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トロントひとかけら

これが空高くそびえるコンドミニアム群

 

只今建設シーズン中です

 

こういう家に住んでみたい!

2011年07月20日更新

トロントひとかけら#1

はじめましてKyuenaです。今月から私の住むカナダの都市トロントについてのあれこれをお伝えします。よろしくおつき合いくださいね。

トロントはカナダ最大の都市といえど、広い広いカナダの中ではほんの一角。なにしろ1000万km2近い世界第2位の国土を持つカナダの中でこの街のダウンタウンはせいぜい630km2ちょっとなのだから。その片隅で暮らしはじめたニューカマーの私が見て感じた、ミクロ目線のトロントをつづっていくつもりです。

というのも、トロントと聞くと皆さん何を思い浮かべますか?
アジア系が多く住むエスニックシティ?
北米有数の金融街?

在住4ヶ月が過ぎたものの、暮らしてみて感じるのはなんともとりとめのない街というか、正直トロントらしさって何ぞや…という疑問。エッセイを通してトロントの小さなかけらが集まって、ここでの暮らしの輪郭ができるかもしれない。そういうコラージュのような作業にしたいと思っています。

さてなにがとりとめないのかというと、生活の中で「これがスタンダード」「これぞ元祖」というようなコアな基準があいまいなのではないか? ということ。

たとえば今まで生活拠点が東京とヨーロッパだったせいか、トロントの道路の広さやスーパーマーケットの品数の多さには圧倒されるものがあるけれど、いやいやアメリカ本土はもっとすごいのではないかと想像してしまうし、歴史的建築物といってもほとんどが20世紀かせいぜい19世紀のもの。そしてダウンタウンに点在する数々のエスニックタウンは世界中からやって来た移民たちが、中国なりインドなりイタリアなりギリシャなり、自分達の伝統を守って暮らしています。

俗に「人種のモザイク」と呼ばれるカナダの多文化共生主義というのは、それぞれの文化を邪魔し合わずにそれぞれが暮らしていける社会のことなんだなー、となにかにつけて実感します。
そう、移民の受け入れに積極的な若い街ゆえ、今この瞬間にも世界中からやって来たニューカマー達が続々とトロント市民になっている状況の中で
「これがトロントだ」
という決まりごとってないのではないかと思うのです。つまりはその雑多でフレッシュな流動性こそが現在のトロントそのものなのでしょうね。

そんなトロントの住人”トロントニアン”達はよく
「トロントにはふたつの季節がある。ひとつは冬、そしてもうひとつは建設シーズンだ」
と自虐的に言います。
冬のトロントの厳しい寒さは有名ですが、ダウンタウンの至る所に出没する建設現場ももはやこの街の風物詩。建築現場に居合わせなくても、ちょっと外を歩けば砂ぼこりを巻きあげて通り過ぎるダンプカーには遭遇するはず。

こんなにあちこちで一体なにが建てられているのか?
それはもっぱら「コンド」と呼ばれるデラックスなコンドミニアム。

大きく分けてトロントの住居は一軒家(テラスハウスなどを含む)・アパートメント・コンドミニアムに分類されますが、どうも「コンドに住んでいる」=少々きらびやかな響きがあるようで。
というのもコンドにプールやジム付きは当たり前、専用のシャトルバスで公共交通機関不要のドアツードア生活だったり、バーベキューテラスやビリヤード場があったり、ヨットを所有していたりと、各コンドが競い合うようにちょいリッチな特色を打ち出しているから。今のところ一番驚いたのは、ボーリング場内蔵コンド。いくつもレーンが並んだ本格的なタイプで、笑っちゃうほど広かった…。

街角でも派手でおしゃれな看板を「新しいショッピングセンター?」と思ってよく見ればコンドの分譲広告。実際私の住むハーバーフロント地区には、ホテルやオフィスビルより背の高いピカピカのコンドがにょきにょきそびえ立っています。この金属的で威圧的な輝きを美しいと思うかどうかはその人次第ですけれど。
それにしてもこの勢い、どうしても日本のバブル期を彷彿とさせるなあ。
などと今日も砂ぼこりをかぶりつつ思うのでした。

そんな風に建設シーズンもといコンドブームをちょっと冷ややかに眺めてしまうのも、トロントには一歩メインストリートの裏側に入ると緑豊かなかわいらしい住宅街があって、こういう通りを通るたびに「いいなー、やっぱこういう所に住みたいな」とうらやましい気持ちがつのる一方だから。
別に郊外まで行かずともダウンタウンのど真ん中でだって、リスが走りまわる前庭に立派なモミの木が植えられて、そこへ続く階段に住人が座って手持ち無沙汰に通りを眺めている…そんなレイドバックで素敵な光景に、意外や結構出くわすのですよ。

まあ、実際住んだら雪かきやゴミ捨てが大変だよと現実的な意見をされても
となりの芝生はどこまでも青く青く見えてしまうもの。

それにしても、住まいに関してもどちらがトロントらしいか選ぶことはできず。
この多様性がやっぱりトロントなのでしょう。きっと。

ライター Kyuena キュエナ

Kyuena キュエナプロフィール
フランス→日本→カナダと移動生活中。
人種のモザイク都市・トロントでの楽しみは、
ベジタリアンインド料理とアールデコ建築探し。
仏語&医療翻訳と物書き業稼働してます。
現在、トロントの日系情報紙『bits』で連載中。

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