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パリで暮らす、食べる、遊ぶ

このようなバンドがいろいろなところで楽しい演奏をくりひろげます。

スタート地点のトロカデロへとゆっくり向かいます。

楽しい仮装をしたランナーもいっぱい。

2010年10月20日更新

パリを走ろう

 こんにちは カオリです。パリはお昼の長さが驚くほど短くなってきました、帰宅途中にイルミネーションきらめくエッフェル塔を見上げつつ、あ~、もう冬もそこまでやってきているな~と感じる今日この頃です。

 さて、今日は私が先日参加した6キロマラソンのお話をしたいと思います。そもそも、毎日、机にかじりついて仕事をしていて、まったくスポーツに縁のなかった私。でも、これではいかんと思い立ち、週末に家の近所のリュクセンブール公園をゆっくりとジョギングしはじめたのです。このパリのど真ん中に位置する公園、お天気がいいとベンチでのんびりひなたぼっこをする人々であふれかえるのですが、実はこの公園の外周に添う形でジョギング道があり、多くの人がランニングをしているのです。一度走り始めるととても気持ちがいいこともあって、毎週、雨が降らない限りはぐるっと2周ほど、ゆっくりゆっくり走っています。

 さて、そんなジョギングづいていたある日、パリで女性だけを対象にした6キロマラソンが開催されるという耳よりな情報が。「La Parisienne (パリの女性)」という団体が主催し今回が14回目となるこのイベント。若干のエントリー費とお医者さんの診断書だけだせば誰でも参加できるということで、さっそくエントリーしました。6キロマラソン前日には、ゼッケンとタイム測定用のチップをうけ取るために、エッフェル塔の前のシャン・ド・マルス公園にでかけたんだけど、いろいろな協賛企業のテントが立ち並び、なかなか楽しい雰囲気です。

 さて、当日。家から集合場所となるシャン・ド・マルス公園にてくてくと歩いていくと、道中、スポーツウェアーを着た女性たちが目に付きはじめます。エッフェル塔周辺ではいろいろなコスチュームをきたバンドが演奏をしていて、みんなの気分を盛り上げています。公園には、もう所狭しと女性、女性、そして女性。それもそのはず、主催者発表によると、この日の参加者は2万2千人だそうです。みんな、公園をぬけて、エッフェル塔をくぐり、ゆっくりゆっくりと出発場所のトロカデロまで移動していきます。

 エッフェル塔の下あたりでは、もうかなり込み合った電車の中状態なんだけれど、まわりは全部、年齢に幅があるものの、みんな女性。私のこれまでの人生の中で、こんなに女性のみに取り囲まれた状況は初めてです。15分ごとの時間差でスタートし始め、とうとう私のグループの番に。小雨がぱらぱらふる中、いざ、スタートです。

 走り始める前には、軽快なバンドの演奏、いろいろな愉快な仮装をしたランナーたち、そして私たちの準備運動をアシストするお姉さんのハイテンションな掛け声にすっかりだまされて楽しい気分になっていた私。しかし、スタートしてからは、ただただ、黙々と女性に囲まれて6キロを走るという厳しい現実だけが横たわっているわけです。

 でも、客観的にみると、この光景、なかなか面白いものがあります。なんたって、広い車道には大量の女性陣。そして、当然のことながら、沿道にはその女性たちを応援する男性たち。なかなか、壮観な眺めではありませんか。ふっふっふ、やぱり天下は女性のものよなんて、少しいい気分で走っていると、さらに沿道には、お父さんに連れられた「お母さん、あんたが一番」なんてダンボールをもった子どもたちが、お母さんを見つけて大喜びしている様子も目に入り、あ~なんてほほえましいんだと心も和みます。

 しかし、そんなこんな考えつつも、体はいっぱいいっぱい、フーフーハーハーと呼吸を乱さないようにしながら、いったいいつになったら到着するんだと暗澹たる気持ちで走っていると、視界に変なものが。そうです、走っている女性を励まし伴走するために、金髪のかつらをかぶり化粧をし見事に女装をした男性が走っているのです。しかも、よくよく見てみると、そんな女装ランナーは何人かいるではありませんか。いや~、もし彼らが夫や恋人ならば、走っている女性たちもそこまで尽くしてもらって、女冥利につきるというもんです。う~ん、やっぱり世の中は女性を中心にまわっているのよと再びいい気分。

 そんなこんなで、息もたえだえに再びシャン・ド・マルス公園に戻ってきてゴール。終わってみればなかなか楽しいレースでした。まあ、走り終わったからこそ言える事で走っている最中は思わなかったけど。それにしても、このイベント、主催者が女性を大切にしているということがところどころに感じられるものでした。例えば、到着すると紙袋が渡され、その中には協賛企業からのちょっとしたお試し品なんかがいろいろと入っているんだけど、それに加えて、ランナーひとりひとりにバラの花が手渡されました。2万2千本のバラなんて、考えただけで気が遠くなりますが、やっぱり花をもらえるってうれしいです。

 そして、極め付きがシャン・ド・マルス公園の仮設トイレ。これだけの女性がいるのに、ほとんど並ばなくてもいいほど、そこらじゅうにトイレ、トイレ、そしてまたトイレ。観光地でもドライブ・インでもデパートでも、女性ってほんと外出先のトイレってどこでも並ばないといけないのがお約束。2万2千人もいながら、ほぼ、女性をトイレに並ばせることのない姿勢に主催者の心意気を感じた日曜日でした。

パリ在住 カオリ・有緒(アリオ) 

カオリ・有緒(アリオ) プロフィール
*カオリ
早いものでパリでの生活、11年目に突入。毎日、セーヌ川左岸にある職場と家の往復のみで、いまだにマレ地区に足を踏み入れたことさえないくらいのパリ音痴。アメリカに暮らす夫と遠距離結婚中。

*有緒(アリオ)
ほんの1、2年ほどのつもりが、気づいたら6年目近くにも及ぶパリ生活。日本では考えられないようなトラブルに日々見舞われながらも、のほほんとした毎日。住んでいたのはサンジェルマンデプレといえば聞こえがいいだけの、築二百年近い古びたアパルトマン。趣味は、友人に料理を作ることと、アンティーク家具や骨董品などのガラクタを買うこと。 最近、東京に拠点を移しましたが、まだパリと行ったり来たりが続きます。最近初の著作となる「パリでメシを食う。 (幻冬舎文庫)」を出版しました。

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