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那須とログハウスの風景

右側の古代文字は「無舞」と読む。復興への願いが込められた渾身の一作。

現在避難されているご自宅にある作品の数々。

被災されたご自宅からほんの一部しか運び出すことができなかった筆たち。

那須のカフェ(Suda Coffee)にて毎月行われている古代文字講座にはたくさんの人達が集まる。

2011年11月09日更新

芸術の秋〜いにしえの古代文字が那須でよみがえる〜

突然ですが、「紀元前4千年前、古代の人々はどうやって文字や言葉を作っていったのでしょうか?」こんな質問されたらあなたならどう思いますか?

文字や言葉には一つ一つ初めて作られた時の理由や過程が存在します。なんだか紀元前4千年前にタイムスリップするかのような不思議な世界や感覚が広がりますよね。

この古代文字を研究されている書家人で画家の鈴木學先生が震災後に避難され、うちのすぐご近所に引っ越しをされてきました。

鈴木學先生ご一家は、震災前まで福島第一原発からほど近い福島県南相馬市にお住まいでした。(避難生活の経緯は長くなりますので割愛します。)長年お住まいであった故郷の南相馬を離れ、現在はご家族と伴に那須に住んで活動しておられます。

もともと言葉や自然界の様々な景色や事象に大変興味がおありだった鈴木先生は、「古代文字」を研究し始めたのも自然の流れのようなものだそうです。

私も大学では国文学を専攻していたし、もともと日本語には興味があったのですが、「古代文字」について何度か鈴木先生のお話しを聞かせていただいてるうちに、言葉の一つ一つを丁寧に紡いでいくように語られる鈴木先生の口調といにしえの文字の世界に段々と引き込まれてしまったのでした。

そもそも文字は紀元前約4千年前、古代の人たちによって甲骨などに彫って作られた「絵文字」から生まれました。そして古代文字は長年の年月を経て簡略化、増殖化し「書字」となったそうです。

そして現代ではパソコンや携帯電話の普及により「ボタン文字」が台頭。私も最近の連絡手段は専らメールやフェイスブックのメッセージ機能などを使うことが多く、手紙など「文字を書く」ということが減ってしまいました。この原稿もいわゆる「ボタン文字」です。

面白いのはこの「ボタン文字」の中に「絵文字」や「顔文字」がありますよね。私達は気持ちをより強く相手に伝えたい時に「文字」だけではなく、この「絵文字」や「顔文字」を使ったりします。

言葉や文字がなかった古代人たちの場合、自分の思いをなんとか伝えるために「絵文字」を甲骨に彫って相手に伝えた。

現代の携帯やパソコンで打つ「絵文字」と古代の甲骨に彫る「絵文字」!

紀元前4千年前の古代の人たちと現代人の私達では甲骨とコンピューターというツールの差こそあれ、自分の意思を相手に伝えたいという思いや感覚は大差がないのかもしれない?…なんだか不思議です。

最後に震災で被害に合われた方々に何かおっしゃりたいことはありますか?と鈴木先生にお聞きしたところ、「今回の震災でたくさんの東北の人たちが何が幸せなのかということにあらためて気付かされ、堪えている。言葉は自分の原点。このことを大切にし、そんな辛い思いをされた人たちに自分の作品を通して少しでも勇気と元気を与えてあげたい。」と、ご自分も避難生活の最中にもかかわらず、穏やかにおっしゃって下さいました。

(注) 甲骨とは亀の甲羅や牛の肩甲骨をいう。




『素楽』sora おかみ 堀田はるみ

堀田はるみプロフィール
東京都出身。日本ハウズィング(株)に10年勤務後、大和ライフネクスト(株)(旧(株)コスモスライフ)に5年勤務。在職中に宅地建物取引主任者、管理業務主任者資格取得。2003年宿の開業とともに栃木県那須町に移住。現在は那須の大自然を楽しみながら夫と犬と暮らす。
ハンドカットログハウスの宿「素楽」sora:http://www.ayado.com/

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