2015年06月10日更新
マンション売却にかかる費用と税金
マンションを売却する際にかかる費用は、一般的に一戸建て住宅の場合よりも少なく、また、購入するときほど多額になることはありません。しかし、マンションの状況や契約条件などによってはそれなりの費用になることもあるため、事前にしっかりと確認しておくことが大切です。思わぬ費用負担で売却や買い替えの計画が大きく変わることは避けなければなりません。
■いちばん大きな負担は仲介手数料
マンションを売却するときには仲介会社に依頼することが大半であり、契約が成立すれば仲介手数料を支払わなければなりません。その上限額は「売買価格×3%+6万円(別途消費税)」で計算することができ、たとえば3千万円で売却すれば96万円(別途消費税)となります。
この仲介手数料は「決められた額」ではなく、あくまでも「上限額」ですが、売却を依頼する際の媒介契約書に明記することになっていますから、よく確認しておくようにします。また、これは仲介会社の成功報酬であり、売却の契約時に半金、決済(残代金の受け取りと物件の引き渡し)時に残りの半金を支払うように求められることが多いでしょう。
なお、仲介会社が介在せずに不動産会社が直接あなたのマンションを買い取り(下取り)すれば、仲介手数料は発生しないことになります。
■登記費用は一部を負担、その他の主な費用は?
買主に対する所有権移転登記費用は、特別な事情がないかぎり買主が負担することになるため、売却に伴う売主の負担分はありません。ただし、登記名義人と実際の権利者が異なる、相続登記が終わっていない、住所が古いままになっているなどの場合には、あらかじめその登記内容を現状に合わせる必要があり、その費用(登録免許税、司法書士報酬、必要書類の取得費用など)は売主が負担することになります。売却によりこれまで借りていた住宅ローンを返済し、その抵当権を抹消する費用も売主の負担です。
それ以外の費用として、売却にあたり事前にリフォーム工事や買主へ引き渡す設備の修理、補修、交換などをする場合には、それなりに高額の負担となりかねませんから、しっかりと検討することが大切です。また、引き渡し前に専門業者によるマンション室内のクリーニングをしてもらうこともあるでしょう。
【その他の主な費用】
□ 引越し費用
□ 不用品の処分費用
□ 売買契約書に貼付する収入印紙代
□ 評価証明書、印鑑証明書、住民票などの取得費用
□ 住宅ローンの繰上げ返済手数料や振込手数料
■マンションの売却にかかる税金のポイント
これまで自らが住んでいたマンション(居住用財産)を売却する場合には「3,000万円の特別控除」があり、売却による利益があった場合でも3,000万円以内であれば税金はかかりません。ただし、「住まなくなってから3年目の年の12月31日まで」などの要件があるため、空室にしてからしばらく期間を経て売却するような場合には十分な注意が必要です。なお、「3,000万円の特別控除」は所有期間の長短を問われません。
その一方で、マンション(居住用財産)を売却して損失があった場合には、最長4年間にわたり他の所得と損益通算する(所得税の還付を受ける)ことのできる特例があります。ただし、これは売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超える場合に適用できる特例であり、5年以下の場合には使うことができません。その前後にマンションを売却するときには、しっかりと確認しておくことが大切です。
マンションの売却で気をつけなければならないのは「減価償却」です。個人の家計にはあまり縁のない制度ですが、建物部分については一定の計算式に基づく減価償却をしなければならないのです。そのため、購入したときと同じ金額、あるいは購入したときよりも少し安い金額で売却しても「利益あり」とされる場合があります。とくに、第三者に貸していたマンションを売却するときなど、意外と多額の税金がかかることもありますから十分に注意しなければなりません。
イメージフォト:「愛宕グリーンヒルズ フォレストタワー」スカイデッキからの眺望(2010年撮影)
【マンション売却のコツ】
<第1回>マンションを売却する前に知っておきたい基礎知識
<第2回>売却における専任媒介と一般媒介の違いは何か
<第3回>マンションの査定を受けるときのポイント
<第4回>売却を依頼する仲介会社の選び方
<第5回>マンション売却にかかる費用と税金
<第6回>中古マンション市況の調べ方
<第7回>「情報の囲い込み」とは?
<第8回>「ホームインスペクター(住宅診断士)」とは?
- 不動産コンサルタント
平野雅之 リックスブレイン代表。東京都、神奈川県を中心に20年以上にわたって不動産売買の媒介業務に携わる。取引実務に精通する専門家として一般消費者向けの相談業務や現実に即した情報発信をしている。オールアバウト「不動産売却・査定」、「不動産売買の法律・制度」など幅広いテーマでガイドを務める。