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パリで暮らす、食べる、遊ぶ

窓からの眺めはこんな感じです

こちらで「Cousine americaine」とよばれるキッチン

徒歩1分の地下鉄前はにぎやかです

2011年02月16日更新

パリ引越し奮闘記

こんにちは カオリです。先月は有緒ちゃんがとても楽しいドライブの話を書いていましたね。そういえば、私も有緒ちゃんと友人のJちゃんと3人で、有緒ちゃんの愛車でアルザス方面を旅行したな~と懐かしく思い出しました。

さて、今月は、先月ののんびり、のどかで幸せな有緒ちゃんのお話とうってかわり、私の引越し奮闘記です。さて、ずいぶん前にアパートの水漏れで大変な目にあっているというお話をしましたが、その後、水漏れは修理されたものの、天井も壁もペンキがはがれてひどい状態になっていました。ところが、さらに11月に出張と休暇で2週間ほど留守にしてアパートに帰ると、またもや同じような場所からザーザーと水が漏れているではありませんか。その後、修理してもらったものの、水漏れの被害はさらに拡大し、お風呂場から、キッチン、トイレ、玄関そしてサロンまで天井も壁もペンキがはがれ、ぼろぼろになってしまいました。玄関の天井なんて、ある日、大きな音ともにすべてのペンキが一気に剥がれ落ち、掃除するのに一苦労でした。

あまりにあちらこちらで水漏れが続くので、とうとう大家さん、このアパートを売ることに決めたようで、2月の契約更新をしないので出て行ってほしいと言われたのが12月。そもそも、こんな状態のアパートでも引越しを決心しなかったのは、ただでさえとても忙しいのに、大変な引越しなんてできないと思っていたから。でも、そういわれたら仕方がないので、雪の降る極寒のパリでアパートを探すはめとなりました。

そもそも、パリで外国人がアパートを探すのは大変なのです。通常の不動産屋さんだとフランスに住む保証人が必要といわれ、「De particulier à particulier」といわれる不動産屋を通さない個人間の不動産のやり取りでも、外国人は敬遠されがちで、さらに保証人がいないなら6か月分の家賃を保証金としていれて欲しいなんていわれることも。そんなわずらわしさを回避すべく、まず、Mixiのパリの生活にかかわるコミュニティーで賃貸アパートがでているかを探し、また職場の掲示板に張り出されている賃貸アパートの案内ものぞいてみることにしました。

4件ほど、日本人の大家さん、フランス人の大家さんのアパートを見たんだけれど、アパートの近所の雰囲気はとても気に入ったんだけど部屋が思ってたより薄暗いとか、セーヌ川を見渡せる最高の眺めで大家さんもいい人そうなんだけれど、洗濯機がついていないとか、部屋は広くて電化製品もすべてちゃんとそろってるんだけれど、大家さん、かなり曲者そうでまったく気が合わないとか、そんなこんなを経て最終的に職場から徒歩10分、駅前でエッフェル塔にも近く、日曜日にはすぐそばにマルシェ(市)もたつアパートに決めました。新しいアパートは以前のアパートよりずっと小さいんだけれど、一人で住むのには十分な広さ。そして決め手はなんといっても部屋からの眺め。このアパート、10階で大きな窓があり、部屋に入ると目の前が開けていてとてもいい気持ちなのです。

それにしても引越し、大変でした。山積みの荷物の前で、どうして私はこんなに荷物があるのか、いったいいつの間に勝手にこんなに増えてしまったのか、しかもあまり使う予定もないような無駄なものが、と自分を責め、かといって、果たして私はこれらのお気に入りのものを使わないからという理由で手放すことができるのかと途方にくれて、呆然と座り込んでいるうちにどんどん時間は経っていきます。

さらに、急に決まった引越しのため、家の中には買い置きしたお米や日本の食材、調味料や洗剤といった生活用品はがあふれかえり、荷物を箱につめる前に大体の箱数を予想して引越し屋さんから見積もりをとったものの、その箱数をどうやっても大幅に超えてしまうことが途中で発覚。ということで、仕事の行き返りに、車で自分で運べるものはせっせと運ぶ羽目になりました。くどいようですが、仕事は絶好調に忙しい時期で、気分的には朝起きてから夜寝るまで全力疾走している感じです。

