2010年04月28日更新
安曇野ペンギン物語り~ある家造りにまつわるお話~
春うららの安曇野からこんにちは。
白鳥は北の国に旅立ちペンギンも冬眠から覚める頃(このお話は後ほど・・・)次々と咲き出す花木に彩られた屋敷林と土蔵の白壁が春の陽にまどろむ春。田植えを待つ水田には残雪のアルプスが映り、手入れの行き届いた畑は黒々と目にも暖かです。
白馬山麓の美しさが荘厳なまでの自然の美であるなら、安曇野は人の手が入り自然と調和しながら作り出されている景観美でしょう。そこに点在する伝統的な建物は安曇野の原風景の中で大切な要素ですが、最近では切り売りされた土地の上にいろいろなスタイルの家が建ち始めました。
そこで安曇野市では今年「安曇野の景観を守り、人と環境にやさしい家作りの手引き」を作成して”安曇野らしい家ガイドライン”を打ち出しました。外観から伝統型、継承型、調和型の家作りを提案し、性能からは安曇野の気候にあった省エネ型の住宅を推奨しています。幸い我が家も良き設計士と優れた工務店に出会えたお蔭で景観に配慮しながらも、寒い冬暑い夏を苦にせず快適に暮らすことが出来ています。
そして私たちのように幸せな安曇野暮らしを始めた方が近くにいらっしゃると聞き伺いました。見晴らしの良い小高い場所に、あるペンギンの住む別荘があります。このペンギン君元々はオランダ出身。東京のあるバーにいたところ、この別荘のオーナーに拾われて安曇野にやってきました。
そこで出会ったのが安曇野に程近い大町市美麻で家具作りをしているJIO工房の小田さん。元々あった別荘にペンギン君が居心地よく収まる場所を作ってもらいたいと始まった話が、いつの間にか家一軒建てる話に発展。小田さんの作品に惚れ込んだオーナーが家具、調度、設計全てを任せる。口出しはせず自分の嗜好(好きな音楽、映画、お酒など)を伝えるだけ。建物が完成するまで一切見に来ないと言う徹底振りで出来上がりました。
作家冥利に尽きる夢のような話ですが、クラフトフェア松本の創始者であり、ジブリ美術館カフェや内外各地にシンプルで美しく使い勝手のいい家具を提供しているベテラン、子供心を失わない大人にも嬉しい遊具も生み出す柔軟な発想を持つ小田さんの実力あってのもの。
今回の別荘にも随所に遊び心が見られます。特に開放感のあるバスルームから見えるペンギン君はまるで水族館にいるような姿。アンティークなので随分のご高齢ですがなかなかの存在感です。
寒い冬はガラスの風防の中で白雪姫のように眠りについていたペンギン君も安曇野の春風に目覚める頃でしょう。再び冬眠を迎える前の晩秋の安曇野スタイル(11月3日~7日)で公開予定ですので又秋にでもご案内いたしましょう。家を建てるときには夫々の思いが重なり合い、一つのストーリーが出来るものですが、そんな視点でキョロキョロと想像力を道連れに安曇野探索も楽しいですね。
季節の彩が増す5月、松本、安曇野周辺はクラフト関係の催しが多く賑やかです。工芸の五月、安曇野スタイル市、大町街中ギャラリー。そこで出会えるものがこのペンギン君のように何かを運んでくるかもしれませんよ。我がEisenも参入予定です。初夏の風に誘われてぶらりとお出かけになりませんか。
- 宮嶋洋子プロフィール
- 関西出身、産業福祉を専攻後、保険会社勤務。結婚を機に信州白馬山麓に移住。夫とロッヂを経営。夫が鉄工房Eisenを立ち上げると共に安曇野に移転。自らは羊に関わる紡ぎ、織り、編みのクラフトを楽しむ。
鉄工房Eisen:http://www5.plala.or.jp/Eisen/