2012年04月11日更新
中古マンションのリフォームも同時提案「三井の住まいモール」
マイホームを探していて、「不動産業界はなぜこうも縦割り組織なんだろう?」と不満に思ったことはありませんか。
中古マンションか新築マンションか。どちらかを買いたいと思って問い合わせてみても、両方の物件を提案してくれる営業マンはいません。中古なら仲介の営業マンが、新築ならその物件担当である営業マンが自分の範疇にある物件を推奨するだけです。仮に、仲介も新築(販売代理)も同じ会社で取り扱っていても、必ずと言っていいほど別々の営業マンが付きます。扱う部署が違うからです。
来訪カードに同じことを何回も書いて、希望条件を何度も話す。それだけならまだいいのですが、何より心もとないのが「新築と中古の違いを客観的に説明してくれる人がいない」こと。”顧客主義”と経営理念にはうたってはいても、それはあくまで物件の種別を決めた後のことであって、同時並行で物件選びをする人にとってみれば、到底それは実感しようのない企業方針でしかありません。
このような現状に至った背景には、大きく2つの要因があると考えます。ひとつは専門性の問題です。例えば、用地を仕入れて建物を企画し分譲するデベロッパーと、売主と買主をつなげる仲介業では、要するスキルと知識がまったくといっていいほど異なります。同じ不動産(宅地建物取引)業でも収益構造やリスクマネジメントが違うなら、それぞれの市場に特化して事業を展開したほうが市場競争力が養われる、つまり縦割り組織のほうが儲かる集団をつくりやすかった、と判断したのです。
もうひとつは市場のスピードです。とくに都市部における人口の増加、世帯の増加、大型開発案件の増加、既存住宅の老朽化対策など成長が見込めそうな住宅市場は団塊世代と団塊ジュニア世代が限られたタームの中で伸縮することが予測されていました(実際それに近い動向を示しましたが)。だから経営者は、潜在ニーズをじっくり育てるといった選択肢は選びようもなく、顕在化する需要をどれだけ効率よく刈り取れるかを考えるしかなかったのでしょう。顧客満足を思う前に、猛スピードで膨張する市場のキャッチアップに必死だったのではないでしょうか。
今後、業種を問わず日本市場全体が成熟化していく中、住宅産業も舵取りが難しい局面を迎えています。商品を並べていればお客さんが来て買ってくれる、そんな時代は過去のものとなりました。価値観もライフスタイルも多様化が進み、これまでの縦割りの窓口ではすでに受け止めきれなくなっているはず。例えば、「新築か中古かの選択」の前に「品質の良い物件を求める」傾向があったり、「部屋数で間取りを選ぶ」のではなく、「リフォームのしやすさ」を念頭に中古マンションを探したり、顧客の住まい選びのアプローチは大きく変わってきています。
このほど三井不動産グループでは「三井の住まいモール」を開設。これまでバラバラに店舗を構えていた「新築マンション(三井不動産レジデンシャル)」、「中古・土地(三井のリハウス)」、「注文住宅(三井ホーム)」、「賃貸(三井の賃貸「レジデンシャルファースト」)」、「リフォーム(三井のリフォーム)」の5ブランドが一箇所に集まってワンストップサービスを目指すとのこと。例えば、これまで中古マンションを買って自分の好きなようにリフォームをかけたいと思っていても、ひとつの場所で検討を進めることはほぼ不可能でした。それが今後は、「同じ場所でリフォームした後の間取り図と予算を睨みながら、中古マンションを検討することが可能」になります。組織横断の展開が顧客満足度にどうつながるか。興味深く見守ってみたいと思います。
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- 『家の時間』主宰
坂根康裕 リクルート『都心に住む』『住宅情報スタイル』元編集長。ブログ「高級マンション TOKYO」。All About「高級マンション」ガイドも努める。著書に『理想のマンションを選べない本当の理由』(ダイヤモンド社)