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地域と人とつながる住まい 古い団地コミュニティに学生が新風を吹き込む

 プロジェクトの舞台となっているのは、千葉市西部の西小中台団地。5階建ての集合住宅が建ち並び、990戸もの規模がある。

 分譲開始は昭和47年。当時は都心へ通勤するサラリーマンの家族向けだったが、間取りは平均50m2の3DKが中心で、現在の住宅環境からすると、部屋数や収納量が少なく手狭な印象を受ける。始めからの住民が年を重ねていくのに対し、建物にはエレベーターもない。
低下していく住戸価格を目当てにし、新規に加わる若い夫婦もいるが、古い団地に一生住む気もなく、既存のコミュニティに積極的に関わる意識は低い。地域はじりじりと求心力を失っていくところだった。

 そんな状況に一石を投じたのが、千葉大学教授・小林秀樹さんを中心とする「団地シェア居住プロジェクト」だった。団地内の空き家を所有者から借り上げて同大学の学生を間借りさせる、というもので、3DKの間取りを3人でルームシェアする。学生側には、保証人なしで月2万円ほどの家賃で暮らせるというメリットがあり、現在は男性3人、女性3人が1戸ずつ居住している。

 小林さんがポイントに挙げるのは「家守さん」の存在だ。団地の住民2人に協力を依頼し、学生と地域住民とを取り持つ役割を担ってもらう。「もともとの住民にしてみれば、見知らぬ若者がいきなりやってくればやはり不安のもとになります。また学生のほうも、既存のコミュニティには参加しにくいはず。家守さんとのコミュニケーションを通じて地域の環境に慣れてもらい、集会などの場にも引っ張り出してもらうのが狙いです」と説明する。

 ゴミ出しの不備や騒音など学生が持ち込みそうなトラブルも想定していたというが、「帰省した学生がベランダに出しっぱなしにしていた枕の中身が、芝生に散乱したことくらい。連絡を受けた家守さんが駆けつけて、学生たちと一緒に後片づけしてくれました」(小林さん)。

 プロジェクトの運営に携わる小林研究室の大学院生、戸村達彦さんは「周囲の住民のみなさんもおおむね温かく見守ってくれていますね。若い人間が地域の一員として生活している様子にふれるだけでも、安心感を得られるようです」と手応えを感じている。

 学生たちは、団地の夏祭りでは御輿を担いだり、模擬店の手伝いをしたりと大活躍。昨年は自治会の役員となった学生もいたという。「当番制の役員の順番が、たまたまシェアしていた住戸に回ってきたんですね。自治会の運営でも活躍している家守さんが"フォローするから"と声をかけてくださったので、学生も意欲が湧いたようです」と戸村さん。住民との間には少しずつ同じ地域に生きる者同士としての関係性が築かれていこうとしている。


月に1度、大学に集まって家守さん、学生とともにプロジェクトのメンバーが話し合う。新たな試みであるだけに、毎回さまざまな状況報告や問題提起などがなされている。


部屋に遊びに来た「家守さん」。団地の住民の代表として地域社会と学生をつなぐ役割を果たす。学生にとっては頼れる相談役だ。


夏祭りでは、住民の中に混じって御輿をかつぐ学生も見られた。ともに同じ時間を過ごすことで学生の地元意識も高まり、地域での結びつきが深まっていく。

 このプロジェクトの基盤となっているのが、有限責任事業組合(LLP)という組織形態だ。法律によって定められたシステムで、人員の構成や損益分配を自由に設定できるところから、団地の住民のほか、まちづくりに携わるNPOのメンバー、プロジェクトの研究をする大学教員など多方面からの参加が可能になる。

 「このシステムが十分に機能することは、これまでの私たちの活動で確信できました。今後は、こうした取り組みがどんどん広がっていけば、団地を基点とした新しい地縁が生まれるはず」と小林さんは期待を寄せる。

 人がともに過ごせば何かが生まれる。それは決して愉快なことばかりではないかもしれない。しかし、それを乗り越えようとお互いが意識し、働きかけることで、結びつきは一段高いレベルに上がり、大きなエネルギーのもととなる。大勢の人がひとつのエリアに固まって住む「団地」という住まいには、そんな可能性が秘められているのかもしれない。

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