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建築家リフォーム

2011年01月19日更新

高級マンションリノベーション 寝室・玄関・書斎編

 先回の記事で紹介した港区の高級マンション事例では、リビングダイニング以外の部屋も全面的にリノベーションを行いました。それぞれの部屋ごとの空間的な、そして機能的な工夫を紹介いたします。

 寝室については、まず空間のしつらえについて考えました。この「しつらえ」とは、建築的には「空間や部屋の演出方法」という意味で使われることが多いようです。ここでは、建築の演出方法だけでなく、
・朝ベッドで目覚めた時に、どのような”景色”が目に入るのか、
・休日に、ベッドでまどろんでいる時の”光の様相”、
・夜寝る前に、ベッドで本を読んでいる時の”周りの雰囲気”、
 このようなシチュエーションを考えて、「しつらえ」という言葉をヒントに空間を考えてみました。結果的には、建築工事だけでなく、どのようなベッドを入れて、どのようなリネン使い、枕やお布団にまで気を使い、カーテンやブラインドの素材や色は勿論、家具や照明、置かれる小物や、飾る絵画・調度品まで、お施主様とご相談しながら、考えて行くことになりました。とはいえ、計画がガチガチにされた余裕のない空間ではなく、季節や気分に応じて、簡単に雰囲気を変えられる、懐の深いインテリアを目指しました。また、機能的には夫婦二人が付かず離れずの適度な距離感を持って暮らすため、別室ながら引き戸の開閉でお互いの雰囲気が伝わるニ連の寝室へと改装しています。引き戸を閉じればお互いの寝起きの時間の少しのズレのストレスから解放され、寝る前に本を読んだり、朝刊をベッドで気兼ねなく読んだりできる快適さが確保でき、引き戸を開ければお互いの声が届き、気配が伝わる安心さ、その両方を兼ね備えた寝室構成としています。

  もう一つの大きなリノベーションは、新しく作られた書斎です。単調な長い廊下と細長く、使い勝手があまり良くない、奇妙なプロポーションの部屋は、間仕切り壁を撤去して書斎として使うことになりました。玄関というパブリックな空間とプライベート空間である寝室を繋ぐ、セミパブリックな空間としてこの書斎を位置付け、玄関側と寝室側両側に引き込み戸を作り、来客時や二人だけで使った時のことを考えて、仕切ることができるようにしています。幅広の廊下幅を利用して、本棚を壁に沿って作り、長く冗長だった廊下をギャラリー廊下へと変身させています。大きなL字の作り付けカウンターテーブルには、二人のワークスペースを作り、廊下からの視線を本棚で適度にコントロールしています。以前お住まいだったお宅でも、比較的大きな書斎があったのと、ご主人の仕事場にあった本も持ってきたいとのお話で、大容量の本棚が必要とされていました。結果として18本の本棚で、総長さ約70メートルの棚を持つ大容量の書斎となりました。

 玄関および玄関ホールは、色々な機能(靴の履き替え・服の着脱・荷物の仮置き・来客時の対応など)がぶつかる空間ですが、高級とされるマンションでも、意外と適当に作られていることが多い場所です。こちらのマンションでも、当初から見映えは良かったのですが、必要な収納量が足りず、上下足の履き替えも不便な造りでした。今回のリノベーションでは、ピカピカだった素材を木目調の造作家具に作り直しながら、以下の要素を作り変えました。
・靴収納に合わせて座って靴を履けるベンチを作り、買い物袋の仮置きもできるようにしています
・靴収納に合わせ、書斎・寝室へと続く建具扉を作り、閉じたときにはプライベート空間の存在を感じさせないようにしています
・内部床仕上げをフローリングに変え、靴の着脱ラインを明確にしています
・コート掛けの収納扉を鏡で作り姿見を兼ねたこと、また引き出し式の傘収納を作り、湿気が靴やコートに移らないように工夫したこと
 以前は小さな空間の中に、白いピアノ塗装、木目調の扉、アンティコスタッコの壁など色々な素材が整理されない状態で並んでいましたが、靴収納とベンチと扉を全て同じ素材で纏めたことで、空間の統一感も生まれたのではないでしょうか。


玄関ホール。向かって左手前のベンチには手すりが付き、 その奥の靴棚と書斎への扉は
同じ材料で作られている。右側には姿見を兼ねた コート掛けの扉が


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シングルベッドを二本並べた奥様用の寝室。 ヘッドレストと下がり天井は
木目の優しいメーブル材で作り、 下着や小物を仕舞う特注のチェストを設置し、
寝る前の本用の本棚や、 こじんまりとした読書コーナーも用意している




ギャラリー廊下と書斎。かつての廊下には両側に本棚を設け、 本だけでなくCDや写真、
思い出の小物を飾れるギャラリーとして活用。
右手の書斎には大型L字テーブルを造り付け、二人分の作業スペースを確保




単調な廊下と、狭い個室が、開放的なギャラリー廊下と
使いやすい書斎へと変身した



建築家
各務 謙司 (カガミ ケンジ)
建築家 各務 謙司

1966年東京都港区生まれ。早稲田大学大学院終了後、ハーバード大学大学院に入学。留学修了後、94年にニューヨークのCicognani Kalla設計事務所勤務。マンハッタンの高級マンションのリノベーション、郊外の別荘等を担当する。帰国後、生まれ育った白金台に設計事務所を開設。古くなった建物にリフォームで手を加え、住まい方にあわせカスタマイズし、生き返らせることを活動の一つの柱としている。
カガミ・デザインリフォームhttp://www.kagami-reform.com/

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