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住宅ライターの家づくり奮闘記

土間の下に埋められていた浄化槽が撤去され、下水道につながれたところ。このあと、配管の周りに土を詰めてモルタルを流してしまいます。

工事が完了するとこうなります。土間の周囲より2cmほど低くなっていますが、ここにはあとで左官屋さんに、周囲と同じ洗い出し仕上げをしてもらうことになっています。浄化槽のフタがないと、見た目にもスッキリしますね。

2011年06月15日更新

さよなら浄化槽、こんにちは本下水

 先日、合併浄化槽の撤去工事がありました。すでに本下水の引き込みは終わっていたので、これで我が家も直接、下水につながったことになります。

 都心部だと下水管が巡らされていることでしょうが、我が家のような住宅地の端っこのほうだとまだまだ合併浄化槽を使っているエリアも多いようですね。簡単に説明すると、合併浄化槽とは、暮らしで出た雑排水を地下のタンクに集め、3~4段階を経て、微生物によって汚れを分解し、汚泥を沈殿させて、上澄み液を塩素剤で滅菌してから川などに放流する仕組みです。タンクの中に汚れが溜まるので定期的にメンテナンスをする必要があります。

 建築前にお役所に確認したときには「下水道を通す計画はあるがいつになるかわからない」ということだったので、合併浄化槽を土間の下に埋め込むことになりました。これで建築予算において30~50万円くらいのコストアップにつながったので、「もっと早く本下水化していたらなあ」と思ったりしましたね(笑)。で、3年もしたら、今度は撤去の工事が必要になるという…(涙)。

 上水道、下水道の工事は、地面を掘って、残土を処理する手間が発生するので、なかななかバカになりません。我が家の敷地探しのときも、ライフラインの状況は気をつけていました。新規の造成地などでは、建築工事のほかに、水道やガスの引き込み工事が必要になってしまう場合がありますからね。

 また、今回の震災のように地面が液状化したりすれば、地中に埋設してある水道管も大きな影響を受けます。水道管の勾配が変わっただけで詰まったり、流れが滞ったりします。液状化の影響が大きかったエリアでは1か月以上も下水を使えないところもあったようです。

 震災後、ある建築家を取材した際に「非常時のことを想定して、床下に地下ピットを用意すべし」という意見を聞きました。平時はそこに非常用の備蓄品を入れておいて、いざ下水が使えなくなったらそこに排泄せよというわけです。で、排水口も設けておいて下水が復旧したらザーッと水で流す、という仕組み。実践するにはいろいろと配慮すべき点(ニオイ対策など)もあるとは思いますが、発想としては「なるほど」ですよね。

 住宅の雑排水でもっとも多いのがトイレの排水だそうです。ちょっと前までは1回の使用で13リットル流すタイプが普通でした。最近の節水型トイレでは1回で4.5リットルだそうです。水の使用量を減らすだけでなく、下水処理の負担もずいぶん変わりそうですね。

 私たちの住まいは、そんなところでも暮らしを支えてくれています。浄化槽を撤去する工事を見守りながら、そんなことを考えていました。

住宅ライター 渡辺圭彦

渡辺圭彦プロフィール
1970年生まれ。上智大学文学部新聞学科卒業後、扶桑社「新しい住まいの設計」編集部に勤務。その後、(株)ハウジングエージェンシーを経て、編集・制作会社へ。2004年よりフリーに。著書に「家づくりのホント~欠陥住宅にハマらない心得」(週刊住宅新聞社)など。2009年2月に自邸が竣工。
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