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ホーム&ライフスタイル トレンドレポート
希望どおり、想像以上。しあわせなリフォーム。
取材・文 田中やすみ

魅力ある古い建築を現代によみがえらせるプロジェクト

 日本の不動産市場では、築年数の経った中古建築の価値はほぼゼロというのが現状です。そのため、古い建築は売却の際に大半が取り壊され、更地や建築条件付きの土地として販売されているケースがほとんど。建築家の名作住宅や名もない設計士による味わい深い事務所ビルなど、長い年月を経て魅力を増した建築物は、手を入れれば十分住み続けられるにも関わらず、売却時にその役割を終えてしまうことも少なくありません。

 一方で、古い建築物の価値を理解し、愛着を感じる人々も徐々に増えています。新しい住み手を見つけ、リフォーム後の建築物を引き渡せば、魅力的な建物は残り、住み手も快適に暮らすことができるのでは?そう考えて「古くなり手放されようとしている価値のある作品」と「新しい住み手」をマッチングさせる取り組みとしてスタートしたのが、本サイト「建て主参加型の家づくり」でおなじみの、ますいいリビングカンパニーによる『よみがえる家』プロジェクトです。

 『よみがえる家』では、「建築家の作品を受け継ぐ」と「価値ある古い建築を受け継ぐ」の2項目で売却物件情報を募ると同時に、自社サイトでその内容を公開。購入を検討する人に対し、保存や維持を前提としたリフォームのコンサルティングを行っています。

 「しっかり設計された鉄骨やRC(鉄筋コンクリート)造であれば、築年数が経っても躯体自体は十分強固です。築30年近い木造になると、さすがに傷みがでてくるケースが多いですが、築20年未満なら大丈夫なものも多いですね」(同社 増井真也さん)。工務店機能を持つ設計事務所の強みを活かして建物のつくりを入念にチェックし、デザインと施工の両面から古い建築を現代によみがえらせる方法を個別に提案しています。

 耐震性については必要に応じて専門家による構造計算を取り入れ、場合によっては半分位を残してスケルトン状態にしてからリフォームをするケースもあります。それでも全部壊して新築住宅を建てるより安く済むことが多いのだそう。「壁紙の張り替えや外壁塗装、設備交換といった表層的なリフォームなら大手のリフォーム会社のほうが安いですが、構造を活かした全体的なデザインを望むのなら、設計事務所に依頼するのもひとつの方法です」

 また、名建築にこだわらなくても、予算的な制限があったり広さを確保したい場合、あるいはエリアや立地を限定して住まいを探す場合などは、中古住宅のリフォームを選択肢に加えれば、希望に近い住まいを手に入れる可能性があると増井さんは話します。倉庫を住宅に改造するなど、より積極的に住まいづくりに参加したい人にもおすすめの方法なのだそう。信頼できるパートナーと共に中古の家をよみがえらせる過程は、まさにひとつのドラマ。住み手自身が家づくりを主体的に楽しむ大きなチャンスともいえそうです。

建築家・横河健設計の名建築「COSMOS」も紹介。同氏が建物に合わせてデザインした家具・調度品も、全てそのままで手に入れることができる


取材協力: ますいいリビングカンパニー  http://www.masuii.co.jp/
  よみがえる家  http://www.masuii.co.jp/fudousann/fudousannsaite.htm

住まいの記憶を現代につなぐ工務店

風景の切り取り方は時に空(天窓)にも及ぶ。材木業も営んでいるため、無垢材の扱いは得意だ。「ただ、居心地よく感じるには面積の5割以下に抑えないと」


取材協力: 鈴木工務店 http://www.suzuki-koumuten.co.jp/        
  鈴木工務店リノベーション
  http://www.suzuki-koumuten.co.jp/indexreno.htm

 先祖代々の家を、地域の大工や工務店に手を入れてもらいながら丁寧に住み継いでいく。昔は当たり前だった日本の家の保存再生方法に、再び注目が集まっています。今回伺った町田市の鈴木工務店は、明治時代から地域に根付き、住まいや建て主とのつながりを大切にしてきた工務店。自社の敷地内には、社長が幼少の頃に住んでいたという茅葺きの古民家がリフォームされて残っていました。

 「これは江戸末期に先祖が建てた隠居小屋です。決して豪華ではないけど、その時々の住み主によって手が加えられています。子どもの頃の記憶、家族の歴史といった”時間軸”が建物として残っていることは、理屈ぬきでうれしいものです」と話す同社の鈴木亨社長。「普通の木造建築でも考え方は同じ。しっかりした造りで建て、必要に応じてきちんと手入れやリノベーションをすることが大事です。建った時が完成ではありません」。特に土壁や木材などの自然素材はリサイクル可能ですが、最善の環境配慮は壊さずに使い続けることだと言います。

 同社がリフォームではなく「リノベーション」と語る背景には、住まいを形だけでなく”住まい方”まで提案するというポリシーがあります。古い住宅に不足しがちな気密性と断熱性はしっかり確保した上で、住み手が心地よさを感じる空間ボリュームや風景を切り取る開口の大きさ、光や風の通り道などを綿密にプランニング。住まいに刻まれた記憶と記録を残しながらも、これからの住まいにふさわしい設えと暮らし方を提案しています。

