2015年01月28日更新
有料老人ホームの選び方 その2
先月に続き、有料老人ホームについて。
今回は、18年続く第三者機関「有料老人ホーム・介護情報館」の館長、
中村寿美子さんからのアドバイスと、
実際のホームを一つ紹介したい。
介護情報館は、会員企業約60社600ホームの中から、
相談者の希望に合ったホームを紹介してくれる。
紹介するホームについては①書類審査 ②現場確認
③経営者面談、の3段階の審査を行い、
独自の基準を満たしたホームのみ会員登録。相談は無料。
中村さんによれば、「介護付き有料老人ホームなら
包括サービスの提供が法律で約束されており、
介護費用も定額制のため、一番安心」とのこと。
施設の選び方については「2泊以上の体験入居を
おすすめしています。建物の豪華さに目を
奪われてしまう方がいますが、本当に見て欲しいのは
職員の介護力や医療連携の部分。一見ではわからない部分を、体験入居で感じ取ってください」。
過去2万件以上の相談を受けた中村さんに、
良心的運営のホームを紹介してもらい、
その一つを訪ねてみた。
訪ねたのは、調布市の介護付き有料老人ホーム
「デンマークINN深大寺」。
平成14年設立、総室数78室、全個室で1室17.4㎡。
入居一時金500万円、月額利用料(維持管理費・
居室使用料・食費)約21万円。
その他に、月定額の介護度別介護保険料(1割負担分)と、
オムツ代など個人の雑費がかかる。
経営母体が病院というデンマークINNは他に
小田原、府中、調布の計4ホーム。
開設当時、一時金500万円という低額なホームが
少なかったためか、宣伝もしないのに開設前から予約が入り、
以後12年間満室が続いているという。
毎年、病院に移ったり亡くなったりして空室が年に
10室程度できるので、問合せのうえ体験入居した方に
順番に案内しているそうだ。
デンマークINN深大寺の明るく清潔なホール。老人ホームや介護施設に下見に訪れた時は、清潔であるか、臭いがないかに注意してみて欲しい。掃除が行き届いていてイヤな臭いがしないことは、誠実な運営かどうかの一つのヒントになる。
モットーは緊密な医療連携と家庭的なサービス。
入居者の平均年齢は89歳、最高齢は103歳。
100歳も2人いらっしゃるが、寝たきりではない。
3度の食事とお茶、おやつの1日5回食堂に来ることが
生活リハビリになっているせいか、車椅子の方も
思ったより少ない。
このホームでは希望があれば最期の看取りまでする。
看取り、亡くなった後は清拭をし、ホールでお別れ会をして皆さんで斎場へ見送る。
病院で最期を迎えると、認知症の方は点滴の管を
抜いたりしないように拘束されるので、
ここでの看取りを希望されるご家族が多いという。
また、病院では終末期の患者には医師も看護師も
用事がある時しか訪室しないが、ここにいれば
入れ替わり立ち替わり人が来てくれるので、
ご家族からは「温かい看取りをありがとう」と
感謝の声が届くのだそう。
まさに終の棲家として、家と同じように
送り出してくれるホーム。
自分も最後に入るとしたら、こんな家庭的なホームが
いいなと好感をもった。
- リビングジャーナリスト・「家の時間」編集主幹
中島早苗 1963年東京生まれ。日本大学文理学部国文学科卒。アシェット婦人画報社で12年在籍した住宅雑誌『モダンリビング』を始め『メンズクラブ』『ヴァンサンカン』副編集長を経て独立。約20年間400軒あまりの家と家族、建築家、ハウスビルダーなどへの取材実績を基に、「ほんとうに豊かな住まいと暮らし」をテーマとして、単行本や連載執筆、講演等活動中。著書に『建築家と家をつくる!』『北欧流 愉しい倹約生活』(PHP研究所)『やっぱり住むならエコ住宅』(主婦と生活社)『住まい方のプロが教えるリフォーム123のヒント』(日本実業出版社)『建築家と造る「家族がもっと元気になれる家」』(講談社+α文庫)他。