2015年04月22日更新
売却における専任媒介と一般媒介の違いは何か
マンションの売却活動は、仲介会社との間で専任媒介契約、専属専任媒介契約、一般媒介契約のいずれかを締結することで実質的にスタートします。そのうちどれが適切なのかは物件のおかれた状況によっても異なるため、それぞれの特色を理解したうえで選ぶことが大切です。内容の違いや選択のポイントを確認しておくことにしましょう。
■専任と一般の違い
専任または専属専任では、売却を依頼できる仲介会社が1社に限られます。それに対して一般の場合は複数の仲介会社に依頼することのできる点が最も大きな違いです。また、専任と専属専任では「レインズ」と呼ばれる不動産会社間の情報交換システムへの登録義務があるのに対して、一般ではその義務がないという違いもあります。
専任と専属専任はそれを受ける仲介会社側の報告義務も規定されており、定期的に依頼者(売主)へ業務処理状況報告をしなければなりません。専任と専属専任の違いは、レインズへの登録期限と業務処理状況報告の頻度であり、いずれも専属専任のほうが厳しくなっています。
マンションの購入者を売主が自ら見つけたときの扱いにも少し違いがあります。たとえば、仲介会社と媒介契約を締結して売却活動を始めた後に、売主自身の友人や知人、親戚などがそのマンションを買いたいとなったとき、一般と専任では仲介会社を間に入れずに直接取引をすることができます。それに対して専属専任のときは自己発見取引が認められず、買主が誰であろうと必ずその仲介会社を通さなければ契約をすることができません。
■専任と一般のどちらを選ぶべき?
一般媒介で数多くの仲介会社へ売却を依頼したほうが、買主を探す窓口が広がって有利なように感じるかもしれません。しかし、専任媒介や専属専任媒介ではレインズへの登録義務があるため、売却しようとするマンションの情報は地域内のほとんどの仲介会社へ行き渡ります。一般媒介でもレインズへ登録をする仲介会社もありますが、全体的に見れば専任媒介や専属専任媒介のほうが物件情報は広がりやすいといえるでしょう。
また、一般媒介では売買契約成立に至らなかった仲介会社は手数料を得ることができないために、広告や営業活動にあまり経費を掛けることができません。
そのため、なかなか売りづらいマンション、しっかりと広告や営業をしなければ売れないマンションでは、専任媒介または専属専任媒介で1社に依頼をしたほうが成約の可能性は高まります。それに対して需要が多く、売り出せばすぐに買主が見つかるようなマンション、仲介会社が抱えている顧客が積極的に検討できるようなマンションであれば、一般媒介のほうが早く成約できるケースもあるでしょう。
ただし、専任や専属専任で依頼を受けた仲介会社が、その情報を他の仲介会社に紹介しないような「囲い込み」をすると、思いどおりの売却ができなくなることもあります。物件の「囲い込み」については改めて解説しますが、自社の利益を増やそうとするための不正な行為です。
したがって、しっかりと信頼のおける仲介会社があれば専任媒介または専属専任媒介、そうでない場合は一般媒介とすることも、選択基準の一つとして考えることができます。
イメージフォト:六本木一丁目の街並み「スウェーデン大使館」(右)(2014年5月撮影)
【マンション売却のコツ】
<第1回>マンションを売却する前に知っておきたい基礎知識
<第2回>売却における専任媒介と一般媒介の違いは何か
<第3回>マンションの査定を受けるときのポイント
<第4回>売却を依頼する仲介会社の選び方
<第5回>マンション売却にかかる費用と税金
<第6回>中古マンション市況の調べ方
<第7回>「情報の囲い込み」とは?
<第8回>「ホームインスペクター(住宅診断士)」とは?
- 不動産コンサルタント
平野雅之 リックスブレイン代表。東京都、神奈川県を中心に20年以上にわたって不動産売買の媒介業務に携わる。取引実務に精通する専門家として一般消費者向けの相談業務や現実に即した情報発信をしている。オールアバウト「不動産売却・査定」、「不動産売買の法律・制度」など幅広いテーマでガイドを務める。