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50代からの住まい

2009年12月11日更新

「健康な住まい」は、"心の健康を育む空間"であるべき

人間誰しも「健康な住まい」で毎日を過ごしたいもの。新築、リフォーム、住み替えなど、転機を迎えたときには、「自然素材」、「バリアフリー」、「健康仕様」といったキーワードが気になるところだ。しかし、ベテラン建築家・佐川旭さんは、「目先のことにこだわりすぎると、かえって融通のきかない、面白くない家になってしまいかねません」と忠告する。まずは広い視野を持って、「心の健康」を育むような空間をつくることを考えてみよう。


 佐川さんは「まず5つの観点から自分たちの健康について考えてみましょう」と提案する。

 1.社会環境
 自分たちの暮らしが社会と適切な接点を持てるか。「50代以降で重要なのは、仕事などから離れたプライベートの交友関係です。利害を超えた友人とのコミュニケーションは、刺激にも生き甲斐にもなりえます」と佐川さん。

 2.文化環境
 風土や地域性の状況、近隣の病院・文化施設とのアクセス性といった、文化的生活をおくるうえで背景となる要素をどのようにプランに反映させるか。敷地選びの段階では非常に重要であり、また建て替えなどエリアが変わらない場合でも、車庫の作り方、収納・動線の計画に大きな影響を及ぼすポイントだ。

 3.心理環境
 毎日暮らすうえで自分や同居する家族の心持ちをいかに安定させ、ストレスの少ない生活をおくれるようにするか。インテリアのカラーコーディネートを適切に行うだけでも、落ち着いた環境を作り出すことができる。

 4.物理環境
 身体に負担のかかる段差を解消したり、適切に手すりを取り付けたり、と実際に生活するうえで障害となる部位を具体的に改善することももちろん必要だ。「ただ、バリアフリーというとこういうことばかりに目がいきがちですが、ここに挙げた5つの環境それぞれについてバランスよく考慮しておかないとあまり意味がありませんよ」と佐川さんは警告する。

 5.生物環境
 人はふとしたときに緑を眺めたり、ペットの仕草に笑ったりして、心を慰められるものだ。「私が設計する場合は、リビングの面積を多少割いてでも植栽のある中庭(緑)を用意します」と佐川さん。そうした環境を暮らしの中に確保しておくことはとても大切だ。

 以上5つの観点について施主と話し合いながら、佐川さんは設計を進めていく。実際のプランニングでは以下のポイントを必ず盛り込むという。

・立地条件や気候に対応した間取り・仕様にすること
・地域に馴染んだ木材を使うこと
・心身に負担の少ない自然素材などの建材を使うこと
・ダニやカビが発生しにくい換気や通気の計画を立てること
・長期にわたって維持や手入れがしやすいこと
・住まい手に緑や日差しなど自然の要素で癒やしを与えること
・建物が雨漏りや地震に強いこと

 「設計手法や建材、設備機器の選択肢はいくらでもあります。住まい手のライフスタイルや感性、価値観に合わせて提案していくことになります」という佐川さん。その提案のコツは、「普段の生活レベルを1.0とすると、1.2くらいのプランにまとめること」なのだという。50代ともなると自分の価値観や流儀はほぼ確立されている。ここからまるきり新しいライフスタイルを取り入れようとするのは、心身に負担をかけることになる。「2.0くらいの斬新な家では住みこなすのが大変」(佐川さん)という配慮なのだ。

 階段を上り続けているのが30代とするならば、50代は階段の踊り場に立ち止まっているところ。「私も50代になってみてよくわかりますが、そこからどのように無理なく階段を下りていくかが難しい。50代からの住まいを考えるとき、広い視野を持ってあらためてこれからのことに冷静な目を向けることが大切だと思います」

 細かいことはそのときそのときで考えればいい。今年1年、来年1年、そのときどきをいかに心安らかに暮らしていくかを大事にしたほうがいい。

 佐川さんが目指す「健康な家」は、「精神的な喜びを得ることができ、心が成長する住まい」。ちょっとした飾り棚をしつらえてみたり、四季の移り変わりを感じたり、朝の光に心洗われたりして、住まい手が豊かな言葉を発することのできる空間を設計したいと考えている。


佐川さんの提案で設置された1.5坪の中庭。入居後、ご高齢の施主のご家族から「新芽の出る季節が楽しみになった」と喜んでいただけているそう。1本のシンボルツリーが与える内面的な健康への寄与度は住むほどに実感がわいてくるものだ。


「最近は雑誌やネットで情報を集め、具体的なイメージを固め
てくる人が多いが、プロならではのアドバイスを期待している
点では今も昔も同じ」という。


佐川さんがこれまでに手掛けた住宅は200棟を超える。
また、年間で30回以上もの講演をこなす建築家でもある。
取材協力:佐川 旭 建築研究所http://www.ie-o-tateru.com/


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