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地域と人とつながる住まい 畑を通じて人と暮らしの輪が広がる 花園荘 ~畑がついてるエコアパート

 そのアパート、花園荘があるのは東京都足立区の北部。ほんの数年前までは電車の便が悪いこともあり、周囲には農地が広がっていたという。
 しかし、つくばエクスプレスの開通が決まり、最寄りに駅ができることになってから、町の風景は急激に変わり始める。
「地価が上がって、収益性の高いワンルームマンションがどんどん建ちました。でも、これで町はよくなるんだろうか」。この町に生まれ育った平田さんは疑問を持つ。

 平田さんは国内外を通じて野外教育や環境保護の活動に関わってきた。「足立グリーンプロジェクト」というコミュニティガーデンを運営するNPOにも6年半参加していた。"コミュニティガーデン"というのは、地域共有の土地を確保し、そこでの庭造りや維持管理を通じて、地域と人の結びつきを築いていこうとするもの。
「どのようにアプローチしたらコミュニティが機能していくか、その方法論や手応えはすでに得ていました」と平田さん。建築家・山田貴宏さん(ビオフォルム環境デザイン室代表)、大森工務店の大森光徳社長など建築・設計のプロも巻き込んで、花園荘の建て替え計画は進み、2007年11月、畑付きのエコアパートに生まれ変わった。

 木造2階建てのメゾネットタイプで、2LDKに土間と納戸があり、庭は約5坪。家賃は管理費込みで12万3000円だ。現在、4組の住人が畑とともに生活している。
 たまたま居合わせた住民の1人、國富さんにお話をうかがった。

「ここに来る前は江東区に住んでいました。便利なのはいいけど、子どもが産まれてからは自然に親しめる環境を求めるようになって。そのとき、平田さんの運営するコミュニティガーデンの記事を目にして、エコアパートの構想も知ったんです。私も妻もそれまでとくに園芸や農作業の経験はありませんでしたが、ここならそうしたことも教えてもらえそうだし、と応募しました」

 アパートの建物自体は東京の地場材を使い、雨水利用タンクや太陽熱による暖房システムを備えたエコ仕様になっているが、そこに暮らす人は決してガチガチの思想を持ったエコロジストというわけではなさそうだ。
「子どもに土を触らせたい若夫婦、平日は仕事で忙しいけれど休日はのんびりしたい会社員といった"普段着でエコライフを楽しみたい"という人をイメージしていたので、そういう意味では理想に近いと思います」と平田さんは説明する。

 5月の連休直前の畑は、あおあおと見事に繁っている。植えられている作物は各戸ごとに異なり、あふれんばかりに多品種が息づいている畑、野菜だけでなく観賞用の草花が点在する畑、ガーデンアーチが飾られている畑、とそれぞれの住人の個性が表現されている。


1階はDKと洗面室・浴室・トイレ、土間。2階は2つの個室と納戸、押し入れ、バルコニー。一戸あたり約15.7坪(52平米)の広さがある。床や天井の杉、階段の檜、梁・柱はすべて多摩産の無垢材で、内装には自然系塗料や漆喰などが使われている。


花園荘の全景。畑以外にも建物の周囲には果樹やブドウ棚、ハーブガーデンなどが配されている。建物には太陽熱利用システムを導入。冬は屋根で温められた空気を床下に送って蓄熱し、夏は夜間の放射冷却で基礎の温度を下げる。自然のエネルギーによって心地よい環境を実現している。


住人は畑の横を通って玄関へ。緑と土が常に身近に存在する環境だ。住人は農業についての専門知識はないが、実践を通じて得た知識を交換しあい、時には近隣の農家の人にアドバイスをあおいで、畑と付き合っている。

 そこへ、2人の奥さんが連れだって戻ってきた。アブラムシ退治のため、畑に放すテントウムシを集めてきたのだという。
「いやあホウレンソウは難しい」「マメは強いよ。ほら、こんなになった」「今度はコレを植えようと思って」・・・。井戸端会議ならぬ、ガーデン談義が始まる。

 月に1度、4世帯が集まってのミーティングがあるが、強制ではない。
「ルールを作るとかえって揉めるもとになります。きちんとコミュニケーションがとれること、お互いに合意を形成していくことが大事」と平田さん。住人の自主性を促すのが、コミュニティ運営のコツのひとつであるようだ。

 地球規模の視野で環境を考えることも重要だが、こうして自らの手で土をいじり、人との関わりを築いていくのも、生活を本当の意味で豊かにするひとつの方法なのかもしれない。
 各戸とも夫婦だけならともかく、子どもが産まれ成長していくには少々手狭だ。いずれ現在の4世帯も新しい住民と入れ替わっていくことだろう。畑を通じて人とつながる喜びを知った人々は徐々に増えていくはず。その出発点となる可能性がこのアパートにはある。

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