 また、壁紙にビニールクロスは使わず、ドイツのルナファーザーという塗装下地壁紙を積極的に採用。これは天然素材でつくられた”呼吸する壁紙”と言われ、有機溶剤を使わず安全な水性エマルションペイントを10回位上塗りできる耐久性の高いもの。5年置きのペースで塗り替えたとしても2世代に渡り使用することができ、安全性や経済性だけでなく、張り替えることなく家の歴史を重ねていってほしいという、同社の思いが込められています。

 地域に根ざした良心的な工務店は、その性格上、遠方での仕事を請けない場合がほとんど。では自分が住む地域で、より良い工務店を選ぶポイントは?と最後に訊ねました。「まずはプランニング力。明確なポリシーや個性があり、住まい手の要望を聞きながらもプラスアルファの提案ができるところがいいですね。それと、コミュニケーションをとろうと工夫しているところ。事務所を訪ねて事例を見せてもらうほか、見学会に参加するのもおすすめです」

既成概念を取り払った、物語性のあるマンションリフォーム

朝日がまぶしい「AMルーム」(左)のキッチンは、動線を考慮して角をなくした。「PMルーム」(右)は視線を低く集め、ぐっと落ち着いた空間に


取材協力: 取材協力:東急ホームズ 暮らしアップ http://www.kurashi-up.com/

 不動産専門のデータバンク「東京カンテイ」によると、08年の首都圏における中古マンションの流通件数は、前年比28.6%増の23万5000件。苦戦が伝えられる新築マンションに比べ、中古マンションの需要の高さが目をひきます。「マンションリフォームを依頼される方も増えています」と話すのは、東急ホームズのリフォーム部門のデザイナー、小澤誠司さん。前身である東急アメニックスより、18年間にわたりリフォームデザインに携わっているベテランです。

 小澤さんによると、リフォームにおけるデザインは「今や付加価値ではなく、最低限必要とされる基本性能のようなもの」。依頼主が言葉にできない要望をすくい取り、それぞれの中古住宅が持っているポテンシャルを最大に引き出しつつ、期待以上の感動を生み出すには、既成概念を取り払う柔軟性が必要だと話します。

 例えば、小澤さんが設計した「かくれんぼとダッシュのできる家」。依頼主は当初広いワンルームを希望していましたが、会話を交わしているうちに「子どもが走り回れる空間がほしいのだ」と気付いたそう。そこで、3部屋を1室にまとめた後で円筒型の壁を2つぽんぽんと置いたようなプランを提案。曖昧に区切られたスペースが迷路感と隠れる場所を生み出し、単調なワンルームが、たくさんの居場所と奥行き感を持つ魅力的な空間に変わりました。

 また、別の依頼主が購入した中古マンションは北向きの角部屋。リビングダイニング(LD)は東側に面し、昼を過ぎると薄暗い印象でした。そこで「LDとは何でしょうか?」という問いを投げかけ、その時間に最も居心地のいい場所をLDにすることを提案。朝日が入る東側の旧LDKを「AMルーム」、夕日の入る西側の旧主寝室を「PMルーム」とし、2つのリビングを持つ贅沢な住まいになりました。

 さらに、自然光を最大限部屋の中まで取り込むために、躯体に影響の出ない壁や扉を極力取り除いて視線の抜けをつくり、白い壁で外光をプリズムのように曲げながら室内に取り込み、照明に頼らずに明るい室内を実現させました。

 「困難な条件を逆手にとったようなアイデアですが、デザインそのものは決して奇をてらわず、理に適ったものにします」と話す小澤さん。理想とするのは、光と影や風、音、時間など五感を楽しませる空間をデザインすること。同時に、満足度の高いデザインリフォームをする秘訣として、部分ごとの具体的な要望よりも、まずは住まい全体の理想のイメージを大切にプランを考えることを挙げました。制約の多いものほど、住まい手の想像を遥かに超えたデザイナーの提案に、喜びや感動が生まれる。まさに中古マンションリフォームには、その醍醐味が凝縮しているように思いました。

■取材ノートより
家の時間のコンセプトである「環境」「デザイン」「安心」と、「住み手が主役となる家づくり」の最先端を走っているのは、ひょっとしてリフォームなのではないか。そう感じさせるほど、さまざまな可能性を感じた取材でした。話を伺った作り手側だけでなく、住み手の意識の高さと、世界でただひとつのオリジナルな家を楽しもうとするクリエイティブな姿勢にも、リフォームニーズの変化を感じます。中古住宅の耐震性については、業界団体や第三者機関、公共機関による耐震診断を利用する方法もあります。補強工事の際に助成をする自治体も多いのので、ぜひ問い合わせてみてください。

日本木造住宅耐震補強事業者協同組合 http://www.mokutaikyo.com/
NPO法人日本耐震防災事業団 http://www.nittaibou.jp/
国土交通省「マンションの耐震性に関するご相談窓口について」
          http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha05/07/071129_2_.html



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