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建築家リフォーム

2014年09月18日更新

ヴィンテージマンションのリフォームの愉しみ

最近の仕事は、築浅(まれに新築)マンションの内装デザインをグレードアップするリフォームと、築古のヴィンテージマンションをスケルトンからの全面リフォームの二つに大きく絞られてきています。前者の場合は、最近のホテルや新築マンションのモデルルームなどの内装を参考に、華やかなインテリアを目指すことが多いのですが、後者の場合は、デザインの考え方が全く異なってきます。ヴィンテージと呼ばれるマンションを購入なさる方は、その立地性の良さだけでなく、そのマンションがもともと持っている風格や歴史性、古くからの住人が作ってきた上質なコミュニティーといったものに魅力を感じていることが多いので、内装全てを真っ新にして新築風なインテリアにすることより、元からあるインテリア要素を読み込んで、新しいものと古いものとが違和感を生じさせることなく再構成してゆくという、より高度な設計スタンスが求められるのです。

更に築年数が20年以上のマンションとなると、床下の設備配管は経年変化で傷んでいることも多く、断熱が今の基準と比べると劣っていたり、隣戸や上下階での遮音性能に問題があったりと快適な暮らしを長い期間保持するためには手直しすべき部分も多くあります。また、麻布や広尾近辺の高級ヴィンテージ物件となると、設計時に外国人居住を前提とした間取り構成のものも多く、お風呂がバスタブだけで洗い場がなかったり、住込みのお手伝いさんの部屋があったりと、一般の日本人が暮らすには問題があることも多々あります。竣工時の青焼き図面の信用度が低かったり、当時の施工方法が今と違っていたりで、水回りの移設や設備の更新には深い経験と知識が求められるのです。

僕らがヴィンテージリフォームのお手伝いをする場合は、まず現地調査を綿密に行って、どの設備が老朽化しており、築浅マンションと比べて、どのような部分が劣っているかを調べることから始めます。床下や天井裏の隠れた設備配管は、これまで使えてきたのだからそのまま使うことも理論的には可能ですが、やはり大規模に解体するリフォーム工事の際に更新した方が、後日工事をするより無駄な派生工事が少なくなります。断熱や遮音性能についても、長い年月そこに住み続けるのであれば、手を入れるべき項目だと思っています。ただ、これらの工事は目に見えにくく、費用を掛けた効果が実感しにくい工事であることも確かです。なぜか、中古マンションの場合、物件購入金額の1割程度をリフォーム費用として考えているお客さまが多いのですが(おそらく不動産屋さんが、お客さまの手持ち予算のなるべく多くを不動産購入に充てて貰うために言い出したものではないかと思っています…)、ビンテージマンションではそれでは十分なリフォーム工事ができないケースがほとんどです。僕らのこれまでの実績では、水回りや空調、配管設備の更新と間取りの変更、それに内装もやり直す場合、最低でも購入額の3割程度は見ておく必要があると考えています。ただ、ユニークなドアノブがついた建具を再利用したり、古き良き時代を感じさせる洗面も手を加えず使ったりすることで、アンティーク感を楽しみながら費用を落としてゆくこともヴィンテージリノベーションならではの愉しみです。

広尾ガーデンヒルズやホーマットやドムスなどのビンテージシリーズでは、管理組合が作っているリフォーム規約も厳しく、工事の時間帯制限やフローリングへの変更禁止などの難しい条件も多くあります。まずは同じグレードのマンションでの工事実績があって、経験が豊富なリフォーム会社・設計事務所をパートナーに選ぶことが重要です。その上で、ヴィンテージマンションが歴史を重ねて価値を積み上げてきたプロセスと同じように、古さを楽しむ姿勢で、じっくり時間を掛けて計画してゆくことをお勧めいたします。



アルミサッシ周りは安っぽく見えるので、ヴィンテージマンションのウィークポイント。
窓周りに木製フレームを回して、高級感を演出


築古のマンションならではの老朽化した設備の更新工事で多大な出費が嵩むことも。
同じマンションでの経験があるリフォーム会社に相談したい


ホーマットシリーズのマンションリフォーム事例。
カーペット張りの床を床暖房付きの無垢チークフローリング張りに変更。
古い円卓やアンティーク家具を入れて内装にもヴィンテージ感を


ホーマットシリーズのダイニングキッチンリフォーム。内装材は刷新しているが、
リフォーム前に素材感を合わせている


シックな框扉やビンテージ感のあるポーセリン取手を採用した廊下空間のリフォーム






建築家
各務 謙司 (カガミ ケンジ)
建築家 各務 謙司

1966年東京都港区生まれ。早稲田大学大学院終了後、ハーバード大学大学院に入学。留学修了後、94年にニューヨークのCicognani Kalla設計事務所勤務。マンハッタンの高級マンションのリノベーション、郊外の別荘等を担当する。帰国後、生まれ育った白金台に設計事務所を開設。古くなった建物にリフォームで手を加え、住まい方にあわせカスタマイズし、生き返らせることを活動の一つの柱としている。
カガミ・デザインリフォームhttp://www.kagami-reform.com/

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