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環境に優しい住まいのつくりかた
取材・文 中島早苗/田中やすみ

200年もたせる高耐久マンションに集まって住む

 エコロジカルな暮らしをするには、自然の豊かな田舎で半農生活をしながら、国産無垢材の木造住宅を建てて住むのが一番理想的。しかし現実的には仕事もあるし、誰でもがそうできるとは限りません。では都市に近い場所で、仕事も変えずに、できるだけエコロジカルな家で生活するにはどうしたらよいのか。一つの選択肢として、エコヴィレッジという集合住宅に住む方法をご紹介しましょう。

 建築家の中林由行さんが65歳を前に住み替えを決めたのは、エコヴィレッジ鶴川。それまで一戸建ての持ち家に住んでいましたが、組合をつくって土地を共同購入、各所有者の希望を取り入れながら設計、工事を発注するコーポラティヴハウスに住むことにしたのです。

 コーポラティヴハウスにもさまざまなかたちがありますが、エコヴィレッジ鶴川の特徴を一言で表現すると「エコロジーに暮らせる高耐久マンション」。構造体の外側に見えるよう配管し、鉄筋コンクリート部分に各戸のインテリアの箱を挿入するスケルトンインフィルという方法でつくられているため、各戸のリフォームが簡単。法律の1.5倍の鉄筋を配し、外断熱を施したコンクリート壁は劣化を防ぐよう、焼杉の無垢板が張られ、構造躯体は200年もたせることを目指しています。

 屋上には25区画分の菜園やソーラー温水器を備え、中庭には雨水タンクや広場、子どもの砂場なども設えています。約90人の住人のうち1割が化学物質または電磁波過敏症なのですが、そういう方々も入居できるよう、大前提として化学物質や電磁波を極力排した素材、仕様でつくられています。

 中林さんは「室内の温度や湿度が一年中安定しているので暮らしやすい。高断熱や高耐久というハード面でも優れていますが、エコな集合住宅というソフト面でもここは充実しています。菜園も一人じゃできなかったでしょうけど、隣の人がやるから自分もチャレンジする気になります。カーシェアリングもありますし、『環境と健康に気をつけよう』という意識の人たちが入居しているコミュニティですから、住んでいて気持ちがいいです」と話します。

 全体のコーディネートと建物設計を手掛けたのはアンビエックスの建築家、相根昭典さんで、ここ鶴川が4つめのエコヴィレッジ、現在は東京の文京区で5つめのプロジェクトが進行中です。集合住宅のよさを生かしながら、エコな暮らしをしたい。エコヴィレッジはそんなニーズを満たす一つの方法でしょう。

設計は建築家であるご自身で手掛けた中林邸のインテリア。5階のため視界が開けて気持ちいい。正面右手の壁にはペレットでも薪でも使えるバイオマス燃料のストーブ

屋上菜園での中村さん。各区画に思い思いのスタイルで野菜や花が植えられている。「自分の食べる6割の野菜がつくれていると安心」と言う相根さんは、エコヴィレッジの他に「天然住宅」という非営利中間法人ももち、各地域で持続可能な循環型の暮らしができる住まいの提案、コーディネート、設計もしている。


取材協力:アンビエックス  http://www.ambiex.jp/index.html

「得するエコロジー」で太陽光発電システムを推進


大容量太陽光発電システムの平均年間発電量は1邸あたり4200kWh(4.2kWh搭載にて算出)。
オール電化を併用すれば年間で約1580kgのCO2削減が可能に


取材協力:積水化学工業株式会社 http://www.sekisuiheim.com/

 「光熱費ゼロハイム」のフレーズがすっかり定着した感のあるセキスイハイム。同社では"60年以上安心して快適に住み続けることのできる住まいの提供"を企業理念としており、「快適」「安心」「環境」の3つのテーマで商品開発を進めています。中でも、いちはやく導入を図ったのが自然エネルギー利用の太陽光発電システム。2008年8月現在で累積搭載件数は約6万棟を超え、業界トップの実績です。数多くの事例を積み上げることで工夫や改善が効果的に施され、ハード・ソフト共に独自のサービスを次々に展開しています。

 同社では、住む人にとってわかりやすくエコロジーを実感してもらう工夫として「エコロジーはエコノミー」というメッセージを発信。太陽光発電システムの「創エネ」と高気密高断熱の躯体の「省エネ」で光熱費ゼロをめざすというスタイルは、冒頭の通り家計レベルから住まいと環境を考える大きなきっかけをつくりました。同社のWEBコンテンツ「おひさまハイムFAN(http://www.zero-club.net/)」では、省エネ生活のアイデアや太陽光発電の住み心地を閲覧できるほか、入居者は光熱費家計簿をつけたり、光熱費削減のためのコンサルティングを受けることができるなど、ソフトサービスも充実させています。

