2014年11月26日更新
都心湾岸物件8年目のリアル
第1回:キャピタルマークタワー
本シリーズは並みいる大規模物件の理事長経験者が執筆されていますが、筆者は港区芝浦の「キャピタルマークタワー(Capital Mark Tower)」の一住民で、役員経験もないことをお断りしておきます。もちろん管理組合員ではあるので、管理の視点を意識しつつ、あくまで個人の見解として都心湾岸物件の魅力をお伝えできればと思います。
<住民層の特徴>
キャピタルマークタワーが販売されたのは「湾岸戦争」とも呼ばれた時期です。いまでこそ湾岸といえば勝どきや有明エリアが中心ですが、当時は港区内でも港南から芝浦に建設の中心が移行した時期でした。
第1期完売時のプレスリリースによれば、家族数は1人21%、2人43%、3人以上36%で、年齢層では30歳代・40歳代合計が65%でした。都心物件ではとかくDINKSが想起されますが、契約後にお子さんが生まれたケースまで考えると、実感も含め都心物件としてはファミリーが多いのが大きな特徴と言えるでしょう。
地域に視野を広げると、官民公一体で再開発された芝浦アイランドの存在はやはり大きいです。タワーマンション4棟のうち分譲2棟(グローヴタワー、ケープタワー)は販売時のライバルでもあります。芝浦4丁目の人口はこの10年間で3.3倍となり、15,000人に迫る勢いです。実際、最寄りの芝浦小学校は、学区の人口急増を受け2011年に新築移転されましたが、以前は学年2クラスだったところ現4~6年生は各3クラス、1・2年生は各6クラス、児童数約800人と急増しています。DEWKSと予備軍には気になる保育園の待機児童率は全国ワーストでしたが、港区の努力もあり大幅に改善しました。
<コミュニティの形成から成熟へ>
お子さんがいる家庭は必然的につながりが出ますが、それだけでは近隣住民の延長と変わりありません。マンション内コミュニティの形成には、管理組合を起点とするオフィシャルな仕組みに加え、アンオフィシャルな仕組みがうまくバランスすることが大事と感じています。
管理組合の取り組みとして、入居直後の施設見学会などの仕掛けを経て、現在は半年に1回輪番で防災、および「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成」を目的とし、各階からフロアー委員を選出しています。「地域コミュニティにも配慮~」は平成16年改正の国交省マンション標準管理規約に盛り込まれた一般的な文言ですが、確かに交流にもつながり、一定の効果はあると思います。管理組合や自治会の活動として、さらなる交流のため夏祭りなど参加型のイベントを多く企画するアプローチもありますが、キャピタルマークタワーの場合はエントランスホールに七夕飾りやクリスマスツリーを設置したり、バーラウンジでクリスマスコンサートやボージョレヌーヴォーイベントを開催したりと、場を提供するスタンスです。
キャピタルマークタワーにおけるアンオフィシャルなコミュニティの例として「キャピタルマークタワーオフ会」を紹介します。大規模物件は入居まで年単位で時間があくので、入居予定者が掲示板やブログで情報交換・情報発信するのは一般的と思いますが、入居後これを母体にオフ会と称し開催されるようになりました。最初は掲示板の延長的にマンションに関するマニアックな話題で盛り上がっていたようですが、途中からはファミリーの比率も増えています。開催はすでに19回を数え、夏場の定番BBQ(過去4回)を筆頭に、貸切で屋形船2回、バス3回(1回は泊まりでBBQつきキャンプ)などの企画により、DINKSカップルとファミリー層など普段の生活からは得がたい交流の機会になっています。さらにスピンオフ企画として、奥様会、ワイン会、皇居ランなど広がりを見せています。ランを例にとると、11月3日に私を含む4人が湘南国際マラソン(フル)を自分のペースで全員完走しました。オフ会がなければ一生マラソンを走ろうとは思わなかったでしょう。
同じマンションに住んでいるという共通点のみでお互い利害関係がなく、生活、そして人生を「楽しむ」ことに集中できるのがポイントでしょうか。大規模物件の入居者専用掲示板では住民層が多様だけに「荒れ」が散見されるようで傍から残念に感じることがありますが、対面のコミュニケーションにおいては多様性がよい方向に働くのかもしれません。
<街並みの変化>
20年ほど前(ジュリアナ東京が閉店した頃)に、仕事で田町駅の東口(芝浦口)にくる機会が定期的にありました。自分がのちに住むことになるとは夢にも思わない当時の印象は、「港区の山手線の駅にまだこんな場所があるんだ」でした。その田町駅東口前は、12月22日オープンの港区最大規模の複合施設「みなとパーク芝浦」オープンを皮切りに順次大規模な再開発中です。
キャピタルマークタワーは沖電気工業の本社・工場跡地の11,276㎡の敷地を歩道まで含め再開発したため、電線地中化、公開空地と歩道のシームレス化などで一帯はすっきりしています。近くを通る旧海岸通り沿いはオフィスビルとマンションが混在するエリアですが、こちらも電線地中化工事が始まりました。さらに周囲は運河に囲まれ水辺を感じることができますが、災害時のリスクとなる橋の耐震性強化などを目的とし、夕凪橋、高浜橋の拡幅・架け替えが順次進行中です。
以前からの芝浦住民の方にとっては、夕凪橋の向こうの芝浦アイランドの変化が最大でしょう。私も幼保一体施設(こども園)に毎日通うだけでなく、外周1.3kmの信号のない遊歩道もジョギングコースとして活用させていただいています。
高浜橋のほとりには映画「タンポポ」のロケ地などレトロな昭和の風情を残すエリアがありましたが、拡幅のため更地化が進んでいます。道をはさんだ前述の芝浦小学校は、以前の田町駅前から東口再開発もあり越してきて、さらにその向かいには30階建ての東京ベイシティタワーが竣工し今月入居開始するなど、近隣の街並みは常に変化しています。
まだ街並みの変化への具体的な影響はないものの、ニュースをにぎわす山手線新駅が、ベランダの目の前で工事中です。 (写真の右下が新駅予定地、左端は品川駅)。
次回はハード面の特徴と、管理組合による改善の取り組みをご紹介します。
【キャピタルマークタワー】
第1回 都心湾岸物件8年目のリアル
第2回 三角タワーのポテンシャル
第3回 都心タワーに暮らして思うこと
- <港区三田>
キャピタルマークタワー 2007年11月竣工。田町駅徒歩8分、三田駅徒歩9分で山手線新駅予定地にも程近い47階建て。当時としては特徴的な免震構造+オール電化で、周囲への圧迫感を避けつつ公開空地を確保した三角形の外観。付帯施設はバーラウンジ、ゲストルーム、住民専用セブンイレブン、ジム、認証保育所など。