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建築家リフォーム

2011年10月19日更新

扉・ドアのリフォーム 特注建具について

 新築の高級マンションの内覧会に付き添いの建築家として同行することが度々あります。引渡し前のチェックやインテリアアドバイスで伺うのですが、大理石張りの玄関や、ハイグレードのオーダー品を採用したキッチンなど、さすが高級物件と感心する空間やディテールはありますが、結構な頻度でガッカリしてしまうものとして、室内建具があります。折角、質感のある床フローリングを使っていても、シート張りの建具や枠で、重量感が全く感じられない、ペコペコの扉を見て悲しくなってしまうことが多々あるのです。玄関ホールやリビング・ダイニングに面した建具までは、ある程度のグレード感があっても、廊下を経てプライベートの個室やトイレへの扉となると、ひどい安物が多く見受けられます。

 建具は、部屋や空間を仕切る重要な建築要素で、取手を握っての開け閉めは勿論、扉の面を触ったりと直接手で触ることが多い要素なので、僕らがリフォームをお手伝いする場合は、とても気を使って設計する部分です。既製品であれば、枠付きで2~3万円のものが、特注で作って貰うと、安いものでも1本5万円くらい、材料や質感のコダワリによっては3~40万円してしまうこともありますが、その価値も十分あるものだと信じています。

 玄関ホールからリビングやダイニングへと続く扉は、玄関扉に次いで、家の第二の顔ともいえる扉です。十分な素材感と重量感を持ちながら、扉の向こうの気配を感じさせるガラスや窓をデザインに取り込み、閉じたときは勿論、開いた時も邪魔にならず、空間の結界としての仕切りを感じさせるような扉が理想的だと思っています。かといって建具に負けないように厚みを持たせた枠を設けると、閉じているときは良くても、開け放ったときに仰々しく見えるので、僕らの事務所では枠が不要なフロアヒンジを活用しています。表面材を他の建具と揃えた同じ木目仕上げでも、質感がより強く感じられるように、少し厚く仕上げ材をして貰い、一体に見えるガラスと特注の取手を付けるデザインとしています。その他の扉は、部屋の重要性に応じて、少しずつ仕上げのグレード感を変えてゆきます。来客用トイレなどは、音漏れの問題もあるので、扉の内部に断熱材を詰めて、音が響きにくい工夫も致します。キッチンとダイニングの扉は、お盆を持ちながらの開け閉めや、不意の来客時にキッチンを隠せるように、両開きの扉か引き戸を採用することが多くなります。

 各寝室の出入り口や、廊下や洗面などの扉を、引き込み扉にするケースも多くあります。引き戸に戸袋を設けた引き込み戸は開けっ放しの時は壁に隠れ邪魔にならず、閉じたい時だけ存在感を発する便利な存在です。ただ、幅木と戸袋の取り合いや、引き込み用に適した金物が少ないので、僕らの事務所では、引き込みの場合は特注のシンプルな引手を作って貰っています。リフォームの場合は、床がフラットになっていないこともあるので、天井から建具をレールで吊るようにすれば、指一本でスムーズに開閉が可能で、床のガタツキへの対応が容易です。

 より重要度が低い家族用のトイレや納戸への扉は、一番シンプルな白い扉にしてしまうケースが多くなります。閉じたときに、壁と一体となっているイメージにしたいので、その場合は廊下や部屋の室内仕上げと同じ仕上げの建具とします。塗装仕上げの場合は塗り込みの建具、壁紙仕上げの場合は、壁紙巻き込みにするといった具合です。造作家具と隣り合った扉の場合、デザインを造作家具の扉とデザインを合せ、一体に見せることで存在感を消してしまうこともあります。

 オーダーものの建具は、価格もそれなりにしますし、普通のリフォーム屋さんでは対応してくれないことが多く、造作家具と並んで敷居の高い要素のひとつなようです。ただ、費用の分だけ空間のグレード感に直結する分野なので、大規模リフォームの場合には、重要な扉は是非オーダーしてみることをお勧め致します。



洗面と廊下の間の引き込み扉。開けた時(左)は戸袋に収まるので存在感が消えてしてしまう。


引き込み戸の特注取手金物の詳細。戸袋から
引きだしやすいように、端部を細くした取手

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向かって左が玄関ホールへの扉(左)、フロアヒンジで枠なし、ガラスと取手を特注でデザインしている。右はキッチンへの引き戸、ディテールを最小限にして閉じた時の存在感を薄くしている。


上の扉は玄関側から見た様子。左が家の第二の顔ともいえるリビングへの扉、中央の来客用トイレへの扉は白く塗装し、存在感を消している。右は姿見を兼ねたクローゼットの扉。


廊下の先のリビングへの扉と寝室への引き戸。二つの扉の間の
壁にフローリング材を張って二つの扉を一体に見せた事例




建築家
各務 謙司 (カガミ ケンジ)
建築家 各務 謙司

1966年東京都港区生まれ。早稲田大学大学院終了後、ハーバード大学大学院に入学。留学修了後、94年にニューヨークのCicognani Kalla設計事務所勤務。マンハッタンの高級マンションのリノベーション、郊外の別荘等を担当する。帰国後、生まれ育った白金台に設計事務所を開設。古くなった建物にリフォームで手を加え、住まい方にあわせカスタマイズし、生き返らせることを活動の一つの柱としている。
カガミ・デザインリフォームhttp://www.kagami-reform.com/

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