しかも、引越しだけに気を取られてるわけにはいかないのです。そう、もちろん、出て行く部屋の掃除もしないといけません。フランスの水は硬水なので浴槽やシャワー、洗面台やキッチンの水まわりは石灰が固まりすぐ真っ白になってしまいます。テラスも毎日、草花に水をやっていたので、やはり石灰がゴリゴリと固まっています。取っても取ってもきりがないので忙しさにかまけてほったらかしにしていたけれど、このままにしておくわけにもいかず、お酢をつかって大掃除です。部屋の中は引っ越し荷物で足の踏み場もなく、天井からはぽろぽろとペンキが剥がれ落ち、そしてお酢のにおいが充満する部屋の中で放心している私。地獄絵以外のなにものでもありません。

電話も引越しに伴い移動してもらうために、フランス・テレコムに連絡しないといけません。電話アナウンスに「X番を押してください」なんて言われ続けて、やっとオペレータにたどりついたら、「電話では取り扱いができないので代理店に行って手続きをしてください」なんて返事。でも、フランス・テレコムのウェブサイトには、「引越しの際にはこの電話番号にかけてください」って書いてあるのに。抗議したものの、結局受け付けてもらえず憤慨。その後、同じ番号に再度、電話をかけると、今度は違う人がでて、すんなり電話で受け付けてもらえました。なんで? けれど電話の移動に最大15日かかりますと言われ、「最大15日もかかる、たかだか電話を移動するだけに? なぜ?」と疑問と不満がむくむく膨らんだけれど、もう、これがフランス流としぶしぶ受け入れることにしました。結局、引越し先の電話は引越し当日につながり、ちょっとフランス・テレコムを見直しました。できるなら、最初からできるって言ってよ。

さて、フランスでは入居時、退去時に大家さんとともに部屋の状態をチェックするEtat des lieux(エタ・デ・リュ-)という作業が必要です。無事、この作業も終わりやっと引越し完了です。以前のアパート、とても気にいっていました。6区のまわりの環境も大好きで、引越ししないといけないと決まったときにはとても悲しい思いをしました。さらに、引越し先のアパートが小さいことで、泣く泣く手放したものもありました。なので、引越し当日は本当に悲しくなるだろうな~、落ち込むだろうな~なんて思っていたのでした。

実際、引越し当日。悲しかったかって? ほんと、全然、まったく。もう疲れ果てて脳の働きも完全にストップしたのでしょう。ただただこの一連の引越しのどたばたが、一秒でも早く終わってほしい、それのみを願い続けていました。人間、あまりに疲れているとすべての感情が麻痺するのでしょうか。相変わらず新しいアパートの中は完全には片付いていませんが、大好きな新しいアパートで夜景をながめながらぼ~としていると、引越ししてよかったとちょっと幸せです。なんたって、頭の上からペンキが降ってこないことが一番幸せ。

パリ在住 カオリ・有緒(アリオ) 

カオリ・有緒(アリオ) プロフィール
*カオリ
早いものでパリでの生活、11年目に突入。毎日、セーヌ川左岸にある職場と家の往復のみで、いまだにマレ地区に足を踏み入れたことさえないくらいのパリ音痴。アメリカに暮らす夫と遠距離結婚中。

*有緒(アリオ)
ほんの1、2年ほどのつもりが、気づいたら6年目近くにも及ぶパリ生活。日本では考えられないようなトラブルに日々見舞われながらも、のほほんとした毎日。住んでいたのはサンジェルマンデプレといえば聞こえがいいだけの、築二百年近い古びたアパルトマン。趣味は、友人に料理を作ることと、アンティーク家具や骨董品などのガラクタを買うこと。 最近、東京に拠点を移しましたが、まだパリと行ったり来たりが続きます。最近初の著作となる「パリでメシを食う。 (幻冬舎文庫)」を出版しました。

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