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建築家リフォーム

2013年11月20日更新

リフォーム設計と料理について

 「リフォームの設計」行為と「料理を作る」ところはどこか似ているように思っています(と言っても料理を作った経験はあっても、リフォームの設計の経験がある人は本当に少数でしょうが…)。

 家族の体調や好き嫌いを考えながら八百屋やお魚屋さんで旬の素材を選び、皮をむいて調理に適した形に切って、味のバランスを考えながら合わせる材料や調味料の組合せを考え、仕上げはきれいなお皿に飾り付けをして行く、調理の作業の流れはザッとこういった感じではないでしょうか。リフォーム設計でも、お施主様の好きなイメージを想像しながら、気に入って頂けそうな素材や色味を考え、それらをどのように配置しながら、インテリア全体を組合せてゆくか。最後の仕上げでは、思い出の品やアクセントとなるものを飾って、住空間が完成してゆくプロセスと見事に重なっているように思えます。もちろん、時間の感覚(料理では30分から1時間、じっくり煮込んで一晩寝かせても一昼夜なのに対し、リフォームでは最短でも2ヶ月から半年以上かかることもあります)や、費用(一人当たり2~300円、豪勢な食事でも自宅で調理するのであれば1万円を超えることは少ない料理に対し、リフォームでは3~500万円、僕らがお手伝いしている高級リフォームでは3~5千万円掛かるものも少なくなりません)などはあまりに違いますが、
和洋中の調味料を縦横無尽に使いながら、食材のバランスを考えた1回1回の食事を作る作業は、過去の思い出のある調度品と、新しいイタリアンモダンな家具、可愛らしい照明などを合せて、その人らしいインテリアを組み上げてゆくところととても似通ったものを感じています。

 設計する(料理する)側と実際に使う(食べる)側が想像力を介して通じ合うところも似ている気がします。まだ食べた事のない料理を、料理レシピやメニュー、素材の様子やキッチンの風景から選び、想像力を逞しくして待っている間の楽しさは、恐らくリフォーム業者に声掛けをして、自分達の希望を伝えた後、設計側からの提案を待っている間のドキドキ感と似ているのではないでしょうか。自分一人であれば、野菜中心のあさっりとした飽きの来ない、薄味の料理を頼みたいところでも、味の濃い料理が好きな旦那さんの事や、育ち盛りの子供たちの事を考えると、肉類や揚げ物も増やして注文するイメージは、一緒に暮らしている家族全員のバランスを考え、本当はシンプルに暮らしたくても、子どものおもちゃや勉強道具がダイニングに持ち込まれることを考えて収納を増やす計画にすることや、現在持っている家具・調度品のどれを残し、何を新調するかを考えながら、インテリアイメージを纏めてゆくプロセスと重なってきます。

 僕らがリフォームの設計をお客さま依頼されたときにも、まず子供も含めてご家族の方全員とお話しする機会を頂いて、誰がどのようなことを考えているのか、どんなイメージを家に求めているのかを聞かせて頂きます。ご主人が希望のスタイリッシュなリビングと、奥さまが望まれる機能的で使いやすいキッチン、お嬢様好みのピンクの子供部屋、それらをどのように繋げて、どこに費用を掛け、どこでコストカットをするのかを相談しながら決めてゆきます。それぞれの空間がバラバラにならないように、底に流れるご家族ならでは隠れテーマを見付けだし、全体を調整してゆきます。最終的に出来上がった空間は、お料理の味見のように事前チェックすることができませんので、暮らしたご本人たちだけにしかその成果が判りませんが、これまでの100件近くの事例では、ほぼすべてのお施主さまからご満足の評価を頂いております。

 因みに、僕らの事務所では、ほぼ毎日、設計の合間にスタッフ全員分のランチを作っています。冷蔵庫のあまり材料を使った料理から、特別に食材を用意して作る料理まで、色々な作り方にチャレンジしています。旨いもの好きで、料理が好きなのが第一の要因ですが、キッチン設計の色々な面を経験しておくことや、上記のような臨機応変なリフォーム設計のトレーニングもイメージしています(笑)。



リフォームのお引渡しのチェック時にもキッチン部分には一番時間を掛けて確認



事務所のランチとして作った過去の料理。左上から時計回りに海南鶏飯(シンガポール)、野菜のカレー2種(インド)、豚肉と白菜の煮込み(中国)、小松菜ジェノベーゼのオレキエッテ(イタリア)


キッチンのレイアウト設計はリフォームでも最重要ポイント。キッチンの専門家に任せず、LDとの繋がりや見せ方まで考えて配置する


ゴミ置き場や細かいカトラリーやお盆の収納まで、お施主さまと一緒に考える詳細設計





建築家
各務 謙司 (カガミ ケンジ)
建築家 各務 謙司

1966年東京都港区生まれ。早稲田大学大学院終了後、ハーバード大学大学院に入学。留学修了後、94年にニューヨークのCicognani Kalla設計事務所勤務。マンハッタンの高級マンションのリノベーション、郊外の別荘等を担当する。帰国後、生まれ育った白金台に設計事務所を開設。古くなった建物にリフォームで手を加え、住まい方にあわせカスタマイズし、生き返らせることを活動の一つの柱としている。
カガミ・デザインリフォームhttp://www.kagami-reform.com/

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