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パリで暮らす、食べる、遊ぶ

町中で見かける大きなMのマークが地下鉄の目印。マクドナルドじゃありません、念のため!

自転車でセーヌ川沿いを走るとノートルダム寺院が見えてきます。

途中で疲れたらカフェのテラス席に座ってお茶を飲みます。

ふと頭上を見上げると、大きい空が見えました。

2010年09月22日更新

自転車でちょっと自由になる午後

 こんにちは、有緒です。カオリさんも先月に書いていた通り、今年のパリは夏といってもけっこう肌寒い日が多くちょっと残念。そんな中で、唯一「暑い!」と叫びだしたくなるのは地下鉄の中でした。冷房も扇風機もない電車の中はまさに蒸し風呂状態で、みんな汗ダラダラ。いやおうなしに夏を感じてしまう瞬間です。そんなわけで、今日はパリの移動手段のあれこれを書いてみようと思います。

 パリに来たことがない人は、もしかしてパリを大都市と思っているかもしれません。確かに、フランスやヨーロッパの中では大都市に違いないんだけれど、実際にこの町を歩いてみると、「あれ、意外とちっちゃいな」と思う人も多いはず。地下鉄に乗ってしまえば町の端から端までせいぜい45分くらい。ということは、パリのどんな場所に住んでいても中心地までは30分くらいで行けて、ちょっとした場所ならば頑張れば徒歩だって可能。それに加え、パリの地下鉄って、網目のように縦横無尽に走り回っていて、駅と駅の間隔が信じられないほど近いんです。それぞれ2、3百メートルしか離れてない駅もざら。一つの駅から地上に出ると、もう次の駅が見えてたりして。ということは、つまり誰もが駅の近くに住んでいるし、どんな場所でも駅から歩いて5分くらい。慣れてみると、このコンパクトさはかなり快適。東京やニューヨークみたいに「移動するだけで疲れた・・・」なんてことはありません。

 さて、そんなパリに、さらに力強い最強兵器が登場したのは3年前。ある夏の日、突如としてパリの街中にグレーの自転車がズラリと並んでいることに気づきました。それは、パリ市が運営する「VELIB」という貸し自転車システムだということがニュースで判明。最初は「ふーん」程度の感想でしたが、町を歩いてみればそこかしこに貸し出しステーションが。その数、なんとパリ全体で750箇所(現在では1500箇所)そして、待機されている自転車は堂々の二万台!それを24時間セルフサービスでほとんどタダみたいな値段で借りられるんです。大通り沿いの駐車スペースをどんどん自転車で埋め尽くして行く行政の姿に、すっかり本気度を感じました。この自転車システム、面倒な手続きもないし、どこの場所から乗って、どこの場所で乗り捨ててもよいので本当に気軽。

 天気が良い夏の日、夫と二人で「そうだ、今日は自転車でパリを一周してみよう」ということになりました。さっそく、小さな鞄にお財布とお水だけを入れ、サンジェルマン・デ・プレの駅前で自転車を借りました。グレーの自転車にまたがり、車道を走り始めたとたん、いつもと違う風景が見え、ちょっとした非日常間に包まれました。
「どこにいく?」
「とりあえずセーヌ川を渡ろうよ~」
そんなざっくりしたプランで、まずは川の方角を目指します。自転車から見るパリは、徒歩とも車とも違う爽快な風が気持ちよく、坂もないのでいくらでも漕げそう。セーヌ川にかかるポンデザール(芸術橋)という細い橋を渡ってみれば、目の前にそびえるのはルーブル美術館。ハンドルをガタガタいわせながら石畳みを進むと、やがてルーブル美術館のシンボルであるガラスの「ピラミッド」が見えてきました。

 頭上には真っ青な雲ひとつない空が広がり、太陽に照らされたピラミッドはいつもにもましてキラキラと光っています。列に並ぶたくさんの観光客の横をさっと走りぬけ、鼻歌混じりに自転車を漕いでいると、次から次へガイドビックに出てくるような有名スポットが飛び出してきて、本当に飽きません。西に向かい、オペラ座を抜け、サントノレ通りをさらに西に走ってシャンゼリゼへ。「パリを一周!」というには変則的な経路になっちゃったけど、ほんの3時間ほどでパリを横断できて、気持ちとしては大満足。途中で、気になるお店に入ったり、パンを買ってベンチで食べたり、カフェでお茶を飲んだり。そんなとき、かなり脈絡もなく「なんだか自由だな~」と体から力が抜けていきました。

 そうそう、ちなみにVELIBとは自転車というフランス語「Velo」と自由の「Libre」をくっつけた言葉らしいです。自転車で自由になる。それを実感した休日の午後でした。

パリ在住 カオリ・有緒(アリオ) 

カオリ・有緒(アリオ) プロフィール
*カオリ
早いものでパリでの生活、11年目に突入。毎日、セーヌ川左岸にある職場と家の往復のみで、いまだにマレ地区に足を踏み入れたことさえないくらいのパリ音痴。アメリカに暮らす夫と遠距離結婚中。

*有緒(アリオ)
ほんの1、2年ほどのつもりが、気づいたら6年目近くにも及ぶパリ生活。日本では考えられないようなトラブルに日々見舞われながらも、のほほんとした毎日。住んでいたのはサンジェルマンデプレといえば聞こえがいいだけの、築二百年近い古びたアパルトマン。趣味は、友人に料理を作ることと、アンティーク家具や骨董品などのガラクタを買うこと。 最近、東京に拠点を移しましたが、まだパリと行ったり来たりが続きます。最近初の著作となる「パリでメシを食う。 (幻冬舎文庫)」を出版しました。

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