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建築家リフォーム

2011年06月22日更新

バルコニーリフォーム

 マンションリフォームというと、どうしても専有部である室内を中心に考えてしまいがちですが、バルコニーを上手くリフォームすることで室内空間を思った以上に豊かにすることが可能です。殺風景なバルコニーにウッドデッキを張って、植栽をうまくレイアウトすると、室内とバルコニーが視覚的につながることで、空間が1.5倍ほどに広がって感じる効果があります。

 一般的に、マンション竣工時のバルコニーは、避難ハッチ(当該階から下階のバルコニーへ避難する部分)まわりの問題や、将来的な防水工事のやり直しを考えて、モルタルやタイル張り仕上げの無機的な仕上げになっていることがほとんどです。また、マンションの構造や防水の関係上、室内床と窓サッシはほぼフラット(掃出しといいます)でも、窓サッシからバルコニーの床は一段下がってしまいます。段差があることで、床のホコリが室内に入りにくかったり、床に当たった雨水がガラスに跳ね返らない等、良いこともありますが、同時に室内とベランダが切り離され、物干し以外には使いにくい場所となってしまっています。DIYで自分でパネル式の材料を購入して、安価にウッドタイルを張る方法もありますが、段差の解消は難しいようです。

 それでは、実際にウッドデッキ張りのリフォームをする際の注意点を以下に挙げておきましょう。
①ウッドデッキをどのように使うかを想像しながら、室内から出口や水栓の位置などを確認しながら植栽のレイアウトやベンチ、机などの配置を考えたいものです。出口周りを開けることや、室内からの見映え、奥行き感などを考慮すると有効です。特に面積が広いルーフバルコニーでは室内のように考ましょう。
②材料の選択も重要です。イペやウリンなどのハードウッドは高価ですが腐りにくく、メンテナンスが楽な材料です。ウェスタンレッドシダーなどの柔らかいデッキ材は、加工が容易で、安価で軽い利点がありますが、防腐塗料なしではすぐに腐ってしまうデメリットもあります。第三の選択枝として、人工木というものもあります。樹脂にウッドチップなどを混ぜ込んで、軽くて耐久性がある、樹木に似た風合いの材料も販売されていますが、まだ開発途中の材料なので、見栄えが人工的であったり、価格もハードウッドを上回ってしまうようです。 ③ウッドデッキの高さをどこに合せるべきでしょうか。一般的には掃出しサッシの下端にすることが多いようですが、室内とのつながりを重視するのであれば、サッシの上端にしたいところです。
④バルコニーは専有使用権はあっても、専有部ではありません。長期修繕計画などで定めらたスケジュールで、将来的に防水をやり直す可能性があるので、、ウッドデッキも取外し式としておくことが重要です。材質によって重量も変わりますが、スノコ式として大人一人で取外しが可能な寸法にしておくことをお勧めします。その場合、しっかりと下地の木材に留めることができないので、ガタ付き防止のために防音ゴムを付けておきたいところです。
⑤実務的なところでは、避難ハッチとウッドデッキの端の離れの距離はきちんと確保しておく必要があります。ときに避難ハッチの上にもデッキ材と同じ材料で取外し可能なフタを取り付けているケースも見かけますが、これは問題です。いざ上階から避難で降りてきた人にハッチの位置が判るようにしておくことが重要です。
⑥バルコニーの排水にも注意しましょう。特にゴミが貯まりやすい排水溝の位置はデッキを敷かず、常に点検できるようにしておくことが重要です。
7.最後は法規的な問題になります。マンションのバルコニーの手すり高さは、床から1.1メートル以上と建築基準法で定められています。ウッドデッキを張ったことで、デッキ上面から手すりまでの高さがそれ以下になってしまっては違法リフォームとなってしまいます。その場合は、ウッドデッキを手すりのある端まで張らず、30センチ以上の隙間を開けることで、法的な問題をクリアできます。その隙間にプランターで植栽を植えれば、雰囲気も出るので一石二鳥になるかもしれません。

 物置と物干しにしか使われていなかったバルコニーが、気持ち良い朝にはコーヒーを飲み、日陰にイスを出して読書を楽しんだりと、生活の巾を大きく広げる空間に変わるかもしれません。


サッシは一段上がっているケースでは、デッキもサッシの下枠に合わせています。植栽のプランターを隠す小壁もデッキ材で作っています。


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ウッドデッキだけでなく、同じ材料でフェンスも作った事例です。二人掛けの軽食用テーブルや、ベンチが生活の巾を広げています。



室内床と同じ高さでウッドデッキがつながると、室内が外に伸びたように感じられます。外の景色に合わせて、植栽の高低も考えています。



テラスレストランのように見えるウッドデッキ。目隠しフェンスも既存の手すりに挟み込んだだけで、取外し可能としています。



建築家
各務 謙司 (カガミ ケンジ)
建築家 各務 謙司

1966年東京都港区生まれ。早稲田大学大学院終了後、ハーバード大学大学院に入学。留学修了後、94年にニューヨークのCicognani Kalla設計事務所勤務。マンハッタンの高級マンションのリノベーション、郊外の別荘等を担当する。帰国後、生まれ育った白金台に設計事務所を開設。古くなった建物にリフォームで手を加え、住まい方にあわせカスタマイズし、生き返らせることを活動の一つの柱としている。
カガミ・デザインリフォームhttp://www.kagami-reform.com/

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