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私、沖縄に移住しました。

2013年09月04日更新

沖縄移住でよかったこと、ありえないこと

 沖縄に移住して約半年が経った。今年は梅雨明けが例年より10日以上も早く、一番好きな夏の時期を思う存分、楽しんでいる。とはいえ、移住する前は、仕事が少し空いたすきを狙って来沖していたので、趣味のダイビングに没頭することができていたが、生活のベースが沖縄になれば、そうも言っていられない。フリーランスとはいえ、平日は取引先とのやりとりもあれば、出向いて仕事の打ち合わせも入ってくる。結局は土日が休日、というごくごく普通の生活パターンになるのだ。

 それでも、夕方になれば東シナ海に沈む夕日をぼんやり眺めたり、昼間は昼間で仕事の手を休めて、海辺まで散歩したりと、考えて見れば、旅行でわざわざ来なくても、毎日、大好きな海のそばで海を感じながら生活できるのは、本当に贅沢なことだと実感する。

 沖縄に移住してよかったことは、数え上げたらキリがない。

 休みの前日に天気予報を確認し、天気がよければダイビング。前日に予約すればOKだ。お昼前のちょっとした運動ぐらいの気軽さで、海中散歩ができるのだ。全国各地で40℃を記録するなど、今年の夏は例年にない猛暑だったが、沖縄の朝晩は海風が吹けば比較的涼しく、昼間の日差しはきついけれど木陰にいれば、す~っと涼しい風を感じることができる。農協が身近にあるので、地元農家の採れたて野菜が安く手に入る。ただ、量が大家族の沖縄仕様なので、独り身の私は、とうてい食べきれない。残った野菜をピクルスにするなど、ちょっとした工夫もするようになった。漁港も歩いてすぐの場所にある。東京の築地のようにはいかないけれど、その日獲れた新鮮な沖縄の魚を手に入れることもできるのだ。やはり独り身には大きな魚は食べきれないので、小ぶりの魚しか買わないのだけれど。

 車で5~10分も走らせれば、沖縄有数のリゾート地が姿を現す。海を横目に見ながらのドライブは、ちょっとした息抜きにちょうどいい。村のイベントに参加すれば、顔みしりから声をかけていただき、ビールをおごってもらったりもする。

 本当にキリがないのだ。やっぱり、沖縄での生活は、私のからだが喜んでいるのだと思う。あれだけ悩ましかった頭痛は、沖縄に来てから一度もない。

 ■沖縄の「ありえない」は、意地悪や悪気があるわけではない

 と、いいこと尽くめの沖縄生活だが、「ありえない!」と口に出ることは、たまにある。

 たとえば車。沖縄では車がなければ生活ができない。歩いて5分のコンビニでさえも、車で出かける。家族の人数分、車があるわけだから、当然、朝晩の通勤・通学時の渋滞は、沖縄じゅうのそこかしこで発生する。島の真ん中に米軍基地があるため、逃げ道が少ないのも影響しているだろう。それでも、毎日毎日の渋滞で、沖縄の経済損失は計り知れないものがある、と常々思うのだが。

 「ありえない!」と口にするのは、たいてい、車を運転しているときだ。

 そもそも沖縄は自動車保険(自賠責も任意も)の保険料が内地より安い。重大事故が少ないからというのが、その理由のようだが、任意保険の加入率が極端に低い。事故に遭ったとき、相手が未加入だったために、賠償金が得られなかったとは、よく耳にする。

 そんな状況にもかかわらず、運転に関しては、なんともおぼつかない。ウインカーを出さずに曲がる車はザラ。細い路地からの飛び出しにも出くわす。こちらは冷や冷やものだが、案外、「どうってことはない」という顔をされる。私の運転技術が未熟ということもあるが、逆に路地から大通りに合流しようとしても、なかなか止まって入れさせてもらえないことも多い。後続車も連なっているので、1台ごとに間に入れてくれたら、と思うのだが、なかなかそうは行かない。意地悪なわけではない。本当に気にしていないのだ。その証拠に、私の後続車がイライラしてクラクションを鳴らすことなどなく、みんなじっと待っている。そう、沖縄でクラクションを聞くことは、ほとんどない。みんなのんびりしているのだ。

 仕事の場面では、今はまだそれほど関わりがないので、決定的な「ありえない」には遭遇していない。移住する前に、沖縄へ取材に訪れたときには、洗礼を受けたのだが。それは、取材の約束をしているものの、本当に取材できるのか、現地に到着するまで不安だった。相手は「大丈夫さあ」のひと言で、いつ、何時にどこに行けばいいのか、なかなか教えてもらえなかった。現地に到着して、まずは挨拶に伺うと、そのまま居酒屋へ。仕事の話など一切せず、世間話に終始し、「本当に明日は大丈夫だろうか?」と不安がMAXに達したとき、「さあ、帰りましょうねえ、明日は○時に来てください。もう、あなたとは友だちですからね。安心して。全部手配はすんでいますからね」と。

 東京で仕事をしていると、分刻みとまでは言わないけれど、効率よく動けるように、事前にいろいろと算段をする。沖縄ではそれは無理。こちらの都合を押し付けても、こちらの論理を押し通そうとしても、うまくいかない。「いちゃりばちょーでー(会えば兄弟)」。義理人情だけではないし、コネとも少し違う。懐に飛び込んで受け入れてもらえると、「なにも、そこまでしてくれなくても」と思うぐらいの歓待を受けることもある。どちらが正しいのかは、わからない。

 以前、こんな話を聞いたことがある。
沖縄はご存じのとおり海に囲まれている。何かあったときに逃げ込む場所がないのだと。だから人を追い詰めるようなことはしないのだと。その先は海しかないのだから。沖縄の人に、なんでそんなことをするの? と聞けば「だっからさ~」と返ってくる。そのあとはないのだ。「だっからさ~」で終わり。聞いたほうも、それ以上は追及しない。

 いつもぷんぷん怒っているのは、その理由を知りたく、原因がわかれば、次にはミスしないようにしたいと思っている人だ。それは私なのかもしれない。きっと東京生活で染み付いた「効率」という呪文から解放されるまでには時間がかかるし、そこまで、のんびりしようとは思っていない。けれど、「ありえない!」と口にしながらも、「まあ、怒っても仕方ないか、二度手間かかってもいいか、ゆっくり行きましょう」と心を静めるのだ。



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「あれから2年。沖縄で過ごした春・夏・秋・冬」も書き下ろし。どうぞご覧ください。

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青の洞窟



フリーライター(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)
伊藤加奈子
フリーライター(2級ファイナンシャル・プランニング技能士) 伊藤加奈子

1963年生まれ。法政大学文学部日本文学科卒。リクルートにて不動産、住宅、マネー系の編集部を経て2003年に独立。以降、フリーランスでライフスタイル誌の創刊・編集に携わる。のち、マネー誌の編集アドバイザーを務め、現在は、主にWEBサイトで住宅、マネー関係の記事を執筆するかたわら、25年の編集者経験を生かし人材育成に努める。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。All About マネーガイド

2013年4月に住み慣れた東京を離れ、沖縄に移住。と同時に、RC住宅を建築することを決め、2013年3月着工。11月に竣工した。

 

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