2013年05月22日更新
増える空き家と、家選び
一貫して増えてきた住宅着工戸数とともに、
空き家の数も増え続けている。
総務省統計局の最新(2008年)調査によれば、
総住宅数は5759万戸、空き家は756万戸で、
空き家率は13.1%である。
空き家の内訳は、「賃貸用の住宅」が最も多く、54.5%。
賃貸で、現在空いてしまっている住宅のことだ。
賃貸住宅の半数以上が空き家というのも驚きだが、
もっと注目すべきは、「その他の住宅」が35.4%もあること。
空き家になってしまい、そのまま放置されている住宅が
3割以上にものぼるのだ。
放置されている理由は、想像に難くない。
親が住んでいた家で、親が亡くなったりして住人がいないが、
仏壇や家財道具があってそのままにしているケース、などなど。
賃貸や撤去するにも費用はかかるし、そうこうする間に時が経ち、
朽ちゆくにまかせている住宅が多いのだろうが、
そんな空き家は近隣にとっては大きな問題となる。
放火やゴミの不法投棄場所などの標的になりかねないからだ。
しかも、そうした空き家が今後、
ますます増えていくという試算がある。
富士通総研によれば、新設住宅の年間着工戸数が
現状の80万戸程度から変わらないとすれば、
15年後2028年の空き家率は23.7%
(住宅が壊される数も現状維持としての想定)。
4軒に1軒が空き家になってしまう計算で、
これは大変なことだと思う。
都市の空き家率が3割を超えると、
防犯面など居住環境が劣悪化するという報告もあるのだ。
また、壊される数を現状維持とし、
新設着工戸数を半減させると、2028年の空き家率は17.1%。
さらに、壊される数も増やし、新設着工戸数を半減させると、同15.7%。
空き家率の深刻な増加を遅らせるには、
新たな住宅の着工戸数を現状より
減らしていくことが前提となる。
こうして見ていくと、
今後は既に建っている中古住宅を
有効活用する改修、リノベーションが
ますます重要不可欠になると思う。
さらにこれからの新築は、
戸建てにしろ集合住宅にしろ、
長期優良住宅など、省エネ性能がかなり高い住宅を
つくり、選ぶのが常識となるはず。
逆にいえば、省エネ性能がよくわからない住宅を
買うのは危険過ぎて、おすすめできない。
省エネ性能が高いことは大前提として
しっかり確認し、そのうえで住み心地がいい、
自分らしい暮らしができる家を選ぼう。
- リビングジャーナリスト・「家の時間」編集主幹
中島早苗 1963年東京生まれ。日本大学文理学部国文学科卒。アシェット婦人画報社で12年在籍した住宅雑誌『モダンリビング』を始め『メンズクラブ』『ヴァンサンカン』副編集長を経て独立。約20年間400軒あまりの家と家族、建築家、ハウスビルダーなどへの取材実績を基に、「ほんとうに豊かな住まいと暮らし」をテーマとして、単行本や連載執筆、講演等活動中。著書に『建築家と家をつくる!』『北欧流 愉しい倹約生活』(PHP研究所)『やっぱり住むならエコ住宅』(主婦と生活社)『住まい方のプロが教えるリフォーム123のヒント』(日本実業出版社)『建築家と造る「家族がもっと元気になれる家」』(講談社+α文庫)他。