると背面の収納が使いにくくなるというジレンマがありました。そこで特殊なサイドのテーブルが回転する機構を考えてみたものです。テーブル下には、床下のコンセント・LAN配線と直結できる位置にコンピューター本体を置く場所を作り、天板の裏には配線スペースを作りデザイン的にもすっきりさせることができました。もう一つの事例は、リビングの壁に沿うように立て掛けたコンソールテーブルです。ちょうど欲しいサイズとデザインのコンソールがなかったので特注で作ることになりましたが、折角デザインするのであれば、テーブルランプと携帯の充電用のコンセントを上面に取り付けることにしました。作ってもらう家具屋との打合せで、完全自立型にするには脚が4本では足りないことが判ったのでが、バランス的に脚を増やしたくなかったので、背面の壁に内部からビスで固定する方式としました。

置き家具といっても、書斎テーブルは回転する机の軸部分と床付けコンセントの部分が床に固定されていること、コンソールでは自立しているように見せるために背面にビス固定していることで、純粋な置き家具ではありません。造作家具と置き家具のちょうどはざまにある、中間的な家具のようなものかもしれません。いつかはソファーやダイニング椅子もデザインしてみたいですが、まだその部分の経験が足りないので、しばらくはこの置き家具と造り付け家具の中間帯で色々とチャレンジしてみたいと思っています。



ベッドサイドに置くナイトテーブルは、中々良い家具が見つからないので、 良く作る置き家具の一つ。引出が2段あるが、上段は食事などの際に カウンター面を広げられるトレーとなっている


こちらは基本サイズと素材感のイメージを伝えて、 アーティストの羽生野亜さんにお願いして作ってもらったセンターテーブル。 何種類かのアンティーク加工をしてもらった天板と、細い鉄の角パイプを組み合わせた 脚のデザインで魅力的に仕上がった


幅の狭い書斎に特注で作った書斎机。 手前に左に見えるサイドテーブル部分が軸を中心に
回転する仕組み。 コンピューター本体の熱を逃がす孔や配線を隠すトレーも工夫した



普通の置き家具に見えるが、実は奥の壁に固定している 「半置き家具」の
コンソールテーブル。 テーブル面はレザー張りとして、
中央にコンセントを設けるアイデアも実現した



こちらはシンプルな寝室に設置した置き家具タイプのチェスト。 引出の取っ手は金物で作った特注品で、部屋のバランスに合わせて、 右側にはコンピューターコーナーを設けた



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建築家
各務 謙司 (カガミ ケンジ)
建築家 各務 謙司 (カガミ ケンジ)

1966年東京都港区生まれ。早稲田大学大学院終了後、ハーバード大学大学院に入学。留学修了後、94年にニューヨークのCicognani Kalla設計事務所勤務。マンハッタンの高級マンションのリノベーション、郊外の別荘等を担当する。帰国後、生まれ育った白金台に設計事務所を開設。古くなった建物にリフォームで手を加え、住まい方にあわせカスタマイズし、生き返らせることを活動の一つの柱としている。
カガミ・デザインリフォームhttp://www.kagami-reform.com/

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