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都市で静かに広まる体も心も温める暖房 薪ストーブのある暮らし

住宅街で薪ストーブを楽しむためのポイントとは?

 日本で使われる薪ストーブは、大きく分けて2種類あります。ひとつが主に寒冷地や農村部のホームセンターなどで売られている、安価なブリキ製のもの。そしてもうひとつが欧米を中心に作られている鋳物や鉄製のものですが、今回お話するのは後者になります。煙突を除く本体だけでも20万円代~と高価ですが、良質な製品にきちんとメンテナンスを施せば数十年は使用することができます。

 「私たちが集計した暖炉・薪ストーブの設置台数は昨年約8,000台でしたが、その95%が薪ストーブです。協会を設立した17年前に比べて設置台数そのものが倍増しており、薪ストーブが占める割合も上昇の一途です」と話すのは、日本暖炉ストーブ協会の中川真吾さん。同協会は薪ストーブメーカーの日本法人や輸入代理店、施工業者約80社が中心となり、日本における暖炉や薪ストーブ品質保持や安全性確保のための情報収集や広報活動を行っている、日本最大の薪ストーブ関連任意団体(法人化申請検討中)です。

 日本における薪ストーブの普及はまだ発展途上で、法的にも未整備な部分が多く「薪ストーブに関する法律で現在あるのは、煙突に関するもの(建築基準法)だけ」(同協会 中川さん)。施工や使用に対する基準がないため、関係者の個々の判断に委ねられているのが現状です。

 「DIYの延長的な感覚で建て主が自分で設置したり、安価な煙突を取り付けたことにより、火災などの事故を起こす事例もあります」と警鐘を鳴らす中川さん。同協会では会員企業を対象に、施工方法や安全性に関する講習会や勉強会を行っており、こうした会社に施工を依頼するのも、安全に薪ストーブを楽しむひとつの方法です。

 一方、薪ストーブの設置にあたり、住まいの設計上の注意点や工夫はどのようなものがあるのでしょうか。「これまで薪ストーブのある家を40軒以上設計しましたが、その約半数が別荘地ではない普通の住宅地」と話す建築家の松原正明さんは、都市部ならではのマナーとして、いくつかのポイントを挙げています。

 (1)隣地との高低差
 住宅地では高さ制限があり、隣家との屋根の高さは同じ場合が大半。その上に煙突をのばせば煙突から出る排気は上昇気流にのって放出、隣家への影響は少なくなるので、それほど心配はいりません。問題は、ひな壇など高低差のある敷地。自宅の敷地が低い場合、煙突の位置が隣家の窓の高さになることもあるため、煙突の位置や長さに十分な注意が必要です。

 (2)自宅で薪置き場が確保できるか
 1シーズンに使う薪の量は相当なもの。放火の恐れがあるため、薪置き場は道路際や隣地境界に近い場所を避けるように配置します。また薪割りの音も近隣への迷惑となるため、別の場所で行ってから運び込むなど、調達の方法やルートの確認も必要です。(カットされた薪を購入する方法もありますが、かなり割高に)

 (3)薪ストーブの設置場所
 なるべく隣家の大きな開口部(南側が一般的)から遠い場所に煙突を設置します。現在は法律で24時間換気が義務付けられているので、隣家の吸気口の位置も考慮するようにします。

 「なんといっても肝心なのが、”ご近所づきあい”と”薪の調達”」と強調する松原さん。新興住宅地など、コミュニティが十分にできていない土地でトラブルになるケースが目立つと話します。反対に、古い住宅地でコミュニティができている地域の場合、一人にきちんと話しておくことで自然に周囲に伝わることもあるそう。「近隣への配慮を怠らず、煙の出にくい十分乾燥した薪さえ確保できれば、都市部でも薪ストーブを導入するのはそれほど大変ではありません。最近は40代以下の若い世帯や、女性で積極的に楽しむ方が増えていますよ」(松原さん)。

 また、導入にあたり、ぜひ参考にしたいのがクチコミのネットワーク。「薪ストーブメーリングリスト」などでは薪の調達方法や使い方など活発な情報交換が行われています。また「薪ストーブライフ」などのユーザー向け専門誌でも有益な情報が得られます。

 松原さんによると、薪ストーブは1台で家全体を暖めるため、なるべくワンルームに近いつくりにし、建具は引き戸を採用することが設計上のポイントなのだそう。家中の風通しをよくすることで、他者の気配をどこでも感じられるようになり、自然とストーブの周りに集まるようになるなど、家族の関係性にも良い影響があると話します。意外と知られていませんが、リフォームでも取り付けられるのだとか。興味のある方は、一度検討してみてはいかがでしょうか。


薪ストーブのデザインはさまざま。シンプルなタイプは写真のスキャン(デンマーク)やヨツール(ノルウェー)など北欧のメーカーに多い。写真提供(タイトル写真も):松原正明建築設計室


ノルウェーで誕生し、現在はベルギーで生産される「ドブレ760」はクラシカルなデザイン。大きな全面ガラスで美しい炎を堪能できる。写真提供:株式会社メトス


アクセサリー類も絵になるものが多いのが薪ストーブ。7色の炎が楽しめるカラーコーンのギフトボックスはクリスマスのサプライズ演出にもおすすめ



取材協力:日本暖炉ストーブ協会 http://www.jfsa.gr.jp/
       松原正明 建築設計室 http://plaza.harmonix.ne.jp/~mmatsu/
       株式会社メトス http://metos.co.jp/

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