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建築家リフォーム

2012年03月21日更新

床仕上げより重要?天井リフォームのデザイン

 リフォームの設計でお客様のご要望を伺っていると、床を濃いフローリング材にしたいとか、白いタイルでシンプルに見せたいなど床面の仕上げについてはリクエストが多いのですが、床とちょうど反対の位置にある天井のデザインや仕上げについて具体的にどう見せたいかを聞かせてもらうことはほとんどありません。天井の高さはなるべく高くしたい、照明を天井面に埋め込んで出っ張りをなくしたい、壁掛けのエアコンは天井カセット式に変更したいなど、天井に関する間接的な話はあっても、天井の仕上げ材の具体的な質についてや、天井に高低を付けて空間にメリハリを与えたりすることは、まだまだ一般的ではないのかもしれません。

 天井の高さだけについては、寸法的な情報が独り歩きしている感もあります。最近の高級マンションでは、最大天井高さを数字として示すため、広告で「最大天井高さ2600!」などと謳っているものを良く見かけます。ところが実際には、部屋の中央を折り上げ天井にして、その部分だけは高さが確保はされているような部屋も多く見かけるようになりました。確かに、数字上はウソはありませんが、体感できる天井の高さはどうなのでしょうか?また、折り上げ天井に絡めて間接照明を仕込む事例も多く、パッと見は華やかですが、しかしいざ具体的な生活を考えて家具をレイアウトすると、部屋の中心が天井のデザインによって規定されてしまい、床に置きたい家具レイアウトとの間にズレが生じて、気持ち悪さを感じてしまうことも多々あります。

 このように、インテリア空間における天井の仕上げやデザインは、あまりその重要度が認識されてこなかったことが良く判ります。伝統的な日本建築では、天井の仕上げ材を変えることで空間の格を決めていた歴史があるのですから、それを上手く現代の空間にも生かしたいところです。

 多くの人がこだわる床面の仕上げでも、完成後に家具を配置して眺めると意外と大きな面として見えてこないことも多いのに対し、天井は暮らし始めてもほぼ工事完成時そのままの形で見えてきます。また、天井の高さに対する感覚も、実際の寸法的な高さよりも高低のメリハリによって感じることが多いようです。一律に全体を高い天井にして空間のボリュームを大きく取るより、低い天井高さのアプローチから、少し高い天井のリビングに入っていった方がより解放感が得られます。または和室で畳の床に座ると、天井の高さはそれほど気になりませんね。狭いお茶室などの場合、低い天井があることでかえって空間がコンパクトに感じられて落ち着くこともあるのです。以上を総合して考えると、床面よりも天井の方が、より自由にデザインできて、空間に対する影響力も大きいといえるのではないでしょうか。

 リフォームの場合はとにかく今ある空間のボリュームを広げることが出来ませんから(戸建住宅での増築を除いて)、天井仕上げ材の選択や、高さのメリハリ、照明のレイアウトや床に置く家具の高さといった要素をフルに使って空間の広がりをコントロールすることになります。写真で幾つかの事例をご紹介していますが、広い空間を天井のデザインによってエリア分けすることもできますし、低い天井でも照明やエアコンなどを全てを埋め込んでフラットに見せることで広く感じさせることもできます。

 天井は、それ自体が表にでて、デザイン性を主張するような主役ではないかもしれません。しかし床・壁の仕上げ材や開口のプロポーション、さらには照明計画といった要素と上手く組み合わせることで、空間全体を包み込みながら纏めあげる重要な脇役なのです。天井デザインを積極的に活用することで、リフォームのグレードアップが実現するのではないでしょうか?


ベッド直上の天井を一段下げ、木質で仕上げ間接照明を入れている。実際は梁があるためにこのような形になったが、天井の段差を積極的に活用した事例


天井にチークの羽目板(はめいた)を張ったことで、床と天井に挟まれた空間の水平性が強調されたインテリア。コンパクトな空間ながら伸びやかさを感じる空間となった


戸建別荘のリフォームでは、リビングの天井を高く、ダイニングキッチンは天井は低く抑え、北側の景観を切り取るトンネルのような空間にしている


約60平米の大きなリビングダイニングを天井のデザインで区分けした事例。リビングはフラット天井を一部折り上げて中心を示し、ダイニングは木製リブを並べ落ち着いた空間としている




建築家
各務 謙司 (カガミ ケンジ)
建築家 各務 謙司

1966年東京都港区生まれ。早稲田大学大学院終了後、ハーバード大学大学院に入学。留学修了後、94年にニューヨークのCicognani Kalla設計事務所勤務。マンハッタンの高級マンションのリノベーション、郊外の別荘等を担当する。帰国後、生まれ育った白金台に設計事務所を開設。古くなった建物にリフォームで手を加え、住まい方にあわせカスタマイズし、生き返らせることを活動の一つの柱としている。
カガミ・デザインリフォームhttp://www.kagami-reform.com/

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