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パリで暮らす、食べる、遊ぶ

パリの夏の風物詩、パリ・プラージュ

子どもたちも特設シャワーで水遊び

ダンス大会も開かれます

2010年08月25日更新

ヴァカンスは1ヶ月

 こんにちは、カオリです。日本は毎日暑いようですが、パリは、今日、これを書いている時点では、肌寒く夏の雰囲気からはほど遠いです。しかし、暑かろうが寒かろうが、7月・8月のパリはヴァカンス真っ只中。観光地以外の地区ではレストランやブティックも1ヶ月ほどの長期休暇をとってお店を閉めてしまいます。そして、パリの夏の風物詩といえば、「パリ・プラージュ(仏語で海岸という意味)」。ヴァカンスに本物の海岸に出かけられないパリジャン・パリジェンヌのために、夏の間、セーヌ川の岸辺が海岸に変身するのです。椰子の木がならび、ビーチパラソルとともに並ぶデッキチェアーでのんびりゴロゴロするのはなかなか良いものです。もう少し蒸し暑く、セーヌ川の水がきれいだったら、もっといいのかもしれませんが。

 さて、ヴァカンスということで、今回は日本とフランスの職場環境の違いについて書いてみたいと思います。というのもパリで働き始めて、まず驚いたのは、誰も彼もがいともたやすく長いヴァカンスを取ること。今年は、超多忙な私の上司でさえも3週間の夏休みを取り、私の同僚の何人かは8月1日から8月31日までの休暇に突入しました。7月、8月はパリ市内の車の量も減りのんびりムードが漂いますが、それはオフィスビルも同様で、私の職場もお休みの同僚続出で全体的にのんびりムードです。

 1ヶ月のお休みはなかなか驚きですが、そもそもお休みには寛容なお国柄。お昼休みもゆっくりたっぷり2時間かけてのランチ。もちろん昼食時にはきっちりとワインが注文されます。職場のカフェテリアにもワインの小瓶がそなえつけられ、仕事中だというのに、みんなガブガブ飲んでいます。まあ、そのあと、ケロッとしてちゃんと働いているのはなんともうらやましい限りですが。こんな光景もなかなか日本では見られないものではないでしょうか。

 さらに、日本でなかなか見られないものとしては、職場での子どもたち。フランスの学校は水曜日がお休みです。通常は学童保育などを利用しているようですが、いろいろな事情からうまく子どもを預ける場所が確保できなかった日や、またフランスでは学校のストもあるので、そのような日には職場で子どもたちの姿をみかけることも珍しくありません。同僚の部屋を訪れると、床に寝転がって絵を画いている幼児や、子どもを抱いて仕事をしている同僚、さらに、一度は課の会議のテーブルの一角に、行き場のない同僚の子どもがちょこんと座っており、そのまま、彼女を含めて会議に突入したことがありました。

 私の職場はフランス企業ではなく、いろいろな国籍の人が働いているのですが、それでもパリにあるのでフランスの企業風土の影響を大きく受けています。女性が多い職場ということもあって、職場内に託児所もあり子育てをしながら働く女性には優しい環境です。お互いにプライベートでの生活を尊重しあって仕事ができるのは、精神的にかなり助かります。

 さて、この1ヶ月のヴァカンス。やむにやまれぬ事情もあるようです。なんたって、フランスの子ども達、夏休みがたっぷり2ヶ月あり、このとてつもなく長いお休みの間、日本のように、毎朝、ラジオ体操があるわけでもなく、プールのような課外授業や宿題さえありません。パリも日本の都市同様、子どもたちだけで遊び歩くということは難しく、ヴァカンスにでるか、何らかのキャンプに参加するかして居場所を確保する必要が生じるのです。私たちが子どものころは、夏休みといえば、ヴァカンスにいかなくても、子どもたちだけで、近所の公園で遊んだりとやることが山ほどあったような気がしますが、そんな光景は大都市ではもうみられないのかもしれませんね。

 私の同僚はいつも、夏休みの子どもたちをどうするかということで頭を悩ましており、子どもたちをつれて実家にかえることで、とりあえず1ヶ月はなんとかなるけど、そのあと、キャンプにおくるにしてもお金がかかるしどうしようって嘆いてました。この夏には、別の同僚の小学生の娘さんが行き場がなくなり、1週間、毎日、職場でお母さんのオフィスでお絵かきをしたり、棚の整理を手伝ったりして時間をつぶしていました。子どもたちだけを家に残しておくわけにもいかず、休暇を取らざるをえないというところでしょうか。

 さて、1ヶ月お休みをとる同僚を横目で見ながら、私は、1週間か2週間のお休みを何回かにわけてとっています。1ヶ月もお休みをとったら、やっぱり迷惑する同僚もでてくるだろうな~とか、完全に仕事に戻るのがいやになってしまい社会復帰できないだろうな~とか、これ、一回とると、ぜったい癖になるよな~とかいろいろと考えて、1ヶ月のお休みのという禁断の世界に踏み出せない自分は、なんて小心者なのだろうと、つくづく思い知る今日この頃です。

パリ在住 カオリ・有緒(アリオ) 

カオリ・有緒(アリオ) プロフィール
*カオリ
早いものでパリでの生活、11年目に突入。毎日、セーヌ川左岸にある職場と家の往復のみで、いまだにマレ地区に足を踏み入れたことさえないくらいのパリ音痴。アメリカに暮らす夫と遠距離結婚中。

*有緒(アリオ)
ほんの1、2年ほどのつもりが、気づいたら6年目近くにも及ぶパリ生活。日本では考えられないようなトラブルに日々見舞われながらも、のほほんとした毎日。住んでいたのはサンジェルマンデプレといえば聞こえがいいだけの、築二百年近い古びたアパルトマン。趣味は、友人に料理を作ることと、アンティーク家具や骨董品などのガラクタを買うこと。 最近、東京に拠点を移しましたが、まだパリと行ったり来たりが続きます。最近初の著作となる「パリでメシを食う。 (幻冬舎文庫)」を出版しました。

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