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住宅ライターの家づくり奮闘記

昨年9月末の長男の誕生会の様子。私の両親も呼んで6人で食卓を囲みました。こうした場を設けられるのも、オープンなキッチン&ダイニングに設計してもらったおかげです。

新築時は6歳、2歳だった子どもたちも、この家での6年目を迎え、長男は今春、中学生になります。変化していく家族のライフスタイルを変わらず受けとめてくれるわが家には、ただ感謝するばかりです。

2016年01月07日更新

家づくりは人生の指針を見定める作業

2016年を迎え、わが家も築6年目に突入しました。このコラムでも何度か触れたように、外部の柵やバルコニーなど木材の造作部分は傷みが目立つようになってきており、近々、補修を予定しています。食洗機や浴室の給湯機能なども動作の不具合が気になることがあり、メンテナンスに来てもらっています。やはり「5年目」というのは、見直しのタイミングとしての節目なのかもしれません。

一方で、子どもたちは幼稚園から小学校に上がり、家族の暮らし方も変わってきました。それに合わせ、子ども室も机とベッドを整え、勉強と就寝もこなせるように。また、子どもの成長によって、土間などの植栽に手を入れる時間もとれるようになってきました。今年は、家族の住まいとして次のステージに本格的に移行する転換期になるのでは、という気がしています。

こうして住んでみて思うのは、家は、家族というコミュニティの舞台装置として機能しているんだなということ。玄関やリビング、個室など、それぞれの部位のあり方が、家族関係にさりげなく影響を与えていることは間違いありません。オープンな間取りであるほどコミュニケーションは密になり、許容範囲の広いシンプルな空間であるほど、そこに住む人間も多様な個性を受けとめてもらえる。いま私はそのような確信を持っています。

各地の住宅、工務店を取材していると、最近は「建築物としての家」「美しいオブジェとしての家」というよりも、「安心して暮らせる場」「家族との関係を築く場」「暮らしを楽しむ場」といった「人間関係」「時間」「価値観」を満たすことが、家づくりで優先されているように感じます。

そうしたコミュニティづくり、環境づくりを意識している施主、設計者、工務店が全国各地で確実に増えてきました。現在の住宅業界における、省エネ・エコ化の流れとともに、家づくりにおけるコンセプト、思想のあり方が従来以上に重要になってきているのでは。

何のために家が欲しいのか。どのように暮らしたいのか。家族はどうありたいのか。社会とどのように関わっていきたいのか。そうした人生設計、長期的なビジョンが、この急激な変化が続く不透明な時代には、求められているのではないでしょうか。家づくりは人生の指針を見定める作業であり、住宅はその思想を具現化したもの。「確かなもの」に寄り添って生きていけるのは、幸せなことだと思っています。




住宅ライター 渡辺圭彦

渡辺圭彦プロフィール
1970年生まれ。上智大学文学部新聞学科卒業後、扶桑社「新しい住まいの設計」編集部に勤務。その後、(株)ハウジングエージェンシーを経て、編集・制作会社へ。2004年よりフリーに。著書に「家づくりのホント~欠陥住宅にハマらない心得」(週刊住宅新聞社)など。2009年2月に自邸が竣工。
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