1. 家の時間トップ
  2. 住まいの情報
  3. 建築家リフォーム
  4. 本棚と飾り棚の効用

>バックナンバー

建築家リフォーム

2014年02月19日更新

本棚と飾り棚の効用

 時々、他の設計事務所やリフォーム会社が提案したリフォーム案と、僕らが提案した案とを施主の好意で比べさせて貰うことがあります。キッチンや水廻りの考え方や、家具レイアウトを考えた際のリビングダイニングのあり方など、似たような間取り提案の中でも色々な違いが現れますが、僕らが設計する案では、他の人たちの案より本棚が多く設定されている気が致します。以前、250平米(!)のマンションにお二人が暮らすという贅沢なリフォーム案を考えたことがありますが、その時には余ったスペースをどのように使うかが一番の課題となりました。その際は、玄関から伸びる廊下を幅広にしてギャラリー廊下と名付け、その正面にガラス張りで読書コーナーも併設したライブラリーをご提案致しました(因みに、それでもスペースが余ったので、他にもゲスト用寝室とヨガができるリラクゼーションスペースをご提案しました)。結局、この提案は処々の事情で実施されませんでしたが、ライブラリーの提案自体は、「こんな贅沢なスペースが作れるのであれば、大きな家を買った甲斐があった」ととても喜んで貰えました。

 ご夫婦ともに物書き(著作業?)のお二人のお宅のリフォームでは、とにかく沢山の本棚(棚板の長さで200メートル分の本棚)を用意して欲しいとの依頼で、結局220メートルほどの本棚をご用意いたしました。本の荷重に耐えて、しならないように棚板に鉄パイプを仕込んだ特注の本棚をご覧になったお施主さまは、「たとえ時間が何年掛かっても、自分が持っている本をここにきれいに分類して並べてみたい」と感謝してくれました。

 二つのケースとも特殊事例といえる程、本が好きで、大量の蔵書を持っていらっしゃるお客さまでしたが、小さなコーナーにプライベートな本棚コーナーを提案したことで、喜んで頂けたことは沢山あります。先日リフォームが完成したお宅では、リビングの一角に構造の柱を使って、その奥の巾の狭い通路空間を膨らませて、ちょうど一人の大人がすっぽりと入り込めるジャストサイズな読書用ニッチを作りました。このお宅では、玄関からリビングへの廊下の一面に大きな飾り棚ともなる本棚を作りましたが、リビング奥の読書コーナーは奥さまのプライベートな読書空間、廊下はお二人共通のパブリックな飾り棚コーナーと使分けされていました。

 近頃は、将来はインターネットでの「電子書籍」が主流となって、本屋は廃れ本棚も不要になるだろうとの意見を多く見かけますが、それではこれまで貯めてきた本を捨てるほどの合理性は簡単には持ちえないと思っています。また、たとえ書籍の冊数は少なくても、写真立てや旅行で買ってきた小さなお土産、なにかの思い出が詰まったそんな小物達も、自分の歴史を振り返る重要なものとして飾っておきたいのではないでしょうか。欧米のようなアートや大きな調度品を飾る文化が乏しい代わりに、より小さく密度が濃いと思われる本や写真、お土産といった小物達を飾り慈しむ文化がある日本には、そんな小物達を並列的、かつ立体的に並べることができる本棚=飾り棚が重要な存在なのではないかと思っています。そんな本棚は決して大きさが必要なのではなく、その住人たちの住まい方に適したバランスでパブリックな部分やプライベートな部分に上手く配分されてレイアウトされていることが重要なのではないかと思っています。これまでも、そのサイズや設置した箇所によって「書斎」、「読書コーナー」、「図書廊下」、「読書用ニッチ」、「家族ライブラリー」などと名付けた空間を幾つも提案してきましたが、そんなお宅を訪問する際は、そんな空間がどのように演出されているかを拝見させて貰うことが一番の楽しみとなっています。



リビングのコーナーに設けた、小型の飾り棚。ピクチャーブックに並んで、一度仕舞ってしまうと人目に付きにくい大ぶりな花器を飾っている


棚板の長さにして200メートル以上を設けた、プライベート図書館ともいえそうな書庫


玄関からリングへと繋がる廊下に設けたパブリックな要素が強い本棚。収納に困る大型のピクチャーブックや思い出の小物が置かれている


上と同じマンション内で、リビングの壁裏に設けた奥さまのプライベート読書ニッチ


柱裏の無用な空間を読書ニッチに活用することで、
リビング側にも書棚=飾り棚を実現するアイデア



【おすすめリンク】
特注建具からローコスト住宅まで建築家のリフォーム事例はこちら
のぞいてみよう! 建築家のマンションリノベーション
建築家人気ランキング100をチェック!



建築家
各務 謙司 (カガミ ケンジ)
建築家 各務 謙司 (カガミ ケンジ)

1966年東京都港区生まれ。早稲田大学大学院終了後、ハーバード大学大学院に入学。留学修了後、94年にニューヨークのCicognani Kalla設計事務所勤務。マンハッタンの高級マンションのリノベーション、郊外の別荘等を担当する。帰国後、生まれ育った白金台に設計事務所を開設。古くなった建物にリフォームで手を加え、住まい方にあわせカスタマイズし、生き返らせることを活動の一つの柱としている。
カガミ・デザインリフォームhttp://www.kagami-reform.com/

  • インテリアコーディネートのヒント
    インテリアコーディネートのヒント

  • 本当に暮らしやすいマンション選び
    本当に暮らしやすいマンション選び

  • ハウスメーカー進化論
    ハウスメーカー進化論

  • 中島早苗の「心地いい場所」
    中島早苗の「心地いい場所」

  • 日常に寄り添うインテリアアート
    日常に寄り添うインテリアアート

  • 正しい家具の選び方
    正しい家具の選び方

  • 50代からの住まい
    50代からの住まい

  • マイホーム入門<不動産の基礎知識>
    マイホーム入門<不動産の基礎知識>

  • ウィンドウトリートメントを楽しむ
    ウィンドウトリートメントを楽しむ

  • 建築家リフォーム
    建築家リフォーム

  • 照明のセオリー
    照明のセオリー

  • 良質な賃貸住宅で快適に暮らす
    良質な賃貸住宅で快適に暮らす

  • 資産価値を考えた空室対策
    資産価値を考えた空室対策

  • 私、沖縄に移住しました。
    私、沖縄に移住しました。

  • 地域材の活用
    地域材の活用

  • 【プロが厳選】注目の分譲マンション
    【プロが厳選】注目の分譲マンション

  • 大規模マンションの管理修繕
    大規模マンションの管理修繕

  • マンション売却のコツ
    マンション売却のコツ

  • マンション植栽 造園
    マンション植栽 造園

  • 今、マンションは買いか、待ちか
    今、マンションは買いか、待ちか

ページトップへ