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食から五感美を

瀬戸内の風景

葡萄

2015年08月26日更新

瀬戸内の気候と旬の果物

徳島県と和歌山県から、愛媛県と大分県、そして関門海峡までを囲む範囲を瀬戸内海と一般的に呼んでいます。その瀬戸内海を中心とした瀬戸内気候は四国山地と中国山地に挟まれて、太平洋側気候でも日本海側気候でもない特徴を持っています。梅雨と秋雨の時期を除くと雨は少なく、他の気候と異なるのは真夏の雨が少なく、少雨の年はかんばつになることもあるので、農地に隣接した地域では、古くからため池を作られてきました。その他、川にダムを作ったり、湖沼を利用することによって水不足の対策をしています。

また、瀬戸内海は瀬戸や海峡と呼ばれる狭い水路で連結された複雑な構造を持つ多島海で、平均水深は31m、東側になると浅くなります。干満潮位差も2m以上と大きく、早い海流によって海水が掻き混ぜられることも特徴で、プランクトンの成育も促され、瀬戸内海は豊かな漁場となっています。

このような瀬戸内海地域ではその独特の気候を生かして、今が旬の岡山県の名産として有名な桃や葡萄をはじめとした農産物が多く栽培されています。また、冬にはみかんをはじめとした、すだち、レモン、いよかん、せとか、などさまざまな品種の柑橘類が収穫されることでも有名です。もちろん果物だけではなく、特徴のある野菜類も沢山あります。

その中でも代表的なものをいくつかご紹介します。まず、先ほど登場した今が旬の桃からです。

桃は春先に桃色の花をつけ、澄んだ青空と桃色の花は鮮やかなコントラストが素敵です。春を感じさせてくれる「桃の花」は春の季語にもなっています。7月~8月にかけて、今度は秋の季語となっている「桃の実」が実り、立秋前後に一番の旬を迎えます。日本では果肉が白色系、黄色系、赤・ピンク系などで皮に柔らかい毛が生えている「水蜜種」が作られています。桃の元祖は岡山県ですが、生産量は山梨、福島、長野、和歌山に次ぐ5位です。また栽培は1980年代以降減少していて現在はその頃の半分程度となっています。

桃は中国が原産で、3000年以上前から食用として栽培され、日本には縄文時代後期から弥生時代には既に食べられていたことが古事記や万葉集なのに記されています。しかし、日本での栽培が盛んになったのは海外の品種が導入された明治時代になってからです。その元祖が岡山県の「白桃」で、この白桃はジューシーでなめらかな食感の品種に改良されたもので、日本の桃は世界でも評価される逸品です。

桃はふっくらとして、綺麗な形をしていて全体に赤く色づいているもの、皮の色が濃く、その中に白い斑点が出ていればより良いです。堅い桃は新聞紙などで包み風通しのよいところで常温保存することで柔らかくなります。冷やしすぎると甘みが落ちますので、食べる2~3時間前に冷蔵庫に入れるとよいですね。軽く触れて柔らかみを感じるくらいが食べごろです。

桃の種類は、白桃(はくとう)・白鳳(はくほう)系があり、 多くの市場に出回っている品種はこの2つの系統です。最近では岡山県を中心に栽培されている「清水白桃」という品種が首都圏でも見られるようになりました。皮もほとんど白色系で涼しさを感じさせてくれ、さっぱりとした甘みの中に渋味もあり、大人の桃という感じです。
白桃の品種改良した白鳳は香りが強く、果物売り場で桃の香りを漂わせています。甘くジューシーで香りもよく、とろけるような柔らかい果肉が特徴です。ほんのりと渋味も有りますが、この渋味が甘さに深みを与えてくれるように感じます。

桃の栄養素は、食物繊維、カリウム、ナイアシン、カテキン等で、便秘回復、美容効果、高血圧防止、がんや老化防止などに効果があると考えられています。

次に葡萄を紹介します。

葡萄はメソポタミア文明や古代エジプトにおいて、ヨーロッパ種ワインが珍重されたことから当時には既に栽培されていました。ローマ帝国時代には帝国全体にワインが行きわたり栽培も各地で行われるようになりました。その後大航海時代に世界へ広まりましたが、その頃すでに食用(ジュース等)としてアメリカ種を栽培していたアメリカ大陸では、当初は、害虫問題などもあり、ヨーロッパ種の栽培は浸透しませんでした。日本には鎌倉時代初期に中国から伝わり、勝沼で栽培がはじめられ、明治時代以前は特産品として珍重されました。ヨーロッパ種の栽培は、明治時代に兵庫県稲美町でおこなわれたものの、定着はしませんでした。その一方で、アメリカ種は日本の気候に合い定着し、ワイン用としては臭いがきつかったため、生食用果実として主流になりました。

日本で最も栽培されている品種は巨峰で、ついでデラウェア、ピオーネと続きます。最近ではマスカット系の葡萄も品種改良され、高級品として流通するようになりました。生産は長野、山梨、岡山の順で旬は8~10月です。

葡萄は粒に張りがあり、軸が太く青いものを選びましょう。軸が茶色いものは収穫してから日数が経過している可能性が高いです。また、果皮に白っぽい粉が付着していますが、これは水分の蒸発を防ぐための「ブルーム(果粉)」で、この粉が満遍なくついている葡萄は鮮度がよい証拠です。また日持ちしづらいため、なるべく早く食べるようにして、保存は新聞紙やラップで包むかポリ袋にいれて、冷暗所または冷蔵庫の野菜室にて保存します。さらに一粒ずつカットして保存するとより長期保存できます。葡萄は上部の方が下部より甘みが強いので、下部から食べた方が美味しく感じます。

葡萄の品種は沢山ありますが、今回はシャインマスカットをご紹介します。
シャインマスカットは2006年に登録された品種で、房は円筒形で400〜500グラム。成熟時の色は黄緑色で、粒は短楕円形。大きさは巨峰と同程度の11〜12グラムで、糖度は20度程度で高く、酸含量は0.3~0.4 g/100 mlのため甘みが強く、ジベレリン処理により種無しで皮ごと食べる事ができます。アメリカ種の特徴である耐病性を持ちつつ、食味・食感・香りはヨーロッパ種と同等の品質ということが最大の特徴で、貯蔵性にも優れています。

葡萄の栄養素としてカリウム、ブドウ唐、果糖等、アントシアニンや赤ブドウにはレスベラトロールが含まれます。疲労回復や高血圧予防、がん予防等に効果が見られます。

最後に、豊菜JIKANでは、9月下旬より、瀬戸内の恵みの果物を取り扱う予定です。日本でも地中海性気候に近い少雨温暖な気候を活かした旬の果物を是非ご賞味ください。



株式会社ジカン 代表 小森谷 正

小森谷 正プロフィール
食品取扱いを営む実家に生まれ、小さい頃から食に興味を持って育つ。大学時代はファッション研究サークルで主将を務め、卒業後は大手不動産グループで住宅企画に携わった。これまでの経験から衣食住の相談サービスを手掛けるライフスタイルコンサルティング会社株式会社 ジカン(又はJIKAN)を立ち上げた。まずは「食」に関する通販サイト「豊菜JIKAN」をスタート。

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