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住宅ライターの家づくり奮闘記

南の掃き出し窓は軒の出によってしっかりとガード。土間もその部分だけ雨に濡れていません。軒の端に斜めに掛けられているのは雨樋です。白い玉砂利の下は排水溝になっており、雨水はここへ流されます。

屋外との一体感を味わえる窓際は、縁側のようなスペースに。雨に濡れる朝顔やゴーヤもまた瑞々しく美しい眺めを提供してくれます。

2010年07月14日更新

深い軒が雨や日射から居場所を守ってくれる

 雨が降るたびに思うのが、「家があってよかったなあ」ということ。屋根に降り注ぐ雨音を聞きながら、居間で食後の団らんを過ごしているときなど、とくにそんな感慨が湧き起こります。  家のもっとも根本的な機能のひとつに、雨や日射、風など外部の気象から暮らしを守る、ということが挙げられます。言葉にするとごく当たり前のように聞こえるかもしれませんが、これはとても重要なこと。日射に含まれる紫外線や日射熱は、人体を含む、さまざまな物質の劣化を促進しますし、雨の水分も高温多湿の日本の風土では、カビやシロアリ、腐朽菌などを呼び寄せる原因になります。毎日の生活を安心して営むためには、そうした外的要因を家によってきっちりと遮ることが大前提となるのです。  いわば「シェルター」としての機能を保持させるため、現在では住まいにさまざまな性能を付与しています。断熱材などによって断熱性能を高め、構造内部に気密シートを巡らせることですきま風を予防し、サッシや窓ガラスにも断熱・気密性の高い製品が使われるようになりました。窓回りや換気口など壁に穴の空けられた部位は防水シートやコーキング処理などできっちりと空隙を埋められ、外部からの水の浸入を防いでいます。  我が家で大きな役割を果たしているのは、軒です。躯体から約1.2m、南向きの土間の上に突き出しています。ちょうどそこには幅2。2mの大きな掃き出し窓があり、まるで縁側のようなたたずまいを醸し出す場所に仕上げられています。  我が家は比較的日当たりがいいため、日中、土間には夕方まで日差しが入ってきます。そのままであれば、大きな掃き出し窓をつけてしまうと、直射日光にさらされて、とても窓際に座っていることなんてできません。この軒の出が日射を遮っているお陰で、ほどよく明るく心地のいい場所になっているのです。  懐の深い軒は、雨天時にも大いに存在感を発揮してくれます。よほどの強風でもない限り、大きな窓に直接雨水が打ち付けられることはまずありません。ここには木製のオリジナルサッシが入っていますが、これだけ軒で守られていれば、腐ったり、カビが生えて交換ということにもなかなかならないはずです。  この軒のお陰で土間も暮らしの一部に違和感なく取り入れられています。窓を開けて、雨に濡れる植栽を眺める、という贅沢な時間もまた、我が家における楽しみのひとつです。

住宅ライター 渡辺圭彦

渡辺圭彦プロフィール
1970年生まれ。上智大学文学部新聞学科卒業後、扶桑社「新しい住まいの設計」編集部に勤務。その後、(株)ハウジングエージェンシーを経て、編集・制作会社へ。2004年よりフリーに。著書に「家づくりのホント~欠陥住宅にハマらない心得」(週刊住宅新聞社)など。2009年2月に自邸が竣工。
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