2014年07月23日更新
クリニックの最新インテリア
病院、学校というと、とくに公費で建てられたものは
機能、安全、清潔第一で、デザイン的には無機質で殺風景になりがちだ。
そのため、私などは学校や病院での、多くの人が帰った後の
風景なんかを思い出すと、心細いというか、ちょっと怖いような
気持ちが甦ってくる。
そんなデザインが一般的な中、
ユニークなインテリアのクリニックがオープンした。
「鼻のクリニック東京」だ。
設計はエムエス・パートナー。
このクリニック、もともと同じビルの1フロアを使って
鼻の専門病院として診察をしていたのだが、
この7月に子どもの鼻専門のクリニックも併設、
3階から5階までの全3フロアに増床して
リニューアルオープンしたのだ。
院長の黄川田徹先生とは、
インタビュー記事を書かせていただいて知己を得た。
内視鏡をいち早く鼻の治療に取り入れ、
短時間で安全な最新の手術法や周辺機器の開発をし、
鼻治療の世界的な第一人者と言っていいと思う。
鼻の治療というのは医療の中でも遅れているのだそうだ。
視神経などと隣り合っているために手術が難しく、
鼻の具合が悪い人は、これまでは大病院に入院して
大がかりな手術をするか、「たかが鼻づまりだから」と
我慢をしながら生きるかしかなかったという。
とくに子どもの鼻疾患が成長に及ぼす影響は深刻だそうで、
黄川田先生は「自分がこの状況を変えるしかない」と、
日本初、世界的にも珍しい子どもの鼻専門のクリニックを
オープンするに至ったのである。
今では日本全国から、そして海外からもクリニックの情報を得て
多くの患者さんが集まるという。
……と、黄川田先生の治療、挑戦については
非常に興味深いのだけれど、ここに書いていると
長くなってしまうので、興味のある方は著書
『こんなに怖い鼻づまり!――睡眠障害・いびきの原因は鼻にあり』(ちくま新書)
をご参照ください。
新しくオープンしたクリニックは、宇宙船をイメージし、
曲線を上手くアレンジしたインテリア。
子ども専門のユニットは遊び心いっぱいのデザインで、
治療に来た小さいお子さんがリラックスできる配慮を感じた。
大人でも、具合が悪い時に病院にいると気持ちがふさぐものだ。
病院が冷たく暗かったら、不安もよけいに増そうというもの。
リラックスできるデザインは有難い。
治療法が最適で、医師や医療者が優秀で、病院の建築も素敵。
そんな理想的なことはほとんどないのが現実だが、
少しでも近い病院や医師に出合えるとしたら、幸せだと思う。
- リビングジャーナリスト・「家の時間」編集主幹
中島早苗 1963年東京生まれ。日本大学文理学部国文学科卒。アシェット婦人画報社で12年在籍した住宅雑誌『モダンリビング』を始め『メンズクラブ』『ヴァンサンカン』副編集長を経て独立。約20年間400軒あまりの家と家族、建築家、ハウスビルダーなどへの取材実績を基に、「ほんとうに豊かな住まいと暮らし」をテーマとして、単行本や連載執筆、講演等活動中。著書に『建築家と家をつくる!』『北欧流 愉しい倹約生活』(PHP研究所)『やっぱり住むならエコ住宅』(主婦と生活社)『住まい方のプロが教えるリフォーム123のヒント』(日本実業出版社)『建築家と造る「家族がもっと元気になれる家」』(講談社+α文庫)他。