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建築家リフォーム

2012年02月22日更新

生活のシーンを豊かにする照明リフォーム

 リビングやダイニング・キッチンをリフォームする時に、照明計画を同時に見直すと、インテリアの雰囲気がワンランクアップし、使い勝手も確実に良くすることができます。費用がそれほど掛からない割に効果が大きい工事ので、是非照明も一緒にリフォームすることをお勧めしています。

 一般的なマンションや戸建ての建売住宅では、どのような暮らし方をするかを想像することなく、まずは部屋全体を均一に明るくすることが照明の役割となっています。部屋の中心に大きなシーリングタイプの蛍光灯器具を一つ取り付けるのが、その典型的な例です。新しい器具であれば、明るさを調節することができますが、それでも照明で空間の雰囲気をコントロールすることは難しいのです。高級といわれるマンションでも、演出性だけを重視した折り上げ天井の間接照明を多用しているようですが、何も置かない状態では素敵に見えても、家具をレイアウトすると却ってこの間接照明が邪魔になるケースすらあります。

 夕方の薄暮の時間に周りが暗くなる時間帯を楽しむシーン、夜にソファーに家族が集まってテレビを見ているシーン、ダイニングテーブルだけに照明を絞ってフォーマルな食事を楽しむシーン、家族が皆寝静まった後に、スタンドライトだけでお酒を愉しみながら小説を読むシーンなど、色々な生活のシーンに合せて明るさ(暗さ)をコントロールしたいのであれば、1室多灯照明の考え方を参考にしたいところです。基本となる天井埋め込み型のダウンライトを中心に、特定の場所に明るさを集中させるスポットライトや壁を照らすブラケット照明、天井から吊り下げるペンダントタイプや間接照明、スタンドライトなどを組合せる照明計画が1室多灯型の計画です。

 一つのシーリング照明で済んでいたものが、複数個の照明へと増えるので、消費電力の多さが心配になりますが、常に部屋全体を明るくするスタイルに比べ、スイッチのオンオフと調光を使って必要な個所を必要なだけ明るくするので、無駄は少なく、そこに性能に優れるLED照明を取り入れれば、省エネ効果も生じます。

 照明計画をより具体的に部屋に落とし込むためには、まずは家具のレイアウトから考えることになります。ソファーとダイニングテーブルとテレビの位置だけでなく、部屋のコーナーの飾り棚や壁に絵を掛けるなどインテリア全体のイメージを膨らませてゆきます。次には、それぞれの空間(食事をする空間や座って寛ぐ空間など)や各コーナーで行われる暮らしのシーンをイメージしながら、その雰囲気に適したあかりを考え、実際の照明器具レイアウトに落とし込んでいくという、緻密なプロセスが必要になります。例えば、ソファーに座って読書するシーンであれば、ソファー上に眩しくないグレアレスタイプのダウンライトを付けるか、ソファー後ろにスタンドライトを用意するといった具合です。また、忘れがちですが、スイッチの位置も重要になります。スイッチ類は部屋の入り口近辺に設けるのが一般的ですが、例えばダイニングの照明はキッチン側にも設けておくと、料理をしているうちに外が暗くなったときなどに便利です。ベランダの明りや、壁の絵を照らすためのスイッチは、その場所近くに用意しておいた方が使い勝手も良くなります。LDKだけでなく、玄関やキッチン、廊下や寝室などについても、このプロセスを繰り返してゆくことで、使い勝手は確実にアップしてゆきます。具体的に照明リフォームを進めてゆくうえで、幾つかの注意点を下に列記しておきます。

・あまりに沢山のシーンを考えて計画してゆくと、スイッチだらけになってしまいます。そんな時は複数の照明を一括して調光できるライティングコントロールを導入することをお勧めしています。このシステムは部屋の明るさと暗さを記憶させてボタン一つで再現できる優れものの装置です。

・家族のあり方や家具のレイアウトについては将来的に変わってゆくことも十分考えられるので、あまり厳密に計画しすぎないことも重要です。

・これらの作業はリフォーム会社に任せるのではなく、照明に詳しい建築家やインテリアデザイナー、まだ珍しいですが照明デザイナーと一緒に考えたいものです。


玄関横の棚下照明とコーナー鏡で不思議な奥行きを演出しています。
リビングに向かっての床埋め込みのアップライトが雰囲気を高めています




ベースのダウンライトに天井埋込みのスポットライト、
壁際の絵を飾る照明やソファー後ろのスタンドライトを組合せています


眩しくないグレアレスタイプのダウンライトを使うことで、天井がスッキリ見えます



ダイニング横の凹んだ飾り棚の照明がアクセントになり、
右上のスポットライトがカウンター上に飾ったカードを照らしています







建築家
各務 謙司 (カガミ ケンジ)
建築家 各務 謙司

1966年東京都港区生まれ。早稲田大学大学院終了後、ハーバード大学大学院に入学。留学修了後、94年にニューヨークのCicognani Kalla設計事務所勤務。マンハッタンの高級マンションのリノベーション、郊外の別荘等を担当する。帰国後、生まれ育った白金台に設計事務所を開設。古くなった建物にリフォームで手を加え、住まい方にあわせカスタマイズし、生き返らせることを活動の一つの柱としている。
カガミ・デザインリフォームhttp://www.kagami-reform.com/

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