2015年10月28日更新
瀬戸内の広島名物
今回は瀬戸内に面した広島市にまつわるお話をしましょう。
広島での食といえば「広島風お好み焼き」「もみじ饅頭」「宮島のあなご」などを思い浮かべる方が多いと思います。その中でも、人気の「広島風お好み焼き」。薄い生地にそばやキャベツやネギをあわせ、鉄板で焼き上げることは皆さんもご存知ですね。その具の大事な風味と食感をつかさどるのが「観音ネギ」と「芸北キャベツ」でしょうか。
まずは「観音ネギ」ですが、このネギはもともと明治時代のはじめに京都の九条ネギの種を広島に持ち帰ったのが発祥とされ、広島市西区の観音地区で改良を重ねられたのでこの名がつきました。観音地区の地質は大田川の砂が堆積した土地で、ネギの栽培には好条件でした。最近では一年中店頭に並ぶ観音ネギですが、秋から冬が一段と美味しくなる時期です。ワラで束ねるのが、観音ネギの目印です。ちなみに「かんのん」ではなく「かんおん」です。すき焼きや鍋物によく合いますし、なんと言ってもお好み焼きやネギ焼によく合い、『どっちの料理ショー』では特選素材として、たびたび登場しました。ネギの種類は葉ネギですが白色の部分がやや多く、非常にやわらかく、特有の香りや風味があります。ぜひ、これからのすき焼きやカキの土手鍋などにご利用ください。
次はシャキシャキの「芸北キャベツ」をご紹介します。キャベツの産地はいろいろとありますが、美味しいキャベツの原則は昼と夜の温度差によって甘さとみずみずしさが増すことです。キャベツは明治時代以降に栽培されるようになり、大正時代に寒冷地にも適応するように品種改良されましたが、戦前は洋食需要が限られていたため、それほど普及はしませんでした。しかし、戦後は洋風化が相まって生産量が増加しました。その中でも、芸北キャベツは広島市内の多くのお好み焼き店で使われています。もちろん地産地消での食材が美味しさの相乗効果を生み出しているため、広島風お好み焼きは全国区での人気があるのでしょう。東京でも、広島お好み焼きを食べられるお店は沢山ありますし、広島食材を使っているお店もあります。新橋にある「
TEPPAN(テッパン)」もそのひとつなので、足を運んで広島の味を楽しんでみてください。
次に「アナゴ」をご紹介します。アナゴは江戸前と瀬戸内が有名で、江戸前は天麩羅として、瀬戸内(関西含む)はアナゴめしが有名です。アナゴはうなぎと同様に生態が不明の部分が多く、日本海溝付近で生まれたシラスが、太平洋の黒潮に乗って瀬戸内や東京湾に到着すると考えられています。
アナゴの美味しい条件はミネラル豊富な川の河口付近で育つ小魚を食べていること、一定の海流の流れがあることなどです。
JR山陽本線の宮島口から宮島へのフェリー乗り場のすぐ近くに、明治30年に誕生して、既に100年超の歴史のあるアナゴめし発祥の「
うえの」があります。その老舗の味はなんともいえません。酒のつまみに白焼き、甘辛たれのアナゴめし、そして姉妹店の「石庭」ではアナゴの笹めしも食べられます。もしアナゴが好きならば、アナゴ三昧の一日はいかがでしょうか?旅館も兼ねる「
石庭」での夕食は瀬戸内の磯の幸や山の幸のお料理も絶品です。お勧めのお部屋は眺望(旅館の庭から瀬戸内海そしてその先に宮島)が素晴らしい「
夕凪」ですね。時の過ぎ行くことを忘れさせてくれる風光明媚なお部屋です。
そして、やはり広島といえば「カキ」ですね。広島のカキは全国1位の生産量です。現在は北海度の厚岸や三陸なども美味しいカキを生産していますが、あまり知られていない、三重県の的矢カキなどもブランドカキのひとつです。
