2009年10月07日更新
アートとクラフトの狭間で 自分らしさの鉱脈を求めて…
私にはお気に入りのビアグラスがあります。そんなに高価なものでもレアなものでもないけれど、なんとも持ち勝手が良く手にすっとなじむのです。新しい家に引っ越して荷解きしながら、これにキンと冷えたビールを注いで夜景を見ながら夏を迎えよう!と考え、そう思いつくといつの間にかデッキの構想が頭の中に湧き出て鉛筆を握っていたのです。
引越ししたのは晩秋、ずいぶん先の楽しみを想像させるそんな力が身近なクラフトにあったりもするのです。
アート作品を家に迎えることはちょっとした勇気と大きな支出を伴うこともあるけれど、これ!と言うものに出会った時は刺激的で、大きなインスピレーションを貰えたりします。クラフトはもう少し身近で、気軽に取り入れることも出来、使う人を意識して試行錯誤しながら丁寧に作られた作品は使い手の生活に寄り添い、喜びを与えてくれる力を持っていたりもするのです。
前回の自邸「4時20分の家」でテーマを決めて家を作ろう、それに沿ったインテリア・アートを考えようと提案しましたが、それではそんなアートやクラフトをどこでどういう風に入手するか? 信頼おける画廊や美術品店でというのが確実な方法ですが、もっと気軽に自分にとって特別な作品と出会える方法もあるのです。
最近面白いと思うのは身近な各地で開催されているクラフトショー。
作家が自分自身の作品を持ってショーに出て来ています。玉石混合の感はあるものの、自分らしい一品を掘り出す楽しみがあり、何より作り手の顔が見え、人柄に触れることにより自分に波長の合う作品を見つけることが出来るのです。またそこは私たち作り手にとっても使い手の気持ちに触れ、要望を知ることの出来る大切な場でもあるのです。
写真上:安曇野スタイル
一年に一度開催されるオープンアトリエスタイル回遊型の作品展。
各会場のおもてなしも楽しみ
写真下:水準の高さと混み様は日本一?のクラフトフェア松本
伸びやかな環境の中で作品選び
もう一歩踏み込んだオープンアトリエ。
アートやクラフト作家の工房やアトリエが期間を限って公開されることがあります。
制作の現場を見たり、その作品の生まれた環境-土地の力や背景や空気まで感じ取ることが出来るのです。
そしてうまく行けば自分の希望を作品に反映することも可能だったりするので、出来上がったものを購入するだけでは得られない一種の共同制作の満足感があるのではないでしょうか?お互いの思いが重なり響きあうことでより完成度の高いもの、他に無い独自のスタイルの作品となり、そこにひとつの物語が加わるのです。
ギャラリーや作家の開く作品展。
そんなに大きなギャラリーでなくとも自分のテイストに合う展示を続けているギャラリーや、作家中心の特別展を展開する美術館を見つけることは宝探しへの近道。定期的に訪れることにより運命的な出会いがあるかも。
アートの気が漂う土地には必ず珠玉のようなギャラリーや美術館があり、ギャラリーオーナーの厳しいセレクトに叶った作品を作家が愛情を持って魅力的に展示して見せるプロのテクニックからインテリアのヒントをもらえることも多いのです。
①森の中のギャラリー・シュタイネ ②Sand art ③鉄工芸
④Glass art ⑤木工 ⑥陶芸 ⑦安曇野高橋節郎記念美術館
今回は私にとって身近な安曇野、松本に絞ってご紹介しましたがこれだけ狭い範囲の中にも数多くの優れた作家が存在します。各地にあなたにとって特別な作品との出会いの場があるはず。先ずは出かけましょう。あなたを待っているものに出会うため。無駄足と思えたこともきっと何かのきっかけにはなるはず。
さて、こうして集まったものの収まりどころを考えるのが今後の課題ですね。
最近作ったカタツムリのペーパーホルダー。これは紙にちなんで葉っぱのモチーフだったのを「梅雨時だからその上にカタツムリはどうですか?」というお客様からの提案で生まれました。
- 鉄工房Eisen(アイゼン)
宮嶋昭夫・宮嶋洋子 宮嶋昭夫 鉄の持つ確かな素材感、朽ちてなお美しい力強さに惹かれて、制作を続ける。作りたいもの語りたいことは山ほどあるが、毎回少しずつ紹介していきたい。鉄工房Eisen
宮嶋洋子 ゆっくりした時間を紡ぎ出しながら家で過ごすのが好きだが、好奇心旺盛で常に面白いものをキョロキョロと探している。その様子の一端をブログ「zarlo」(http://zarlo.exblog.jp/)でも公開中。