 環境問題が大きくクローズアップされ、一方で景気の先行きが不透明な昨今では、環境配慮と経済性を結びつけた住まいづくりは実生活に直結する一石二鳥のメリット。入居者の多くに「無駄な電気を使わないよう、家族同士で声を掛け合うようになった」との意識変化がみられるなど、家族が一緒に環境問題に取り組める形を作り上げています。

快適で美しい暮らしと環境配慮の実現

隣の庭やその先の風景と相互につながることで住環境をさらに向上させる「n×豊か(エヌバイユタカ)」の考えをまちづくりに採用


取材協力:積水ハウス株式会社 http://www.sekisuihouse.co.jp/

 積水ハウスがめざす環境にやさしい住まいのコンセプトは「普通の家であること」。一部の人が頑張ってエコロジカルな暮らしをするのではなく、多くの人が普通の生活をおくる中で自然に環境配慮ができてこそ、全体として効果が高くなるというスタンスで家づくりを行っています。ここでいう普通とは「快適で、美しく、豊かな暮らし」。そのために、生活全体の中から効果的にCO2削減を図るための複合的なメニューがバランスよく組み合わせられています。

 例えば、高断熱・気密仕様の家にLED照明や高効率エアコンなど高度な省エネ技術を施し、生活する上で排出するC02をできる限り削減した上で、残りのCO2を太陽光発電システムと燃料電池の発電での削減効果で差し引きゼロにする「CO2オフ住宅」。さまざまな省エネ技術を組み合わせることで、無理なく全体的な効果を得ることになります。また、屋根瓦と一体化したオリジナルの太陽電池モジュールを開発し、デザイン性を損なうことなく導入できるのも魅力です。

 そしてもうひとつが、同社が長年推進している「5本の樹」計画。これは、日本の里山をお手本に在来種を庭先に植え、生態系ネットワークを復活させようという活動。住む人は生活の中で四季の移り変わりを感じながら、街並みに美しい景観を提供できます。この活動をさらに拡大したものが、分譲住宅によるまちづくり。緑豊かな共有の広場や街路樹がシンボルとなった美しいまちは、環境にやさしいだけでなく住まいの資産価値を高める効果ももたらしています。

規格やパーツが変わらないから住み継げる

「豊かな自然との共生」を基本コンセプトに展開する分譲地、スウェーデンヒルズ。厳寒の北海道の冬でも家の中はどこでも暖か

取材協力:スウェーデンハウス株式会社 http://www.swedenhouse.co.jp/

 木は、若い木の方が年老いた木よりCO2を蓄積する効率が高いと言われています。環境を考えるのであれば樹齢の高い木を切り、新しい木を植えるほうがよく、さらに切った木に100年住めば、木が吸収したCO2を家として100年間固定化することにつながります。

 地球規模で森林資源の減少が問題になる中、伐採するより育っている木のほうが多いスウェーデンで、樹齢の高い地元の木を使った家を日本に輸入しているスウェーデンハウス。同社では25年前の誕生以来、日本で冷暖房エネルギーを最小限にする省エネ住宅が普及するずっと前から、外気の影響を受けにくい室内環境づくりを追求してきました。その象徴が、木製サッシ3層ガラス窓。断熱性能に優れたぶ厚い木製サッシに厚さ4ミリのガラスを3枚挟むことで、冬は半分、夏は7割の熱損失があるといわれる家の開口部を外気から守っています。

 また「長寿命住宅」を掲げる同社では、頑強な躯体といずれ劣化する設備類を切り離して住まいを設計。見た目こそ異なるものの、全てのモデルが基本的に同じ規格の窓・パネル・構造材・性能で作られています。例えば25年前に建てられた家のサッシを、今でもサイズはそのままで機能性だけ向上したものに交換できます。ひとつのモデルを長く使い、技術や性能だけを熟成させる考え方はヨーロッパ社会に多く見られるもの。質の高い家を建て、必要な部分だけリペアしながら長く大切に使い続けていくことは、家を消耗品から資産に変えていくひとつの方法かもしれません。

■取材ノートより
 環境への配慮と質の高い暮らしとの両立は、今では家づくりのスタンダード。今回ご紹介したように、多くの作り手や企業は各々の得意分野で独自の解決策を図っていますが、残念ながら住み手に届くのはほんの一部の情報に過ぎません。住み手が実践してみたくなる楽しい仕掛け、人にちょっと自慢したくなる物語…単なる設備や仕様選びといった"ノルマ的考え方"の段階を過ぎ、新たな価値を生み出す提案をもっと聞かせてほしい!そう思う人は多いのではないでしょうか。太陽光発電やエコキュート設置に関する自治体支援策の認知は浸透する一方で、認証した県産材を一定以上の使用すると助成金がでる長野県の例などはまだ知らない人も多く、住まいと環境に関する膨大な情報を一元化するインフラ整備の必要性も痛感しました。

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