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中島早苗の「心地いい場所」

2009年12月23日更新

樅の木とニッセとグルックと

 こう並べれば、わかる方にはわかりますね。
 そう、デンマークのクリスマスです。

 以前何度か訪れ、5年ほど前にはとある女性誌から
「北欧のクリスマス」というテーマで取材、執筆を
頼まれて訪れた北欧諸国。
 北欧のこの季節はほんとーに、昼間が短くて日差しも弱いですが、
だからこそ、クリスマス取材で出会った温かな時間と光景を
今でもよく思い出します。

 今回は北欧のクリスマスのお話を少し。
 彼の地では24日が「クリスマス当日」、クリスマスイブの「イブ」は
「イブニング」のこと、つまりクリスマス当夜という意味です。
 翌25日を「ファーストクリスマスデイ」、
26日を「セカンドクリスマスデイ」と呼び、
3日間は日本の昔の3が日のように、官公庁を含めて
全ての国民が休む休日になります。

 24日から数えて4週前の日曜日(待降節)からの1ヶ月、
家々ではヒヤシンスなど季節の花を飾り、市場で生の樅の木を買ってきて、
住まいをクリスマス仕様に整えていきます。
 週末には赤ワインに数々のスパイスを入れてつくる温かい飲み物
「グルック」を用意し、互いに友人や親戚を招きます。

 インテリアには、赤い帽子を被ったサンタのような人形を飾りますが、
よく見るとサンタではありません。
 ニッセという、北欧で昔から信じられ、元は家畜、今では家や子供を
守るといわれている小妖精です。

 ニッセはクリスマスに現れ、プレゼントをもってきてくれると
信じられているので、デンマークではニッセ人形を飾り、
食べ物と感謝を捧げるのです。

 そうしていよいよ24日の朝。
家族揃ってツリーを飾り付け、皆で教会のミサへ。
 夕方からは家族でディナーをいただき、電気を消して、
本物のキャンドルを灯したツリーを囲みます。
 クリスマスの歌を歌い、手をつなぎ輪になって踊った後、
ツリーの下に置かれたプレゼントを順番に開く
――こうして静かに過ごすのが、北欧流クリスマスイブ。

 写真は件の女性誌取材時もコーディネーターとしてお世話になった、
コペンハーゲン在住の冨田千恵子さんが撮影、提供してくれたもの。
 写真キャプションも冨田さんが付けてくださいました。

 ツリーは義理のご両親宅のもので、たくさん付けられた
本物のキャンドルをはじめ、赤と白のカラーを貴重に
綺麗に飾られているのがおわかりいただけるでしょう。
 生の樅の木に附けられた幾つものキャンドルの炎が
微かに揺れるクリスマスツリーには、神聖な美しさを感じました。

 当時は毎日のように粉雪が舞い、昼間でも零下3℃などという日も
あって、本当に寒かった北欧のクリスマスでしたが、
行く先々のお宅で温かくスパイシーな「グルック」をご馳走になり、
頬を染めて取材した幸福な毎日でもありました。

 思い出を懐かしむように、この季節は私も自宅でグルックをつくります。
 私のレシピをご紹介しちゃいましょう。

①水300ccにカルダモン、シナモン、クローブ、オレンジの皮、
 ショウガ、三温糖を加えて煮立たせ、冷めたら濾す。
②赤ワイン1、2本に①を入れ、スピリッツに一晩漬け込んだレーズンを
 加えてゆっくりと温める。
③好みによりさらにスピリッツを足したり、砕いたアーモンドを入れて  いただく。

 赤ワインを温める時に、沸騰させないように気をつけましょう。
 一度、夕方のパーティのために朝からこれを鍋で仕込んで
温めていたら、家中がグルックの香りに!!
 気化したグルックが充満し、お酒が弱い人ならこれだけで
酔っ払いそう……

 当の私も味見を繰り返すうちにグルック色の頬となり、
以来「グルックの仕込みは夕方にすべし」を旨としたのでありました。


冨田さんの義理のご両親お手製のクリスマスツリー




(左)窓辺のニッセ。赤い帽子をかぶったニッセ一家は、屋根裏部屋に住んでいると信じられている妖精一家。クリスマスの食べ物、ミルク粥が大好きなで、この時期に姿を現す。屋根裏にミルク粥を供えないと小さないたずらをするので、ニッセ人形のそばにはミルク粥のボールが置かれている。当地の言い伝えによると、サンタクロースはニッセ一家のおじいさんがモデルだそうだが、定かではない
(右)デンマークで飾られるハートのオーナメントの特大サイズ版。本来なら紙で作るが、これはメタル製。樅の木の枝を入れ、部屋に飾る


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リビングジャーナリスト・「家の時間」編集主幹
中島早苗
リビングジャーナリスト・「家の時間」編集主幹 中島早苗

1963年東京生まれ。日本大学文理学部国文学科卒。アシェット婦人画報社で12年在籍した住宅雑誌『モダンリビング』を始め『メンズクラブ』『ヴァンサンカン』副編集長を経て独立。約20年間400軒あまりの家と家族、建築家、ハウスビルダーなどへの取材実績を基に、「ほんとうに豊かな住まいと暮らし」をテーマとして、単行本や連載執筆、講演等活動中。著書に『建築家と家をつくる!』『北欧流 愉しい倹約生活』(PHP研究所)『やっぱり住むならエコ住宅』(主婦と生活社)『住まい方のプロが教えるリフォーム123のヒント』(日本実業出版社)『建築家と造る「家族がもっと元気になれる家」』(講談社+α文庫)他。

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