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大規模マンションの管理修繕

2014年08月18日更新

大規模マンションの管理運営について思うこと

【第4回 「パークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワー」管理組合】
道なき道を探して~超高層メガマンション管理組合の試行錯誤 4 「こうなればいいのに」
番外編として、大規模マンションの管理運営について思うこと(対業界、対行政、法整備など)を書き綴ってみたいと思います。

<サービス産業としての視点をお忘れなく~管理業界~>
大規模マンションの多くは、売主やデベロッパー(開発者)が大手不動産会社であることから、委託先の管理会社もその系列子会社となるのが通例です。管理会社からすれば、最初から契約と売上が決まっているわけですから、極論すれば何の営業努力をしなくとも、自動的に一定の利潤が確定されているようなものです。 したがって、ともすれば顧客目線を見失って、自己都合中心に陥ることも否定できません。しかも大規模マンションの管理業務は複雑で多岐多用に渡ります。今ある管理会社が気に食わないからといって、服を取り替えるように簡単に取り換え(リプレース)することは困難です。対する組合の理事会の多くは素人のボランティアです。
しかし、最近はマンション管理組合側もヨコ連携を作って、どんどん情報交換をしています。ネットの時代ですから良い情報も悪い情報も瞬時に拡散します。先に紹介した「RJC48」がその例です。
顧客不在の管理会社が淘汰されてゆく時代もそう遠いことではないと確信します。

<行きすぎた販売戦略は売主の責任?~デベロッパー~>
「パークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワー」もそうでしたが、管理費に比べて修繕積立金の初期設定が異常に低いマンションがたくさんあります。
修繕積立金はマンション価値を維持する重要要素、同じ負担金ならまずこちらの資金計画が優先されてしかるべきなのにそうなってはいません。
その理由としては、管理費は売主系列の管理会社の管理委託費の原資だから十分徴収したい、対して修繕金は住民のものなので売り手には関係ない、月額徴収額を高く設定するとマンションが売りにくいという、売り手側の事情によるものといわれています。
多くのマンション管理組合が、引き渡し後数年経つと、修繕金の改定で多大な時間と労力を費やします。修繕金については「段階増額積立方式」よりも「均等積立方式」が望ましいとするガイドラインが2011年に国土交通省からも出ています。 「マンションは管理を買え」というならば、売主も、当初低くみせかけて段階的に引き上げてゆく修繕負担金の初期設定をやめにしませんか?

<大規模マンションには合わない区分所有法と標準規約~制度論~>
マンション管理制度の基本は区分所有法と標準マンション管理規約にあります。が、数百にものぼる区分所有者が併存する大規模マンションの課題をうまく処理できなくなっています。大規模マンションの特例制度の導入が望まれます。
第一に、特別決議(区分所有法17条第1項など)を住民総数及び総議決数を分母にその75%としていることです。大規模マンションでは住民異動も激しく、確実に総会に出席又は議決権行使できるとは限りません。賛成住民が74%いても、残りの26%が棄権または去就不明で投票しなければ、決議は通りません。
重要事項について、過半数ではなく賛成議決率を高めることは必要ですが、議決率の計算上の分母を総員とするのは、大規模マンションでは現実的ではありません。国政選挙や株主総会でも、投票総数や出席総数を分母とし、棄権や欠席は分母としてカウントしていないこととバランスを欠いています。
第二に、防災活動の位置づけです。防災には、建物や設備管理に直結する本来のマンション管理の要素と救助・救護、安否確認など住民行動への規制という側面があります。後者については、必ずしも区分法が予定している管理組合の権能には属さないため、強制力を持たない道義的義務という以上のものではありません。しかし、災害時の緊急事態で、一人のわがままや勝手な振る舞いが住民全員を危機に陥れる危険もあります。マンションという特殊な環境では、防災上必要な行動に一定の法的な強制力(共同利益に反する行為に類似したものとの位置づけ)を持たせることも必要ではないでしょうか?

<業界規制から消費者保護へ~マンション管理行政~>
最後に行政へのお願いです。マンション管理に関する行政規制や指導のほとんどが管理会社、管理士、開発業者といった供給サイド規制型です。他方で、需要者かつ消費者である管理組合とのコミュニケーションチャネルが行政側にはほとんど準備されていません。マンション管理組合のほとんどが素人のボランティア住民の自主活動という実情に鑑みると、今の行政体制では、業者利害が一方的に優先されるリスクが大きいでしょう。例えば、標準委託管理契約には管理業者の負担を過重にしない「配慮」が随所に見え隠れしますが、住民の利害を守るための工夫はほとんどありません。
集合住宅への居住比率の増加が見込まれる日本においては、マンション行政も供給者規制一辺倒から脱却して、需要者保護の要素をいれるべき段階にきているものと思われます。
区分所有法の限界と考えあわせると、民法特別法の区分所有法とは別に、マンション管理に必要なハイブリッドな法制度、すなわち組織規制、民事規制、行政規制の各要素を合わせた新法が必要と考えます。


【パークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワー管理組合~道なき道を探し求めて~】
第1回 超高層メガマンション管理組合の試行錯誤「単価250円で50年の安心を」
第2回 超高層メガマンション管理組合の試行錯誤2「足りないものは自分で作る」
第3回 超高層メガマンション管理組合の試行錯誤3「試してみることの勇気~try & error」
第4回 超高層メガマンション管理組合の試行錯誤4「こうなればいいのに」

<神奈川県川崎市中原区>
パークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワー
パークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワー

武蔵小杉周辺で一番ノッポなビル。2009年4月の竣工で、6期目に入りました。単一棟に794戸の住宅、中原市民館、コンビニ、保育所が入居しています。左記のシンボルマークを住民公募にて定めました。「より豊かな暮らしの実現と発展を願い、空と未来に伸び行くマンションをイメージ」したものです。詳しい情報は以下の公式広報をご覧下さい。
ホームページ www.midskytower.com
ツイッター twitter.com/pcmmst
フェイスブック https://www.facebook.com/midskytower



 

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