カキは2枚貝で、アサリやハマグリと同じ構造です。しかし、他の2つと違い、環境により細長くなったり、丸くなったりと殻の形が変わるという特徴があります。そのため、同じカキでも広島のカキは殻の大きさが小さく色は黒紫色、そのくぼみは深く、肉重量指数が高いのが特徴です。一般的には、殻は小さいながらも身は殻の割には大きくぷっくりとしていて、濃厚な味わいとされています。秋から春まで出荷されますが、旬は1月から2月です。その時期はグリコーゲンが大量に蓄えられるので、特に美味しさが増します。
カキが美味しくなる理由は、(1)カキの生理は水温に影響されるために夏の水温常用が産卵に刺激を与え、秋の水温低下がグリコーゲンの蓄積(カキの身入り)を促進すること。(2)流れ込む河川水の影響で、広島湾では梅雨時期から夏にかけて、海水中に塩分濃度の差による層ができることで塩分濃度が薄くなること。これは「甘い水(少し薄い海水)」を好むカキに有利な条件となります。(3)プランクトンの増殖がカキ養殖の1つの鍵となる植物プランクトンが多い広島湾はこの点でも大変恵まれた環境にあること。植物プランクトンは陸上から補給される栄養塩(窒素・リン・ケイ酸なと)により増殖します。
その栄養塩を海に供給しているのが大田川で、その水源は中国山地です。中国山地の豊かな森林は落ち葉が分解されてスポンジ状の層(腐葉土層)に雨水を蓄えます。そこで、雨水にふくまれているゴミを取り除きつつ、窒素やミネラルなどを補いながら良質の水を生成し、時間をかけて大田川へ流れ出します。そこからいくつかの支流を経て、広島市内へ流れる京橋川・天満川・元安川等に分流して広島湾に注いでいます。こうした森本来の働きは樹木なくしては機能しません。近年森林の荒廃、河川環境の変化が問題視されていますが、海の漁場環境を守るためには森林の環境保全が不可欠となります。
カキはビタミンB群や鉄などのミネラルが豊富だから完全栄養食として、肝機能を高め、体力をつけると言われています。カキの養殖方法は次のように1年くらいかかり市場に出荷されます。まず、夏に孵化したかきの幼生(赤ちゃん)は約2週間海中を漂う浮遊生活を送り、その後海中の岩などに付着しますが、養殖ではこの性質を利用します。この時期にホタテ貝の貝殻を海中に入れ、カキの幼生(約0.3mm)を付着させます。これを「採苗」といい、毎年7~9月頃に行います。
採苗したかきの種(幼生)は、干潟の棚(抑制棚という)に移します。棚は潮が干くと海から出るため、海水に浸かっている時間が少なくなります。そうすることで、カキが大きくなり過ぎない他、環境への変化への抵抗力をつけさせて丈夫なカキに育てる事ができます。抑制が終わると採苗連からかきの付いているホタテ貝の貝殻を外します。その後新しい針金に一枚づつ移し替え、垂下連(すいかれん)を作ります。一つの垂下連には約40枚のホタテ貝を使います。出来上がった垂下連は沖合いの養殖筏に吊るします。筏の大きさは大体縦10m横20m、1つの筏に約700本が吊るされます。ここから収穫までに普通12~13ヶ月もかかります。かきの収穫が始まるのは10~11月。垂下連は9m、カキもかなり大きくなっている為、人の手で引き上げる事はできません。その為、船に10mくらいのクレーンを建て、ウインチで巻き上げて収穫します。
最後に
豊菜JIKANでは、瀬戸内の恵みの果物を取り扱う予定となりました。日本でも地中海性気候に近い少雨温暖な気候を活かした旬の野菜や果物を是非ご賞味ください。現在準備中ですので、しばらくお待ちください。
- 小森谷 正プロフィール
- 食品取扱いを営む実家に生まれ、小さい頃から食に興味を持って育つ。大学時代はファッション研究サークルで主将を務め、卒業後は大手不動産グループで住宅企画に携わった。これまでの経験から衣食住の相談サービスを手掛けるライフスタイルコンサルティング会社株式会社 ジカン(又はJIKAN)を立ち上げた。まずは「食」に関する通販サイト「豊菜JIKAN」をスタート。