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建築家リフォーム

2015年11月18日更新

デザインリフォームのビフォー&アフター

マンションリフォームのデザイン的な醍醐味は、ビフォー(リフォーム前)があってアフター(リフォーム後)が比較的できることに尽きるのではないでしょうか。新築であれば、ゼロから出発して組み上げてゆくので、どんなにカッコ良い空間でも作り上げられます。しかしリフォームの場合は、ある意味マイナスの状態からスタートすること、さらに増築や窓・扉位置の変更ができないという空間的制限がある中での設計になるので、その変化の度合いが大きいことがドラマになるほど劇的なのだと思っています。
ここまで「建築家リフォーム」では工事が終わった後の空間を中心に紹介してきましたが、リフォーム前後を写真で比較した解説をしたことがなかったので、今回はビフォー・アフタースタイルで紹介してみます。なお、水回りを始め各部屋のレイアウトを全く変えてしまった事例では、リフォーム前後の写真を比べる意味がなくなってしまうので、そのようなケースは除いています。

Aの事例は、築29年180平米のヴィンテージマンションのLDKと玄関中心にリフォームした事例です。完全に閉じていたキッチンをダイニング側に引き出してオープンにして、以前は広すぎて家具レイアウトにも困っていたくLDK空間を調整しました。仕上げ材もカーペットをフローリニグ交換して、タイルやカラーガラスにグレー調のビニールクロスといった艶感の違う素材を混ぜながら使ってスタイリッシュに仕上げました。バラバラに全体を照らしていた照明もアクセントとなる壁面やダイニングテーブル付近に集中することで、メリハリのある空間になりました。

Bの事例は高層マンションのリノベーションでした。窓からの景観が自慢の高層マンションは、得てしてロビーは豪勢なホテル仕様して頑張っていますが、専有部分に入ると真っ白ベースの特徴のない空間になりがちです。クローズド型だったキッチンは一部をリビングダイニング側に開放して、食器に上げ下げに使えるカウンターを設けました。正面右手は大理石調タイルを張った壁となっていますが、色を合わせた扉の奥には子供の部屋を作っています。右手のブラインド付きガラス壁の奥には、ご主人用のオフィススペースがあります。梁型や天井カセットエアコンなどでガタガタだった天井のラインも、仕上げ材を変えて間接照明で演出することでスッキリとしました。

Cの事例では、リビングダイニングとキッチンの関係性をリフォームで直しています。かつては建具分だけしか開口がなかったキッチンですが、冷蔵庫の位置を変えることで、両側から使えるカウンターを設けセミ・オープンなキッチンに変えています。以前のLD空間はどこにでも、どのような家具でも置けるようなノー・キャラクターな空間でしたが、リフォームでダイニングテーブルを置く空間の上は天井の形状を変えて、掘り込みの照明器具を仕込んでいます。壁にも飾り棚と収納を設け使い勝手も良くしています。その他少し時代遅れに感じた廊下からの建具やリビングの造作収納の面材を塗り替えてみました。全体に費用を過度に掛けずに、仕上げ材や扉などを交換・塗り替えることでコストパーフォーマンスを上げたリフォーム事例です。

Dの事例は玄関ホールのリフォームです。以前は玄関タタキ脇の靴収納とリビングへの大きな親子扉がありました。それぞれのデザインモチーフは揃っていましたが、バラバラな印象だったので、両者をひと繋ぎのデザインで纏めてみました。L字型の木製フレームを全体に掛け、その中に暗かった玄関に光を透過するガラス扉、靴の脱ぎ履きに使える手すり付きのベンチ、そして同じ材料で作った靴収納を組み込みました。ベンチ上には大理石のモザイクタイルを張って、照明で照らすことで演色性も増しています。

最後のEは廊下の事例です。パブリック部分とプライベート空間を繋げる長い廊下はLDと同じ床&壁材で長さが冗長に感じる退屈な空間でした。リフォームでは、LDとも奥の寝室とも雰囲気が違う、気分転換ができる廊下空間にすべくデザインを考えました。片側の壁はウォールナットの羽目板張りにして、壁付けのブラケット照明をリズム良く配置しました。反対側の壁には小さなベンチ付きの書棚を設けて、通るだけの機能しかなかった空間に滞留する要素を加えてみました。床材は木製フローリングでフレームした中に、大理石を張ることで、足裏に感じる触感にも変化を与えています。

全てのケースで共通しているのは、マンション分譲時に用意された、万人受けする(つまり無難な)癖のない(つまり白いクロスをベースにした)空間を、住み手の個性やユニークな住み方、さらにはその空間自体が持っている個性に合わせて、仕上げ材を選び直しながらデザインし直すというデザインプロセスでした。


D.築古の高級マンションの玄関リフォーム事例。
バラバラだった、靴収納とリビングへの扉を、
木製フレームで一体的に纏め、靴の脱ぎ履き用ベンチも加え、
一つのデザインとして見せた


E.PP分離の長い廊下の仕上げ材を変えた事例。
片側はウォールナット羽目板張り、反対側は本棚付きの造作ベンチで、
通り抜けるだけの空間に機能をプラス


A.千代田区一番町のビンテージマンション事例。
大きすぎるリビングダイニングを適正サイズに補修して、
家具レイアウトをしやすい空間へとリフォーム



B.港区台場の高層マンション事例。
天井高さを活かし、大理石調タイルやガラス壁、羽目板張りの天井等で
空間に個性を与えたリノベーション



C.白金台の築浅マンションのコスト・パーフォーマンスを
重視したリフォーム事例。キッチン以外は大きく空間構成を変えず、
仕上げ材の化粧直しを中心とした計画で空間の雰囲気を一変させた





建築家
各務 謙司 (カガミ ケンジ)
建築家 各務 謙司

1966年東京都港区生まれ。早稲田大学大学院終了後、ハーバード大学大学院に入学。留学修了後、94年にニューヨークのCicognani Kalla設計事務所勤務。マンハッタンの高級マンションのリノベーション、郊外の別荘等を担当する。帰国後、生まれ育った白金台に設計事務所を開設。古くなった建物にリフォームで手を加え、住まい方にあわせカスタマイズし、生き返らせることを活動の一つの柱としている。
カガミ・デザインリフォームhttp://www.kagami-reform.com/

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