2010年11月17日更新
玄関と外構のリフォーム
人間関係でも外見と内面とが違った人とは、ちょっと付き合いにくいことがあるように、住宅でも外見(外観や外構周り)と内面(インテリア空間)のイメージにズレがあると、何か違和感を感じるようです。今回紹介するリフォーム例は、お友達を招待する事が非常に多く、賑やかな暮らしぶりのお宅なのに、道路から玄関へのアプローチがどうにも殺風景で、似つかわしくないという問題がありました。
内部は広く、家具がきれいにレイアウトされた楽しいお宅ですが、古びてしまった車庫のガレージドアとブロック塀がわびしく、どうにも味気なく危険でもあるので、うまくリフォームして欲しいとのご依頼でした。実際に現地に伺ってみると、家自体は敷地に素直に建っているのですが、老朽化したガレージドアが正面にあり、それを抜けて敷地に入っても、隣家の目を気にしながら玄関まで歩かなくてはいけない、またお宅に訪問する前に、リビングの南面窓から先に目が合ってしまうなどの問題が見つかりました。
それに対して、我々が提案したリフォーム案は以下の通りです。A.ガレージの扉と外玄関の入り口を分ける、B.かつては横向きだった家の玄関を外に飛び出させて、道路正面に向ける、C.2階に物干しバルコニーを作りその下をアプローチとする、の三つを合わせたリフォーム案を作り提案しました。
ちょうどリビングの窓の目隠しになる樹木を残し、雰囲気があり、通気性のある木製のフェンスを作り、そこに表札や郵便ポストとチャイムも埋め込み、一体となるようデザインしています。。ガレージには夏の日差しが車に当たるのを防ぐ雨除けを設けました。既製品の屋根は確かに廉価で便利ですが、どうにも雰囲気が合わないので、ガレージ扉と外玄関を分ける壁から屋根部分を張り出させ、壁の圧迫感をなくすために壁に空けた穴に照明を埋め込んでいます。実は外構と外玄関は、新築住宅でも非常に設計が難しい部分なのです。表札やポスト、チャイムといった要素を入口周りの雰囲気にどう合せるか、細心の注意を払って作り込んでいます。
二階に物干しハバルコニー機能を持たせた増築部分の下が玄関へのアプローチとなっています。玄関の取付け位置を道路正面に付け替え、そこに向かってアプローチが吸い込まれるような空間となりました。構造壁を隣家の窓の位置に合わせてデザインすることで、お隣の視線も気にならなくなりました。
設計途中、物干しに降った雨水をどう処理するか悩んでいたころ、お施主様からは雨水を何とか庭の水遣りに使いたいとのご要望がありました。そこで、雨水を流す樋下に受鉢を設置し、溜まった水を庭の水遣りに使う工夫に考えました。受鉢を置く定位置はアプローチの壁に、ちょうど嵌り込んだ形につくりました。ボウフラが沸くのを防ぐために、金魚を入れて、視覚的には遊びがあり、機能的にも無駄のないデザインができました。
リフォームが完成後は、以前にも増して来客が増えたそうで、使い勝手とデザインを兼ねたリフォームができたと喜んで頂くことができました。
玄関アプローチには屋根を付けて、上部は物干しとして活用しています。
隣家側には視線が合わないようにデザインした開口を設け、
プライバシーを確保しながら、圧迫感がないように工夫しました。
かつてはうら寂しいイメージの玄関周りが木を使ったリフォームで雰囲気のあるエントランスに変わりました。
照明を埋め込んだ壁で、車と人の出入り口を分けて安全性を高めています。
車庫部分の上部には日差しを避ける屋根を取り付けました。
【建築家のリフォーム バックナンバー】
住みながらの段階的リフォーム
二世帯住宅からのリフォーム
古民家再生リフォーム
二世帯住宅のリフォーム
軽井沢のロハスリフォーム 二拠点居住の可能性
「リフォーム」と「リノベーション」の違い
マンションのデザインリフォーム
別荘リフォームのススメ
建築家がお手伝いするリフォームのススメ
建築家としてのリフォーム
アメリカと日本のリフォーム事情
- 建築家
各務 謙司 (カガミ ケンジ) 1966年東京都港区生まれ。早稲田大学大学院終了後、ハーバード大学大学院に入学。留学修了後、94年にニューヨークのCicognani Kalla設計事務所勤務。マンハッタンの高級マンションのリノベーション、郊外の別荘等を担当する。帰国後、生まれ育った白金台に設計事務所を開設。古くなった建物にリフォームで手を加え、住まい方にあわせカスタマイズし、生き返らせることを活動の一つの柱としている。
カガミ・デザインリフォームhttp://www.kagami-reform.com/